「木の国」の家
2011年9月12日
「紀の国」の方が家を建てると、大阪では考えられないような
立派な材をふんだんに使われます。緑豊かで、気候も暖かな土地は、
近くに、良好な材の生産地である吉野とも近いからです。
私が拝見した、伝統技術のO棟梁が施工されたモダン建築は
まさに、「木の国」ならではのお家でした。
大阪人ならすぐに気にしてしまう価格の点でも意外でした。
それは原木からO棟梁を筆頭に直に施工される部分が多く、
「餅は餅屋」である外注費を必要最少限度にしておられること。
また設計士と施主さんという、専門の方と一般の方との
刷り合わせという、時間のかかる部分にIさんが加わり、
お客様の想いを、設計しやすいような形に変換するので
この部分の作業効率が良くなることなどいろんな工夫の結果ですが。
細部に至るまで特注・別注のお家は格別です。
画像で雰囲気を味わって下さい。*画像はクリックで拡大します。
旧宅を壊し、基礎工事から立ち上げていきます。伝統的な餅まきを含めた上棟式です。屋根の上で嬉しそうな施主さんです。
施工前必ず実物そっくりの模型を組立てるそうです。
本物が、模型にそっくり?に見えるほど、精巧にできています。
伝統の技と新しい資材の融合です。キッチンのテーブルの足と、
次の画像に出てくる手すりは、旧宅の大黒柱の再利用です。
クスノキの一枚板のテーブルは厚さといい値打ちものです。
下地の塗り壁は養生のあと、白く塗られます。
私が拝見したとき木の香りがプンプンしていました。
削りたての表面はそれぞれの樹種の風合いが出ていましたが、
それが年月を経たときの色の変化も楽しみになることでしょう。
出かける時に、車の鍵を置く浅い棚とか、立ち上がりの際のバーとか
施主さんとIさんのやり取りから出た要望をO棟梁がぴったりとした
形に仕上げます。ハード面とソフト面の連携が、既製品に無い、
『特製』の味を出します。
外観です。和風モダンな家で施主さんご家族の、新しい暮らしが始まります。
大前工務店さんは古民家の再生工事もお得意です。
「きのくに」の大工さんは「木」へのこだわり一筋にがんばっておられます。
規矩術(伝統建築の場合)
2011年8月27日
この歳で初めて知った言葉です。「きくじゅつ」と読みます。
規矩準縄術というのが語源だとされ、規は円、矩は方形、準は水平、
縄は垂直を意味します。
日本の美しい木組みでできた建築物を、「さしがね」という
L字型の金属性のものさし1本で、複雑な角度は、もちろん、屋根のたわみ
のカーブなどすべてを作図してしまいます。日本の伝統的な木造建築の技法です。
人工物と違って、木造建築の素材である木はそれぞれが
微妙に異なります。それを立体的に、認識し、かつきちんと納めることが
できる・・まるで3DのCADが「さしがね」という道具を
通して大工さんの頭の中にできあがるようなものです。
日本の木造文化の中ではぐくまれた貴重な特別な技術です。
もう1ヶ月近くになりますが、友人のIさんからその「規矩術」で
家を建てておられる和歌山県の有田郡にある大前工務店の
大前さん(以下O棟梁とお呼びします)施工による、S邸のお披露目に
お声をかけてもらいました。Iさんご自身も、ご家族も含めて
長年建築関係のお仕事をされていましたが、ここ最近はずっと、
O棟梁とご一緒にお仕事をしています。
拝見して圧倒されました。でも、S邸はモダン建築なので、本来の伝統技術での
建築の様子を後日画像で送って下さいました。Iさんのデータは実に2ギガ近く
あり、とても貴重な記録でした。実際にO棟梁に伺った話も混ぜながら
『百聞は一見にしかず』です。日本の伝統的な工法をご覧下さい。
(一部を除いて画像はクリックで拡大します)
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まずは材木の買い付けから始まります。適材適所の言葉どおり、
樹木の種類や、癖も考慮した上で、色合いや模様、
さらに、コストも考えながらの買い付けになるそうです。
樹木の名残はどんどん消えて材となっていきます。
大掛かりな機械からノミを使っての加工までお弟子さんたちも、O棟梁の陣頭指揮の下で行います.
社会科の教科書の発掘遺跡を思わせる基礎石です。
現代の基準で定められた以外に釘は使わず、柱を乗せるだけの構造だと
聞いて驚きです。地震で大きなゆれがきたときに、構造物が石から外れて落ちるだけで
ばらばらにならない特性を持ちます。
基礎の石に柱を建て棟を上げます。
納まるところにすべての材が無駄なく納まっていきます。
通常の住宅建築と異なり、伝統的な技法では、1本1本のパーツを
事前に加工した、凹凸の部分を慎重にしっかり組み合わせていきます。
要所要所に伝統の技が生きます。
上の左画像の三角形のものは「隅木」と呼ばれるものです。「規矩術」の腕が試されます。その上の屋根の丸みのための材の加工は、瓦を乗せたときにもふっくらとした
ラインが出るのが特徴です。
壁は竹取の婦人?(友人のIさんです)も、伐採したものを裂いて
編んでいきます。Iさん曰く、専門の業者もおられるが、竹の採取場所から
こだわりがあるのが、O棟梁のやり方だそうです。
壁土を練って塗りこんでいきます。養生にも時間をかけます。
実は、この家はまだ完成していないのです。
平行して進められたモダン建築のS邸の方が優先され、先に完成しました。
私が実際に見た、伝統工法の大工さんが建てるモダン建築というのは、
これもなかなか見応えがありました。