知れは知るほど狭くなる?


2014年2月10日

随分前に、お寺と言っても新しい建物の入り口の花壇のリフォームをお請けしました。
ゴールドクレスト数本と、端にツバキの花の植えられた花壇は、和風の建物と
違和感があり、新しく赴任された住職さんのご要望で、リフォームすることになりました。
ツバキを主役に、ドウダンツツジ、オタフクナンテン、オモト。黄色い点の入った
ツワブキホタルなどと生駒石を配しました。根占にタマリュウを敷いて仕上げました。
それまで余り目立たなかったツバキは、ちょうど花の時期を迎え八重の赤い花が、
背景の黒壁に映えました。住職さんが言われるには、そのツバキは、以前名のある
御上人様がお手植えされたものだそうで、リフォームを機会に、それを記念する石碑も
建てるので花の名前を教えて欲しいといわれました。

実は日本のツバキの種類は数百種類もあって、ちょっと奥深い世界なのです。
ピンク色の『乙女ツバキ』風のこの赤い八重ツバキは一体なんという名前なのか。
すぐに私は図書館でツバキの専門書を借りて、花色、赤、八重咲きで調べると・・・
出てくる出てくる・・いろんな名前のツバキが出てきました。ウウム・・・・
と悩んでいると、住職さんから「当時の記録が出てきたので分かりました」と
一件落着です。後日、石碑を見に行くと、『・・・上人乙女ツバキを・・・』となっていました。
深く考えすぎました。そこまで、マニアックな名前は不要でした。

そう言えば、有名な、太田道灌のヤマブキ伝説に出てくる歌で
「七重八重 花は咲けども 山吹の 実の一つだに 無きぞ哀しき」というのがあります。
狩りの途中で雨に降られ、農家に「蓑」を借りに行った道灌が、娘に差し出されたのが
「一枝の山吹の花」でした。そのピント外れの応対に怒って帰り、後日蓑が無いことを
先の元歌の「実の」にかけたと知り、己の不明を恥じて歌道に精進したという話です。
実際は八重咲きのヤマブキは実がなりませんが、一重咲きのヤマブキは実がなります。
それを細かく言うのは歌の世界では無粋です。

知りすぎて、イメージの幅が狭まることも・・・あるかもしれません。


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