自然or不自然?


2011年11月2日

小春日和を、小夏日和と言い換えたいような日が続いています。
日中温度が25℃前後というのは、晩秋ではありません。
ただそんな天気が続いても、植物を扱う私たちは(騙されないぞ!)と
思ってしまいます。あっという間に木枯らしが吹くに違いないからです。
泣く泣く?まだ綺麗な秋の花を春の花に取り換えます。
そうは言っても、大きな流れの中では、やはり季節は順調に
巡っています。
少し前のことですが、秋の夜長に、自宅で静かなひと時を過ごしていると、
「チンチンチン」とカネタタキの鳴き声が、庭の方から聞こえてきました。
思わず、「あっ、カネタタキ」という私に、新聞を読みながら主人が
「そうやな・・」と答えました。シーンとした中でひびく音。秋の風情を感じながら、
しばらく「チンチンチン」の鳴き声を聞いていると、何となく音が大きくなりました。
(虫も注目されて張り切ったのかな)と思っていると、新聞から
顔を上げた主人が、「ん?カネタタキ。家の中にいるぞ!」と
言いました。途端に、風流な気持ちは吹き飛びました。
仕事では、バッタの群れの中に猛進する私も、
家の中まで虫と一緒に暮らすのはさすがに躊躇します。
元々自然界には人間が作った「内」と「外」などあるはずがありませんが、
私たち人間は、心のどこかに、あるはずの無い境界線を引いています。
その境界線の曖昧な部分の中に「庭」があります。
最近、その庭がやや内向きになってきました。
手に終えない樹木の撤去のご依頼も少しずつ増えてきたからです。
垣根を、フェンスに替えてしまうことはよくある話です。
原因の一つに樹木の方が、人間の寿命より長いことも挙げられます。
丹精込めて慈しんできた庭の木々を、体力の衰えと共に人手に頼み、
いずれ徐々に処分していきたいというご要望は切実です。
雑草対策へのさまざまな資材の需要も増加しています。
新しい住宅には土の部分がほとんど見当たりません。
もちろん逆の場合もあります。
市街地の土が全く無い、テラスのお庭に大型コンテナでの
植栽のご依頼を受けました。夏場の水切れ防止に、自動潅水も設置します。
「これから鳥や蝶も訪れるでしょうね。嬉しいわ」とお客様は
喜んでおられます。何も無かったところに、逆に緑が生まれる事例です。
それは水や土がコントロール可能であることが前提の空間です。
何が自然で、何が不自然なのか。
巷にあふれる自然志向と、現実の状況とのギャップに、
少々戸惑う今日この頃です。


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