身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ


2010年7月29日

今日は久々の雨が降りました。
降り始めの土の匂いが何とも言えません。
埃っぽい乾燥した空気も浄化され。
久々に心まで洗われるようです。
やはり雨は好きです。明日からまた暑くなるでしょうが。
随分昔、学生だった頃。私の所属する研究室の先生はとても厳しい人でした。
学生はもちろんのこと、指導を受けに来る社会人の方に対しても、
その先生は容赦なく怒鳴りちらしていました。
大の男の人が、涙ぐむ姿などはあまり、見たくない光景でしたが
狭い部屋でのやり取りの様子は、嫌でも視界や耳に飛び込んできます。
学生の私は、いつも気配を消して嵐のような時間をやり過ごしていました。
私はその1年間で7kgも痩せてしまいました。
怖い怖い先生でしたが、ちょっと気の弱いところもありました、
一度だけ、肩こりに悩まされていた先生に、効くからと、
手のひらのつぼに、私が合気道の技をかけたことがありました。
「絶対そーっとやれよ!」と何度も言われ、ソーッと
技をかけた途端に、ありえないような時点で
イタタタ!!と叫んで床に座り込まれ、思わず(?)となりました。
先生は怖いけれど、面倒見も良かったので、卒業生がよく
遊びに来ました。そんなときに私は
「ワシを投げ飛ばそうとした」学生として紹介されました。
そんな怖くて繊細な?先生が例によって、怒鳴っていたある日。
いつものように、気配を消して資料を読んでいると、耳に
「・・よく言うやろ。『身を捨ててこそ浮かぶ・・・』『浮かぶ・・・』」と
壊れたレコード(CD)のように、何度も同じ台詞が飛び込んできました。
そして、相手に「言うやろ『浮かぶ・・・』」と尋ねるのですが、
そうでなくても怒鳴り声で頭が真っ白な相手の方は反応がありません。
「君は知ってるやろ」と突然矛先が私に向いて、反射的に「浮かぶ瀬もあれ・・」と
つぶやくと、「よく知ってるやないか」と初めて褒められました。
残念ながら、貴重な褒め言葉も、その状況ではすぐに埋没してしまいましたが。
その、恩師の面影に似て、しかも、声もしゃべりかたもそっくりな方に
同じように、怒鳴られることがありました。妙になつかしいデジャブのようでした。
20代と違って、身の縮む思いをしてもちっとも体重は減りません。
強いていうなら、縮んだのは血管でしょうか。
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬」がふと心に浮かんだ今日この頃でした。


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