雨の七夕


2015年7月7日

家の前に色とりどりの短冊の笹が飾られた家がここかしこに。
そんな風景が世の中から消えてしまってずいぶん月日が流れます。

四分の一世紀前の子育てのとき。
ママ友選びで私はあるコツを発見しました。それは、長男の
ママ友にはできるだけ二人目三人目のお母さんと付き合うようにすること、
でした。それは初めての子で、しかも子供同士が同性のママ友にありがちな
一種の『張り合い』や『比較』から逃れるためです。
実際に苦い思いをした経験から出た知恵ですが。
その代り、新米ママと先輩ママが付き合うときは、どうしても
新米ママの方が子どもを預かる時間が増えます。
二人目三人目となると、子育ても要領が良くなるというのか、
下の子が小さい方が身動きが取れないというのか。

そんな私の先輩ママ友にM君のお母さんがいました。同じ団地の
テラスハウスの隣の棟の方でした。
M君は三番目でうちの長男より数か月お兄ちゃんで学年は上でした。
毎日のように我が家に来て、遊んでいました。その逆はありませんでした。
幼稚園で私たちはバス組ではなく『お歩き』と呼ばれる徒歩通園組
でしたので、出迎えのときに運動場で会うこともありました。
年も離れていたので当初はあまり話すこともなかったのですが・・・

ある7月の第一週の週末。息子たちが、小さな手にビニル袋に入った
色とりどりの飾りつけを持って、出迎えの保護者のところへ駆けてきました。
恒例の七夕行事は、親が花屋さんで買った笹に、自宅で飾り付けるのです。
長男にとってそれは初めての経験でした。
そのときM君のお母さんに手招きを受けました。
「帰ったら、良い笹の場所、教えてあげる」と言うのです。
その伝え方がとても秘密めいていて。私は帰宅後すぐに、飛んで行きました。

M君ママについて、滅多に歩かない団地の棟の裏側を進んで行くと
見知らぬ方の裏口のガスメーターの横ににょっきり竹が生えていました。
「私毎年ここで採るの」というとM君ママは、ささっと周囲を見て
あっという間に、竹を2本手折りました。(正確には『足折り』でしたが)
今でも華奢で小柄なM君ママが器用に、サンダルの足で竹を採った姿が
浮かびます。しかもハサミ無しで!
「採っても毎年この大きさになるの。秘密の場所よ」と言われました。
二人で背丈に近い笹を獲物のように意気揚揚と引きずって帰りました。
豪華な笹に息子の作ったたくさんの飾りつけが古い家を華やかにしました。


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