ヨモギワタタマバエ(№507)

 昨秋、ヨモギの茎に作られた直径1~2cmの毛の玉(虫癭)を採集し、飼育容器に入れ観察を続けました。年が明け4月に入り、2種類の昆虫が羽化してきました。
 一つ目はヨモギにこの虫癭を作らせたタマバエの成虫でヨモギワタタマバエです。ハエ目、タマバエ科、ロパラミア属のタマバエです。体長2.5mm、翅は前翅が2枚で後翅は退化し棍棒状になって左右に一つずつついているのが写真でもわかります。ヨモギワタタマバエがヨモギの茎に産卵するとヨモギは茎(時には葉脈)に綿毛の玉を作ります。これがヨモギクキワタフシと呼ばれる虫癭(ゴール、ムシコブ)です。ヨモギの葉や茎の毛(繊維も含む?)を集めたものはモグサとして鍼灸治療に利用されますが、ヨモギの虫癭もモグサとして使えるそうです。羽化して出てきたヨモギワタタマバエに霧吹きで水を与えてみましたが吸水の様子は観察されず、半日から1日程度で死んでしまい非常に短命なようです。ところで、ヨモギワタタマバエの寄生を受けたヨモギの被害はどうなのでしょうか。あまり大きなダメージを受けていないようにも見えますが。
 さて、もう一種類の昆虫はなにでしょうか。美しいるり色をした体長1mm程度のハチでこちらはヨモギワタタマバエに寄生していた寄生バチのようです。わずか2.5mm程度の小さな昆虫を巡って食うか食われるかの世界が展開しているのですね。
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▲ヨモギの茎に出来た虫癭(ゴール、ムシコブ)
▲ヨモギワタタマバエ(オス)
▲ヨモギワタタマバエ(メス)
▲ヨモギワタタマバエに寄生していたと思われる寄生バチ

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コバノミツバツツジ(№506)

 桜が咲くころ、山へ入り尾根筋にたどり着くと我々を迎えてくれるツツジがあります。
 コバノミツバツツジと言い、多くは本州中部以西から九州までのアカマツ林の下で淡紫色から紅紫色の花を咲かせる落葉低木です。ツツジ類の中では一番早く咲き、葉が出る前に花を咲かせるため非常に目立ちます。高さ2~3mで花弁は筒状で先は5裂し、5裂した上部の1裂片には紅色の斑点が見られます。この斑点は、昆虫たちに花筒の奥にある蜜のありかを示す密標です。メシベは1本、オシベは10本ありそのうち5本は長く、5本は短いのですがいずれも上向きに湾曲しています。花の色、密標、メシベ、オシベの形などアゲハチョウの仲間が好む特徴ですが、アゲハチョウの出現には少し時期が早すぎるのでしょうか種子はあまり多くできないようです。葉は花が咲き終わるころから開き始め、枝先に3枚の葉を輪生します。コバノミツバツツジの名前は、小さな葉を3枚出すところから付けられたものです。葉裏には細かい網目模様が見られます。
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▲コバノミツバツツジ
▲花の拡大
▲3枚の葉
▲葉裏の葉脈

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シロハラ(№505)

 冬季の西日本に比較的多い渡り鳥の一つにシロハラがいます。
 スズメ目ヒタキ科の小鳥で全長24~25㎝、スズメより大きくヒヨドリより僅かに小さな鳥です。中国東北地方やロシア沿海地方で繁殖し、冬に日本へやってきて越冬します。全身が灰褐色で腹部は白いのですが地上部にいることが多く、落ち葉に紛れて目立たない鳥です。飛ぶと尾の先の白が目立ちます。
 雑食性で暗い林や、公園、緑地の低木の下などの地上部で昆虫やミミズ、木の実などを探します。単独で行動し、地上部をピョンピョン跳ねながら移動します。落ち葉をガサゴソとはねのけながらエサを探しますので落ち葉を掃除するような公園などで見ることはほとんどありません。冬の落ち葉の下にも生き物たちの世界が広がっており、このような環境を生活の場としている鳥たちにとって、自然な環境を残すことも必要ですね。
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▲シロハラ
▲シロハラ

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