ハクセンシオマネキ(№489)

 わずかに残っている大阪湾の干潟で見られるカニにハクセンシオマネキがいます。オスでは左右どちらかの鋏脚(はさみ)が極端に大きくなった小型(甲長12mm)のカニです。大きな鋏脚は白く、夏の繁殖期にはこの大きな鋏脚を左右に振る(ウェービング)様子がまるで白扇を振るように見えることからハクセンシオマネキと呼ばれます。
 干潟に巣穴をほり、穴の周囲30㎝程度を縄張りとし、驚くとすぐに巣穴の中へ逃げ込みます。目は長い柄を持っており巣穴の外にいるときはいつも高く持ち上げ周囲を見張っているのでしょう。泥を鋤取り、中の栄養分を食べ、残りは小さな泥団子にして巣穴の周りに捨てています。オスは左右どちらかの鋏脚が大きくなっているため、食事は残りの片手しか使えません。
 エビ目、スナガニ科のカニで、日本では本州神奈川県以南の太平洋側、四国、九州に分布しています。生息地は河口付近の満潮線付近で満潮時も水没せず、干潮時にも乾燥しない、日当たりのよい礫交じりの砂泥質干潟です。最近、このような場所は川からのゴミで汚染され、干拓や浚渫作業で人為的にも減少しているため生息地は極端に減少しており、環境省の絶滅危惧Ⅱ類にも指定されています。大阪湾の海岸はほとんどがコンクリート護岸であり、現在ほんの一部に残された干潟でしか見られなくなっています。

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▲ハクセンシオマネキのオス(左上と右下はチゴガニ)
▲ハクセンシオマネキのオス

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イチジク(№488)

 夏も終わりに近づくと、果物屋さんの店頭にイチジクが並びます。イチジクは漢字で無花果と書かれ、花のない果実と思われていますが、実はちゃんとした花を咲かせています。
 少し高めの畝を立て、その間に水を溜められるようにした果樹園で、地上20㎝程度の高さで左右に幹を1本延ばした形(コルドン仕立て)で栽培されているのがイチジクです。水を好み、その年に伸びた枝の葉腋(葉の付け根)に下から上へ順に実をつけていきます。日本へは天草を通じてポルトガルから導入されたそうで、葉は大きく、3裂したものと5裂したものがありますが、前者は江戸時代に、後者は明治時代に導入された品種です。
 さてイチジクでは、実ができる前の花は見えませんが、実を半分に切ってみると、中央の空洞に向かって周囲から無数の突起が出ているのが見えます。この突起の一つ一つが花で、周囲の白い部分は花托と呼ばれ主として食用になる部分です。このような外から見えない花の集まりは陰頭花序と呼ばれます。
 この花はもともと虫媒花(昆虫が花粉を媒介する)ですので、昆虫が出入りする穴が実の先端に空いています。ただし、イチジクの花粉を媒介する昆虫であるイチジクコバチは日本にはいません。日本で食用に栽培されているイチジクは単為結果性の品種で受粉しなくても実が太る品種ですので、実の中でイチジクコバチが受粉活動をしているようなことはありません。ただイチジクの仲間のイヌビワではイヌビワコバチが受粉活動を行っており、実の中にコバチがいます。このことはまた別の機会に紹介しましょう。
 イチジクの枝や葉を切ると白い汁液が出ますが、この中にはフィシンと呼ばれるたんぱく質消化酵素が含まれており、大量の汁液に触れ続けると指がつるつるになるそうです。
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▲コルドン仕立てのイチジク
▲イチジクの果実(葉腋に下から順に付く)
▲イチジクの果実
▲半分に切ったイチジク(多数の花が中央に向かって付く)
▲イチジクの種子?がみえます
▲イチジク果実先端の穴

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モンキアゲハ(№487)

 国内で最大のチョウといえばモンキアゲハが挙げられます。
 チョウ目アゲハチョウ科、開帳11~14㎝の大きなアゲハチョウで黒色、尾状突起(しっぽ)があります。後翅の裏、表ともに鮮明な黄白斑を持つため、まず見間違うことのないチョウです。この黄白斑からつけられた名前がモンキアゲハですが、新鮮な個体の紋は白に近いのですが日がたつにつれて黄色を帯びてきます。
 関東以西の田舎では普通にみられますが都会では少ないようで、珍しそうでそうでもない蝶と言えそうです。もともと南方系(西南日本、東南アジア~インドに生息)のチョウですが最近少しづつ北上しているようで仙台で採集された例もあります。幼虫の食草はミカン、カラタチ、サンショウ、カラスザンショウなどミカン科の仲間です。アゲハの幼虫は臭角を持ちますがモンキアゲハの臭角はクロアゲハ同様赤い色をしています。冬は蛹で越冬します。
 地色が黒いアゲハは山道の湧水などで吸水しているのがよく見られます。吸水中には同時に排泄も見られポンピングと呼ばれます。これは夏場、体温が上がりすぎるのを抑えるためだけではなく、水に微量に含まれるミネラルを摂取しているのではないかともいわれています。何を摂取しているのかはわかっていませんが、このような吸水はオスだけにみられることから生殖に関係するものではないかと想像されています。
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▲吸水中のモンキアゲハ
▲吸水中のモンキアゲハ

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