つるバラの思い出


2009年5月10日

子供の頃住んでいた木造の公営住宅の小さな門の両脇に
父と母が新婚時代に植えた、苗木の真っ赤なつるバラが、
アーチを作っていました。
私が記憶にある頃には、小さな苗木はとても大きな株になり、
5月の今頃は房咲きの花が枝葉全体を覆いつくすように咲いていました。
満開の頃は、頭上のバラの香りを楽しんで、家に帰るのは
気持ちの良いものでした。
時に、それを背景に写真を撮る人もいました。一枝分けて欲しいという人に
母が快くはさみで切って新聞紙で包んで渡していました。
変哲の無い小さな家が、その時期とてもグレードアップしたようで、
子供心にもとても誇らしげでした。
害虫や、病気などのための特別な処置もしないのに、毎年たくさんの
花をつけていました。
大人になってからの私はバラを育てるのを避けている傾向があります。
東京に住む友人は、ベランダでたくさんのバラを育てています。
多忙な時間にどうしてできるのかと思うほど見事な花を咲かせています。
以前そのバラの花びらでつくったポプリを送ってくれました。
ふくよかな香りとポプリ独特の花びらの色あせが素敵でした。
育て方の講義も彼女から受けたのですが、趣味で育てるのには、
つい躊躇してしまいます。
でもこの時期になるとやはり懐かしさも含めてバラのある風景が恋しくなります。
だから、「たぶん」という程度の知識ですが、子供時代に慣れ親しんだバラは
ポールズ・スカーレット・クライマーという品種かなと思います。

当時はよくありましたが、最近はあまり見かけなくなりました。
病害虫には丈夫な品種です。
房咲きなので、花数はとても多く、子供の頃は、そのつぼみをママゴトの
料理の具?に使うほどでした。
ちょうど今頃は、私はその花を切って、カーネーションの代わりに、
ささやかなプレゼントとともに、母に贈っていました。
今日は母の日です。
季節の行事と花の想い出がつながるのも花を育てる楽しみの一つかもしれません。


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