生命力


2014年9月10日

今朝はうろこ雲でした。中秋の名月といい。季節は確実にめぐっています。

夏の終わりに、生まれて初めての全身麻酔を経験しました。

手術自体はいわゆる腹腔鏡手術という、ピンポイントのものだったので、
入院日数も、退院後の復帰までも非常に短期間で済みました。

全身麻酔というのは徐々に記憶が薄れていくものだと想像していましたが違いました。
テレビドラマで見慣れたような手術室の様子を見ながら、麻酔科の先生と話をしていて
心の中で(会社に今から手術だとメールしなければ。とにかくメールしなければ)と
ぼんやり、周りの様子をみていたら、実はその状態はもう手術が済んだ後でした。
記憶のフィルムの真ん中が切断されている感じでした。

私は麻酔の『効き』が良かったらしく、何も感じなかったのですがその分
後が大変でした。文字通り酔った状態というのでしょうか、とにかく吐いてばかりでした。
絶食中で出すものが無いので、出るのは胃液ばかり。出し切った達成感でうとうとし、
また吐き出すという悪循環でした。
自分の胃液と向き合う機会も生まれて初めてでしたが、その透明な器の中の黄色い液は
見るからに強酸で、もし私がハエぐらいなら飛び込んだらジュっと溶けるかなという感じです。
次に連想したのが、ウツボカズラという食虫植物の断面の画像で。袋の中の液体の中に
累々とある昆虫の残存物でした。
が、よく考えてみたら人間の胃袋はそんな上品な感じのものではないはずです。
多分大きく動いたり、壁面からプシャーっとさらに追い討ちをかけるように胃液が出て・・・
ガシャガシャと内容物を消化していくさまはちょっと恐ろしく。
本当のイメージはむしろ、映画のエイリアンを裏返した感じかなと。
そんなスゴイものがどの人にもどんなに楚々とした方にも必ず1匹(一つ)は
体内にいるのだと気づきました。

生きていくための胃袋のその営みの激しさは、私の意識や知識にも関係なく、日々たえまなく
他の臓器とともに動いているんだと思うと、自分が『生き物』であったことを
リアルに感じてしまいました。

最後に頭に浮かんだイメージは切り倒された木からでも芽が出る再生の様子でした。
案外、人間もあれこれ頭の中で考えるより、自分の中にある生き物としての生命力に
身を委ねた方が、長生きできるのかもしれません。

とまあ、しばらくは、重いものを持てないおしとやかな日々が続きます。


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