水やり
2013年6月15日
造園の世界では、樹木に水をやることはとても大事な技術です。
本来、植物は水を求めて自分自身で根を伸ばし、より土中深く根を張って
しっかり育っていくからです。
水をやりすぎると、浅いところで水を求めて根が発生します。
その結果、その部分で水を採ろうとするので、水の供給が無いと生きていけません。
だから、水やりの極意は、乾き加減を見計らってたっぷりやるということになります。
これが意外に難しく。たっぷりやりすぎると今度は根が呼吸できなくて根腐れを
起こします。
その見極めはやはり熟練の技術です。
そういった意味で自動灌水を使った水やりは、一種の作業の標準化です。
自力で樹木自身の根を張る力を逆に衰えさせることになります。
樹木を、本来の寿命をまっとうできるように末永く生かせるためには
ふさわしくありません。しかし、樹木が地下深く根を伸ばす土の層が無く、
浅い層で生き続けるには、有効な手段です。
また、樹木の寿命をまっとうさせるような長期間の維持管理ができない場合も同様です。
我が家で以前庭のリフォームをしたときに、3mのカラタネオガタマと言う樹木を
移植しました。この樹木は移植を嫌い、樹木医さんに聞いても、いろんな文献でも
そんな大きさでは難しいとありました。しかも空梅雨の時期でした。
特に、この木は挿し木の苗木を大きくしたもので、一度も根回しもしたことが
ありません。それでも、毎年初夏に咲くクリーム色の花の「バナナの香り」が好きで
ダメもとで動かしました。
移動させたのは灌水ホースのすぐそばでした。案の定すぐに葉が枯れあがり、
上の部分は枯れました。しかし、根元に小さな芽が出てそれがどんどん大きくなり、
今では2mほどの木に復活しました。
本来の大きさではありませんが、自動灌水は『生かす』ことには役に立つ道具です。
このあたり、植木屋歴数十年のスタッフのYさんでさえ、自動灌水についての偏見を
拭い去るのは難しいです。
ですが、このところの暑さや干ばつの気候の中ではやはり必要性を感じます。