教科書では教えない土の話1


2012年5月2日

随分前になりますが、私が所属する園芸関係の会が主催する
土の勉強会に参加しました。
講師の方は、今よく売れている園芸培養土のメーカーの方です。
土や肥料の基本的な話から、最近の培養土の傾向など。
参加される方は、家庭園芸の範囲で土を使われる、花関係の講師の方々です。
用いる土は当然ながら、プランターといった園芸容器に入れるための培養土です。
研修の内容は、普段造園で土を扱う私にも、大いに参考になりました。

仕事の上では人工地盤でない広い場所(�単位)に
園芸培養土だけを使うことは珍しいです。予算の問題もありますから、
元々ある土が使えるなら、改良してそれを生かす工夫をします。

土を表す尺度の一つとして国際土壌学会法による土の三角表というものがあります。
それは、粗砂、細砂、シルト(微砂)、粘土という、土粒子の大きさで分けたものが
どれだけの比率で入っているのかということで土の性情を表すのです。
植物に良い土、悪い土はその三角表の位置で分かります。
逆に、良い土の比率を参考に、足りずの成分を補填する目安にも使えます。
ただこの分析は非常に手間がかかりコストも掛かります。

十数年前に、ある大学の先生にアメリカの学生が理科の勉強に使うという
土性分析キットを頂きました。いろんな薬品に調べたい土を攪拌沈殿させ、
その沈殿物の様子や量で、先ほどの4種類の組成の比率が分かるというものでした。
精度のほどは分かりませんが。非常にざっくりとした分析ができました。
もちろん、そんなことをしないでも、植物が良く育つ土をしょっちゅう扱っていれば、
自然に、土を手で握り締めたときの感触や様子で土を判断できます。
土の感触に大きな決め手となるのは粘土質のものと砂質のものとの比率です。
実際に植物を育てるのには、有機質の割合も大きく影響します。
有機質がほとんどなく、組成も単純なものは、均質で締め固めたりする用途には
良い土ですが、植物にはあまり良い土ではありません。

実は土は、植物が育つことでさらに改良されていくのです。
植物が生えることで微生物が増え、植物の分泌物や根の呼吸活動で
土に化学変化も起こります。
植物の根は、土の塊を砕いて細かくしていきます。
かつて植栽には適さない地盤を緑肥植物で改良する実験のときに、
根を洗い出したら2mもありました。
頼りない細い根が硬い土を耕していくのです。

ただ当然ながら、植物が育つのには、水が必要です。
良い土に植えても、水切れで枯れてしまっては元も子もありません。
そのために、私たちは、水管理のしやすさを考慮して、
例えば、水切れを起こしやすい土なら保水性を上げるように改良します。
ときには、水はけの悪い土には、通気性を上げるようにします。
土と水の関係を意識して一手間かけることで後の管理が違ってきます。
肥料の効果も出やすくなります。
もっとも植物は少々条件の悪い土でも必死で生きていこうとするので、
土の改良というのは優先順位の低いものになりがちですが。

最近、扱いにくい土に一手間かけた、寄せ植え講習会の機会を得ました。
土が主役の講習会というのは珍しいかもしれません。また後日アップいたします。


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