蘭の香り


2013年8月5日

先週末、卒業以来ですので、ほぼ38年ぶりに母校の高校へ行きました。
元女学校の母校は、大阪城の近くにあります。
入学当初鴬張りと称して、ギシミシと音を立てる板張りの廊下はもちろん。
むき出しの配管の天井。ツタが絡まりすぎて窓が開かない教室には圧倒されました。
校庭にさり気に置いてあった蹲を『淀君が使った手水鉢』とまことしやかに
教えてもらい(そうなんだ)と納得するほど、歴史と伝統を感じさせる学校でした。
残念ながら、遠距離通学もあいまって、楽しいばかりの高校生活ではありませんでした。
クラブも途中で挫折してしまい、最後の1年間、私は青息吐息で過ごしました。
それでも、過ぎてしまえば青春時代の思い出です。
久々の停車駅から、当時重いかばんを持って通学したコースを歩いて、到着したのですが・・・
見事にリニューアルしていました。結構大きな樹木は残っていたので、それを 頼りに
記憶を探るのですが。自分が今どこにいるのか、記憶と一致させるのは難しかったです。

実は、5年ほど前に、途中挫折にも関わらず、クラブ(剣道部)のOB会の事務局で、大先輩のTさんに
お声をかけてもらい、大きな催しに参加して懐かしい思いをしました。今回は
剣道の合同練習後、構内の金蘭会館という同窓会施設で総会と懇親会をするというものでした。
久々に剣道の竹刀の打ち合いの音や、気合の入った声を聴きながらしばし時間を過ごしました。
T先輩も含め今なお剣道を続けておられる方も多く、驚きでした。
同窓会と違ってほとんど初対面の方ばかりでしたが、初代の先輩方は一回り以上、
現役の方たちは息子たちより若く。幅広い世代の方が一同に集まる珍しい機会を得ました。
良い刺激を受けました。

そのとき、同じく大先輩のNさんから、同窓会(金蘭会)の名前の由来を伺いました。
壁の額の「二人同心其利断金、同心之言其臭如蘭」と言う易経の言葉が元だそうです。
『二人心を同じうすればその利きこと金を断つ、同心の言はその臭(かおり)蘭の如し』
非常に厚い友情のすばらしさを例えているのだそうです。
その書は奥様が卒業生であったご縁で、湯川秀樹博士の書かれたものだそうで、
本物は校長室にあるとか。
私は本当に何も知らないまま卒業してしまいました。

と同時に、職業柄そのすばらしい『蘭の香り』も思い出せないことに少々うろたえました。
後で調べたのですが。実は流通しているコチョウランのほとんどは今は香りません。
シンピジウムなども同様です。
改良に改良を重ねている間に、香りという要素が欠落していったという説もありますし、
昆虫を寄せるのに、香りを出す時間を限定したり、香りより視覚に訴えたがためという説もありで。
バラほど香りが重視されなかったのか、私の記憶で市場にずらりと並んだ蘭の鉢から
息が詰まるような濃厚な香りをかいだ記憶が無いのです。

最近はどうやら、香る蘭が取り上げられるようになってきたようですが。
勉強不足と、これまで意識していなかったので気づきませんでした。
昔の中国の方を心深く惹きつけた香りとは一体どんなものなのか。興味津々です。

ふと、仕入れの際に蘭置き場を嗅ぎまわる、自身の姿が浮かびました。

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