思い出の本1


2007年4月7日

私が生まれ育ったのは大阪市内の(現在)鶴見区と呼ばれているところです。
かすかな記憶に麦畑やレンゲ畑が残っていますが、高度成長期に次々と田畑が
埋め立てられていきました。そのころ私は小学生でした。ちょうど九州の炭鉱閉山と
重なり、転入生がたくさん入って、次々にプレハブ教室が建てられました。
特別教室もどんどん普通教室になり、図書室もありませんでした。
新しい本が入ると、1組から9組まで数冊ずつ順番に1~2週間ほど回ってきます。
各班に1冊の割合でその新刊をジャンケンで取り合って借りていました。
そんな本の中の一冊が福永令三氏の『クレヨン王国の12ヶ月』でした。
講談社から出ていたハードカバーの本で,後に青い鳥文庫で復刊しました。
ネットで調べると500万部の大ベストセラーだそうです。


この本は大晦日の夜に主人公の女の子が、クレヨン王国のシルバー王妃とともに、
いなくなったゴールデン王を探しに12色のクレヨンが治める12の国を冒険するというものです。
各月を各色のクレヨンが治めているという設定で、それぞれシンボルの色があって、季節の
植物や生き物や自然描写がとても詳しく描かれています。

実物を知らないまま子供の私はイメージを膨らませていました。自然界にもいろんな色が
あってとてもカラフルで美しいというのが私の心に焼きつきました。
大人になって実物を知る機会も増えました。つい最近では3月の物語に出てきた『ウソ』という
鳥を知りました。そのたびに想像していたものとのギャップを感じたり、なるほど納得したりします。
本のラストで夢から覚めた主人公が初日の出の光の中でいろんな色が現れる場面で
(自然の中にクレヨン王国があるのだ)と気づきます。
自然界の色の美しさは人工の色では太刀打ちできないように思います。
観察会に参加しても、つい色や形からお気に入り?を選んでしまったり、
植物を扱う仕事に惹かれるのもきっと、子供の頃あこがれたクレヨン王国に浸って
色を楽しんでいるからかもしれません。


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