植木の文化


2012年3月26日

先日K専務と、近々作業する個人庭のための樹木を選びに、
卸元に行きました。Mさんは、車で1時間ほどの距離にある
大きな樹木販売園です。工事の内容によって、いろんなところから樹木を
仕入れるのですが、Mさんには、個性あふれた木々が多く、
個人庭に使用する樹木を選ぶときに伺うところです。
私の好きな場所でもあります。

流れる川を見下ろす山の斜面を利用した場所に、仕立てた木々が
植えられているのですが、巨大なものも、苗木のものも、みな瑞々しく育っています。
本来、このような卸元は、樹木にとって、生産農家から消費者のもとへ
売られていくまでの仮の宿です。どちらとかというと『陳列』された感じ
の場所が多いのですが、ここは出番を待つ間に根付いて相当大きくなった木も
ここかしこにあって自然風な『樹木園』のような感じです。
雨上がりには頂上の霧が下りてきて、ちょっと墨絵風の景色に見えます。
この間は、鶯の声が聞こえていました。
仕立てたものでない場合、山の木々を分け入るような感じで圃場に入って、
植える場所をイメージしながら(ピピッ)とくる木を探します。
ここに来るようになってから、(良いなあ)と思う、いわゆる値打ちの
ある木がだんだん見分けられるようになってきました。
先日はクロガネモチの主幹を切って、株から生え出た枝を仕立てた
木(クロガネの台モチと呼ばれます)に出合いました。
年月を感じさせるのに、コンパクトで人の高さほどです。
それなのにとても存在感があります。抑えた感じの美しさです。
大きな株立ちの樹木以上のお値段でした。根鉢は相当大きいです。
本命のヤブツバキと、他に数種の木をゲットできました。
帰り際にお会いした社長さんに、「どうや、景気は?」と言われ、最近の
時勢で少々重い空気になりました。が、「シイタケいるか?」と言われ、
山道の向こうの林の中に、ダイナミックにたてかけてある原木林で
シイタケ採りをさせて頂きました。

樹木に手を加えることで、元は自然の素材なのに、付加価値がつくものに
仕上げていく技術というのはとてもすばらしい文化だと思います。
最近街中では、どこもかしこも○○の木ばかりが目につくのが現状ですが。
(ここにあるようなさまざまな樹木にもっと出番があればなあ)と
思わずため息が出ました。


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