フユユスリカ(№570)

 俳句で「蚊柱」といえば夏の季語です。しかし、1月の陽だまりで蚊柱を見つけました。
 蚊柱は、ユスリカのオス成虫が何か目印になるものを中心に群がって柱状に飛翔するもので、メス成虫がこの中へ飛び込み交尾をする配偶のための現象です。ではユスリカとは?ハエ目ユスリカ科に分類されるカに似た体形の昆虫で、成虫の体長は1~5mm、翅は前翅2枚、後翅は退化して平均棍と呼ばれる突起になっており、一見2枚羽に見えます。前脚が比較的長いのも特徴になります。オスの触角はブラシ状で、口器や消化器官は退化し吸血もせず一切食べ物を摂らないため成虫寿命は数日以内です。幼虫は水中で生活し、細長い筒型で、水底の泥などを食べ、体をゆするところからユスリカと呼ばれています。釣りの餌に使われるアカムシはユスリカ(オオユスリカなど)の幼虫です。
 通常成虫は夏に発生するため、夏の季語にもされていますが、日本に生息する2000種類ほどの中には夏に夏眠し、冬になると成虫が出てくる種類でフユユスリカと呼ばれる一群がいます。1月の寒い時期に蚊柱を作っているのはこの仲間です。11~12月と、1月の年2回発生します。
 ユスリカは水質浄化や他の生き物のエサとして有益である反面、不快害虫やユスリカ喘息の発生源としてマイナスの面も持っています。
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▲フユユスリカの蚊柱
▲フユユスリカの蚊柱(スロー撮影)
▲フユユスリカの1種オス成虫
▲フユユスリカの1種オス成虫(中脚の後ろに平均棍が見えます)

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ボケ(№569)

 織田信長の家紋は「五つ木瓜」(イツツモッコウ)ですがこの木瓜(もっこう)はボケを意味します。木瓜(もっこう)が(もけ)からボケと変わったようです。
 中国原産のバラ科ボケ属落葉低木で、平安時代に渡来しその後品種改良が進み現在では200品種以上あると言われています。樹高1~2m、直径3~4㎝の花が11~12月(寒咲種)または3~4月(春咲種)に開花します。花の色は紅が基本種ですが赤、白、ピンクなどがあります。秋には縦に溝のある瓜に似た果実をつけますが、熟れても裂けることはありません。この果実は香りは良いのですが生食には向かず、果実酒やシロップなどに利用され、漢方では疲労回復、利尿効果に利用されます。
 枝にはとげがあるため生垣に使われ、強健なことから庭木や盆栽にも使われます。徒長枝が伸びますが、この枝にはほとんど花は付かず、花は比較的短い充実した枝に付きます。梅雨のころ、葉に赤い斑点が出ることがありますが、これはアカホシ病で、冬の間カイヅカイブキで冬を越したものがボケやナシに移り発病したものです。発生がひどいと落葉しやすくなります。
 日本原産でボケ属に属する植物にクサボケがあります。樹高1m未満の小柄な樹木ですが、最近は減少気味であまり目につかなくなってきました。
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▲ボケの花
▲ボケの花
▲徒長枝(花はつかない)の伸びたボケ
▲ボケの果実

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ヒドリガモ(№568)

 厳冬期の溜池や河口は繁殖地から冬の寒さを避け、エサを求めてやってきた冬鳥たちで賑わっています。中でも、集団でいることの多いカモであるヒドリガモは最もポピュラーなカモの一種です。
 繁殖地は北緯50~70度のユーラシア大陸で、越冬のために日本へ渡ってきます。全長43~53cmの中型カモで、オスは顔全体が赤褐色、頭上は褐色、メスは全体が褐色で黒褐色の斑紋があります。オスの顔が赤褐色であるところから緋鳥カモと呼ばれます。嘴は灰色で先端のみ黒色です。主として淡水の藻類を食べますが、海産藻類、陸上の植物、時には小さな昆虫なども食べます。潜水してエサを取ることはしませんが養殖ノリや畑の大麦を食べる害鳥扱いされることもあります。夜間には陸上でよく活動し、オスは「ピュー」と笛を吹いたような声で鳴きます。
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▲ヒドリガモオス成鳥
▲ヒドリガモ 左:オス、右:メス
▲ヒドリガモ 左:オス、右:メス

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