セントウソウ(№540)

 早春の野山を歩いても、まだ草花の少ない3~4月、林縁に草丈僅か10~25㎝の小さな白い花を見付けました。葉はセリのように深く切れ込んだ葉(1~3回3出羽状複葉)で地際から少し紫色を帯びた葉柄が伸び(根生葉)その間から花柄が伸びて3~5本に分かれ、それぞれの先に、直径3mm程度の小さな花を5~10個つけています。セリ科セントウソウ属のセントウソウで1属1種です。
 ところでこの花、花弁5枚、おしべ5本、めしべ2本ですが、きれいな円形ではなく少し楕円形に近い形をしています。花弁の大きさも大花弁3枚、小花弁2枚に見えます。さらに虫眼鏡で見ると、2個の子房があり、その一つずつに大花弁3枚とおしべ2本または小花弁2枚とおしべ3本がついているように見えます(花拡大の写真)。2個の子房が5枚の花弁と5本の雄しべを上手く分け合って共有し一つの花を構成しているようです。そのため花の形が楕円形に近くなっているのでしょう。
 変わった名前ですが、他の花に先駆けて咲くから先頭草、仙人の住む洞穴のあるようなところに咲くから仙洞草、仙洞御所に咲いていたから仙洞草などと言われることもあるようですが牧野富太郎の図鑑では謂れは不明と記載されています。ところで別名オウレンダマシと言われますが、これはセリの葉に似たオウレンであるセリバオウレン(キンポウゲ科)に似ているところから呼ばれているのでしょうが、セリバオウレンに似ているオウレンダマシ(セリ科)なのか、セリの葉に似ているオウレンなのかどちらでしょうか。
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▲セントウソウ
▲セントウソウの花
▲セントウソウの葉(セリの葉に似ている)
▲セントウソウの果実(2分果)
▲セントウソウの花拡大

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ヨシガモ(№539)

 各地の溜池で冬を越していたカモたちの姿も徐々に見られなくなり始めました。そのようなカモの中で、今年よく見られたものにヨシガモがいました。
 オスの頭の形はナポレオン帽を縦にかぶった形で、頭の羽は構造色により光の加減で緑や紫に輝き非常に美しいカモです。この頭の形をオニギリ型あるいはオシドリのような形と表現する人もいます。頭だけではなく、尾部にも特徴があります。三列風切羽(翼の付け根下部の羽)が長く鎌状にカーブして目立ちます。
 昼間は他のカモ類とともに池の水面で生活し、お尻を出して顔を水中に入れ水草を食べている姿が見られます。飛び立つときも助走なしで水面から飛び立ちます。夜間にはイネ科植物の種子などを求めて活動しているようで草食性のカモです。すべてのカモがそうであるように、メスは地味で特徴がなく目立ちません。
 春になると、繁殖地であるモンゴル、シベリア、サハリンなどへ帰っていきます。
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▲ヨシガモ(3オス)
▲ヨシガモ(1オス)

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フランスギク(№538)

 毎年梅雨期から初夏にかけ、団地斜面で白い菊の花が見られる場所があります。草丈30~60㎝、まっすぐ伸びた茎の先に直径5~6㎝の菊の花が咲きます。葉はへら型で鋸歯があり対生につき、茎には毛が見られます。
 この花はヨーロッパ原産で、江戸時代末期に園芸用として導入されたキク科フランスギク属のフランスギクです。耐寒性を持つ多年草で、種子や地下茎で繁殖を続けます。夏の暑さにあえば地上部は枯れ休眠に入ります。しかし、山間冷涼地では秋まで咲き続け、広い面積に咲き誇り外来種として嫌われ者扱いされる場合も見られます。
 フランスギクによく似た白い菊が他にもみられますが、おおざっぱには次のような点で区別できます。ノースポール(キク科フランスギク属)は全体に小型で草丈15~30cm、花の直径は3㎝程度、開花時期は12~6月、葉は春菊のように切れ込みます。マーガレット(キク科モクシュンギク属)は大型で草丈30~100㎝、花の直径は5~6㎝で白以外にも黄色、ピンク色など多彩で開花時期は10~6月。葉は切れ込みが深く細いのが特徴です。他に園芸用に交配されたシャスターデージーと呼ばれる大型種(草丈40~100㎝、花の直径6~10㎝)も見られます。
▲フランスギク
▲フランスギクの花(ヒメマルカツオブシムシ成虫が多数集まっている)
▲フランスギクの葉
▲山地で一面に咲くフランスギク
▲ノースポールの花(花弁は丸みを帯び小型)

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