ヒカゲノカズラ(№492)

 シダの仲間で、ヒカゲノカズラ目ヒカゲノカズラ科の植物にヒカゲノカズラがあります。名前には日陰と付いていますが実際に生息しているのは日向です。またカズラとなっていますが、地上を這いますが、他の植物の上に這い上がることはありません。なぜヒカゲノカズラと呼ばれるのでしょうね。
 茎には主茎と側枝があり、主茎は匍匐茎となり所々で根を下ろしながら5m近くまで伸びるものもあります。茎には棘状の細い葉が杉の葉のように出ています。シダの仲間ですので花ではなく胞子で増えます。7~8月、長さ20~25cmの直立した茎を出し、先端に2~6cmの胞子嚢穂をつけ9月頃胞子を飛散させます。沖縄を除く日本全国に分布し、寒さに強く雪の下でも緑を見せてくれます。林道周辺でよく見られましたが、最近林道も手入れが行き届かず日陰地が多くなり目にする機会が減ったようです。
 ヒカゲノカズラはドライフラワーとして利用されたりアート、生花、アレンジメントの材料や金魚などの産卵材、料理の飾りなどに使われています。
 ヒカゲノカズラの胞子は石松子と呼ばれ湿気を吸収せず、流動性がよいことから丸薬のコロモに利用されたり、大きさや比重が果樹の花粉と近いことから人工授粉時の花粉増量剤として利用されたりします。また、爆発的に発火するため花火の材料にも重宝されているそうです。
 天岩戸の前でアメノウズメノミコトが踊った際、たすき掛けにしたのはヒカゲノカズラと言われています。ごわごわして着心地の良いものではありませんが…。それからでしょうか、神聖な植物として神社や皇室行事にも使われています。
 別名はムカデノカズラ、キツネノエリマキ、ウサギノネドコ、カミダスキなどと呼ばれるようです。
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▲ヒカゲノカズラ
▲ヒカゲノカズラ
▲ヒカゲノカズラの胞子嚢穂が立ち上がった状態
▲胞子飛散後のヒカゲノカズラ

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(仮称)ウメシロヒメヨコバイ(№491)=モモヒメヨコバイ

 農林水産省の行う発生予察事業の一環として各都道府県は農作物の病害虫に関する発生情報を農業関係者等に向けて発信しております。この中に昨年末から本年にかけて6県(和歌山、徳島、埼玉、京都、大阪、群馬)から特殊報または注意報として出された害虫がいます。それは主としてウメで見つけられたヒメヨコバイの1種(Singapora shinshana、和名はありませんが京都ではウメシロヒメヨコバイと仮称しています)です。農作物のウメで初めて発生が認められた害虫です。
 体長3~3.5mm、全体は薄い黄緑色をしており、黒い複眼が目立ちます。さらに頭頂部には複眼同様の黒点が一つ見られます。ウメ、モモを加害しますが他にスモモ、ナシ、リンゴ、サンザシ、ポポー、ポプラを加害するようです。成虫、幼虫ともに葉の裏から吸汁し、被害葉はカスリ状に細かい斑点が多数でき、ひどくなると遠目に葉が白っぽく見えます。さらに被害が進むと落葉します。葉の裏には多数の脱皮殻が残ります。発生のひどい木に近寄ると、多数の成虫が飛びまわります。
 さて、関西在住で庭にウメ(ハナウメ等を含む)、モモ(花桃、ほうきモモ等を含む)、スモモなどを植えておられる方は、「この虫はもう10年ほど前から毎年出て困っている。」とおっしゃる方もおられるのではないでしょうか。この害虫に薬を撒いてほしい、虫が多いのでウメを切ってほしいと依頼されたりしたことが何軒かあったことを思い出します。比較的農薬には弱く薬剤散布するとしばらくは鳴りを潜めましたが次の年には復活していました。害虫名がわからずあちらこちらで聞いてみましたがわからないままに今日まで来てしまいました。農家が栽培するウメでは年間何度かの殺虫剤が散布され、問題になるほどの発生がみられなかったのでしょう。
 今後和名も付けられ、防除法も確立されることと思いますが庭木の害虫となるとなかなか研究が進まないことを実感いたしました。
 本害虫は過去にヒメヨコバイSP(№238)として紹介したものと同一害虫です。

 本害虫は2021年に和名モモヒメヨコバイ(植物防疫75巻)と決められました。
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▲被害を受け白くなったモモの葉
▲葉裏の脱皮殻
▲葉表にとまる成虫
▲成虫(頭頂部に黒点)

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セイタカアワダチソウ(№490)

 稲刈りが済んだころ、市街地の空き地や耕作放棄された畑が背の高い黄色い花で埋め尽くされます。この背の高い雑草はセイタカアワダチソウ呼ばれる北米原産の帰化植物でキク科、アキノキリンソウ属の植物です。
 明治の末に切り花用として導入されたものが逸出し、空き地に群棲するようになりました。この花はミツバチにとって、秋の貴重な蜜源となるため一時養蜂業者が全国に種子をばらまいたともいわれています。高さ1~3m、茎は途中で分枝せずまっすぐに伸びるためニューハギと呼ばれ、袖垣などの材料にも使われます。種子と地下茎で広がります。根から他の植物の生育を抑える物質を出し他の草の生育を抑えて一面に広がります。このような作用をアレロパシーと言いますが、この物質はセイタカアワダチソウ自身の幼植物にも抑制的に働き、自己の繁殖の妨げになることがあります。
 茎の先端から横枝を水平に多数分枝し、三角錐状に花をつけます。一つの花には多くの舌状花(雌性)と5,6個の筒状花(両性)が見られます。花粉症を起こすと考えられたこともありますが、花粉を出す筒状花は少なく、虫媒花であるため一つの花から出る花粉量も少なく、比較的重いなど花粉が風で飛ばされて花粉症を起こす原因になることは少ないと考えられています。
 植物体にはサポニンが含まれ、ムクロジ、エゴなどと同様に風呂などに入れると泡立ちます。特に開花前の花穂がよいそうです。
 セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシやアワダチソウグンバイムシ、うどんこ病が発生しやすく、アレロパシーによる自己抑制や多量の肥料を消費し数年で土の栄養状態悪化を招くことなどが災いし、いつの間にか群落が消えてしまうようです。
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▲畦畔に咲くセイタカアワダチソウ
▲セイタカアワダチソウの花
▲三角錐状に花をつける
▲個々の花には多数の舌状花と、数個の筒状花

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