名も無い草など無いのです


2011年7月14日

先日、久々に観察会に参加しました。
場所は京都の北山近くの『京女(鳥部)の森』というところです。
この森の『守り人』でもある京都女子大学のT先生が
丁寧に、森の魅力を、ご紹介下さいました。
京都女子大学の生命環境研究会作成のおしゃれで素敵なマップも頂きました。
普段、私たちは仕事上、『草』を、塊で見ています。
1本2本と数えるのではなく、・・㎡の草という風に
面で捉えています。ところが、観察会になると、1本ずつを取り上げ
ズームし、ときに植物のつくりまで見ます。
加えて名前まで知ると、名も知らなかった草がにわかに輝きだします。
逆に、造園で使う山野草や、似た感じの園芸種の場合、
普段の扱いは一鉢ずつ個別ですが、山や森では
群れて咲いているのを見ることができます。
例えば先日見たトリアシショウマという植物は
流通名のアスチルベの仲間(アスチルベ属)です。
植え場所によっては、葉先がちりちりとする場合があるのですが、
山肌の木陰の湿っぽい土のところで、きれいに咲いていました。
そのような環境に似た場所で育てれば、上手く育つかもしれません。
今回講師の一人のY先生に、クマゼミについても面白い話を伺いました。
街中でやたら繁殖して増加しているクマゼミを、地球温暖化と関連づけて
取り上げる考え方もあるようですが、Y先生は否定されました。
さまざまなデータを駆使して立証されているようです。
実はクマゼミの好みの樹木である落葉樹が街に多いのです。
逆に、ニイニイゼミの場合、好む樹種である、カシの類など
は減少傾向で、実際にニイニイゼミも少なくなりました。
つまり大きな要因は餌となる樹種のせいだというのです。
これは目からウロコでした。全国的に街路樹には落葉樹が
使われることが多いです。
雑木林もどんどん開発されて宅地になりました。
減少した緑を補うための緑地や街路は、統一感を出すために
同じ種類の樹木が使われがちです。
どうも生き物のベースになる植物を、人間が選抜することが、
生き物の画一性につながっているようです。
開発された後、これまではかろうじて各人の庭の中のさまざまな樹木が、
塊として見れば、ささやかな雑木林的な役割を
になっていたかもしれません。が、垣根もフェンスに置き換わり、
最近では、土の部分がほとんど無い家も増えました。
盛夏に一斉に響くクマゼミの鳴き声はいろんなつながりを
考えさせてくれそうです。

♪ 虹の彼方に〜


2009年10月25日

先日兵庫県の三田の近くで苔の観察会に参加しました。
植物を、じっくりと観察するのはとても楽しいひとときです。
特に、専門の先生の説明が聞ける機会はなかなかありません。
今回は、社会人対象の自然大学の卒業生であるK専務と、そのお仲間のみなさんで
主催する「つちのこ探検隊」というユニークな名前の会主催の観察会に参加しました。
みなさん自然界をベースにしたことに興味津々、人生を楽しむ達人の方々です。
K専務はその中でも精鋭の一人で、曰く「休みの方が忙しい」のだそうです。
講師の兵庫県立大学(人と自然の博物館)のA先生の話を伺いながら
普段何気なく見逃している足元の苔を観察して廻ります。
ルーペで見ると、これまでの苔のイメージとは全く違います。手にとって見ていると、
「みなさんは今、普通の植物で言うと、林か森を手のひらに乗せている」と。
先生の言葉に改めて観察すると、樹木が集まったように葉がびっしりと、
その一つ一つの葉の形もとても細かな造詣です。突然そのルーペの中の森に
白いもの(センチュウ?)がうごめきました。苔はさまざまな生き物に
棲家を提供しているそうです。標本や、図鑑と違い、屋外の観察会で見る植物は
必ずいろんなものとつながっています。というかそれが自然界なのでしょうが。
まず苔の全体像を良く見て、緑の塊の中に、黄色や、青味や、赤味、白味、銀色などの
色目の違いに気づく。色が違えば種類も異なります。同じような色なら形の違いに気づく。
そこから、詳しくルーペで観察して、それがどんな名前なのかという方法で
観察を続けました。ほんの30分の距離を2時間半もかけて歩きます。
乾燥した状態と水分を含む状態が短時間で変化する点も苔ならではの面白さでした。
特に街中でよく見かける、水路や石垣の壁面につくハマキゴケは、乾燥しているときは
葉が巻いてしまって、黒っぽいのですが、霧吹きで水をかけると
あっという間に鮮やかな緑色になります。その様子は、「オズの魔法使い」の映画で
モノクロの映像からエメラルドシティが現れるような劇的な感じです。
これはどなたでも簡単にできます。
述べ4時間半で、地衣類やキノコなども含めて10種類以上を観察しました。
それぞれの苔が生育しやすい環境も知ることができました。
なかなか奥が深そうです。
これまで庭や苔球の「苔」しかまじまじと見ていませんでしたが・・・
ずっと苔目線だったので、数十cm上にゆれていたコウヤボウキの白い花にも
気づかないほどでした。
身近な中にも「センスオブワンダー」はあふれています。


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