稀少な体験?


2011年8月7日

実はうちのK専務はかつて大手企業で、
自動潅水の設計だけではなく、農薬や肥料の開発の際のさまざまな
栽培実験を行なう責任者でもありました。
実験の設計からデータの収集。ときに手作りの実験装置など
凄腕を発揮しました。

また土着の微生物を在野で研究しておられたM先生にもご指導を仰ぎました。
私が、設備は無いが、土着の微生物を土壌改良に生かしたいと話すと
M先生は大いに賛同して下さいました。元々土着菌というのは、
よく解明されておらず、様々な菌がグループになって働いているらしいのです。
仮に1匹ずつ同定しても土中での働きまでは分からないそうです。
私は目から鱗でした。
日常の中の微生物で名も知らぬままでも十分役立てられそうです。
1匹ずつは目立たず無名なのに、仲間がいると思わぬパワーを発揮するなんて、
土着菌に親近感まで覚えました。M先生は「スプーン1杯に100万匹
です。実験室の微生物を自然界に入れるというのは、例えばこの日本に
超エリートを1人入れるようなものです。さて世の中変わりますかね」と
ニコニコと言われました。

実験は同じ条件でのデータ収集の繰り返し。ただただ繰り返しの連続でした。
暑い日も寒い日も、同じ作業を繰り返してサンプリングします。
実験室で、1回ごとのサンプル収集後の測定をするのに半日以上がかかりました。
研究というものは、最初の設計がいかに大事であるかよくわかりました。
苦労して取ったデータが無駄になることほど空しいことはありません。
パソコンの前でひたすら腕組みをして設計を考えていたK専務の時間は貴重でした。
時に、サンプルを外部機関にも提出してデータの公正さを証明しました。
一定の期間のデータをグラフにして傾向を見ながら次の段階へ入っていきます。
ある日K専務は、「特許が取れるかもしれない」とつぶやきました。
半信半疑の私に特許の専門家でK専務の先輩のOさんが「特許というのはね・・・
『富士山はとても高く見える。エベレストは高く見えない』です。分かりますか?」
と謎のようなことを言われました。
つまり、富士山の周りには山が無いので高く見える、ヒマラヤ山系には
たくさんの高い山があってエベレストは目立たない。
要するに、競争者がいなければ特許は取れるし、
特許が取れることと、内容(山の高さの例え)とは無関係だと教えられました。
それからは、過去の特許の資料を徹底的に検索して、自分たちと同じか
そうでないかを調べることになりました。私のロッカーには電話帳2冊分の
資料があります。あのとき、こんな分厚い資料の中の文章から
サーチエンジンのように自分たちとの関係を検索できたのだと今不思議です。
当時大阪府の中小企業支援組織の特許アドバイザーのKさんとAさんの
お力を借りました。特許データの検索法から、K専務の特許文書の校正まで
とても丁寧に援助していただけました。
成果も上がり、植物も順調に育ち、

H社長も機会あるごとに、いろんな方にも披露
して下さったのですが効果は芳しくありませんでした。
ついに「オレたちがどんなに一生懸命やっても、やはり、もっと権威のある人に
認めてもらえないとあかんな。そこで、国のリサイクル委員長で、
この分野の最高権威者である、K先生の前であんたがプレゼンしてくれるか。
先生が興味を持たれるかどうかで判断しよう」と言われました。
無知だったことが幸いして、どんな権威者の方かも分からないまま、
私は、その先生に自分たちの実験を訴えることになりました。

稀少な体験?


ここ最近、自動潅水組のS部長たちの作業が続いています。
やはり自動潅水は便利な道具です。
個人邸から公共や民間の場所にしろ、いろんな場所での
現場の状況や素材もそれぞれです。またさまざまな不具合の調整も経て
いろんな経験を積んでいきます。
経験は文字通り、知恵の母です。
これまで私たちは仕事を通していろんなことを経験させていただきました。
時に、もう二度とないだろうと思われる特殊な経験もありました。
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うちの敷地の隅には、『実験室』と呼んでいるクリーム色の小屋があります。

中には、農薬庫の他に、電極式phメーターやECメーター。
電磁スターラーやメトラーなどの秤。メスシリンダーやビーカーなど
薬剤散布や土壌の調査をする機材の他に、造園業とは異質なものもあります。
その一つが無菌ボックスで、

他にも恒温器、

数mgまでの薬剤調整をする
特殊な秤

などです。ここで、数年前まで高いアルカリ性を低下させる
微生物の培養の実験を行なっていました。
約10年以上前剪定枝葉のチップを発酵させたものを扱う機会がありました。
私は、それをいつも「微生物の塊」として見ていました。
需要の少ない堆肥ではなく、微生物の働きを利用して
環境浄化に使えないかずっと探り続けていました。
浄化のターゲットは高いアルカリ性の中和です。
いわゆるバイオリメディエーションと呼ばれるものは、閉じた系の中で、工業的に
特殊な菌やそれを生かす安定した環境(温度、水管理などの徹底)など
屋内プラントのイメージが強いものでした。
そうではなく、土着の微生物(ごく普通に土や空気の中にいる微生物)が
自然界の中で行なうことを、人間が手を加えることで、スピードアップを
図れないかというものです。
けれど当時、漠然とした効果は見えていたのですが、何がどんな風に
作用して結果を生むのかをきちんと押さえられず、一番大切な
「再現性」が曖昧でした。それが8年前にいろんな方との
出会いで一気に前に進みました。
一番大きかったのは、D工業のH社長が実験のスポンサーになって下さったことです。
当時、循環型社会の名のもとに、リサイクルを推進する国と、中間処理などで
環境保全に貢献していた業界側との間に見解の相違がありました。
でも以前からリサイクル事業などに積極的に取り組んでおられた業界側のH社長が、
土木工事で発生する高いアルカリ性の土の植栽土壌化に興味を示して下さいました。
当初は実験圃場もお借りしました。


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