アキチョウジ(№456)

 夏も終わり秋になると青い花が多くなると言われますが、山道のやや湿ったところでよく見かける青い花にシソ科ヤマハッカ属のアキチョウジがあります。
 谷筋の日陰でやや湿った山道をハイキングする人はきっとお目にかかったことのある秋の花です。草丈70cm~1mになり、穂状の花柄に筒状の花をたくさんつけます。一つの花は長さ2㎝程度で紫青色。筒状の先は上下に分かれ、蛇が口を広げたよう(唇形花)になります。花柄の片側に花が集まって咲くため、花穂全体が少し弓なりに傾きます。茎はシソ科の特徴で四角く角張っています。葉の長さは5~15㎝、幅2.5~5㎝で対生についています。多年草で、群落を作ることが多いようです。
 アキチョウジという名前から、T字型に花が咲くと勘違いされることがありますが、花の形(筒状で先が割れる。)がチョウジ(南方の樹木で、蕾を乾燥させ、香辛料や漢方薬として利用されます。この形が円筒状で先が割れている。)に似ており、秋に咲くためアキチョウジと呼ばれます。決してT字型の意味ではありません。
 日本では中部地方から南に分布していますが、関東ではよく似たセキヤノアキチョウジが分布しているそうです。
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▲アキチョウジ
▲アキチョウジの花
▲アキチョウジの茎(四角)と葉(対生)

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ヒメアカタテハ(№455)

 秋深くなって、花壇の花も冬用に模様替えが必要な頃になると決まって現れる蝶がいます。パタパタと忙しく羽ばたき、花から花を飛び回りながら蜜を吸っているタテハチョウ科のヒメアカタテハです。
 前翅長25mm~35mm、全体に橙褐色のやや小型のタテハチョウです。日本にはよく似たアカタテハと呼ばれる蝶がいますが、これよりも小型で、後翅表面が橙褐色(アカタテハでは黒褐色)である点で区別されます。ヒメアカタテハのオスは縄張りをつくるため、気に入った花壇には居つくことが多く、他のタテハチョウのように樹液、獣糞、腐果などから吸蜜することもありません。寒さにはそれほど強くありませんが、日本では秋になると北へ移動することが多く、生息地を北上中の蝶の一つとなっています。欧州では春季、北アフリカから地中海を渡り北欧までの旅をし、秋季には逆コースで南下することが知られており延べ15,000㎞を6世代かけて移動するそうです。
 食草はキク科のハハコグサ、ヨモギ、アザミ、ゴボウなどでイラクサ科の植物も食べるようです。かつては成虫で越冬するものと思われていましたが、春先非常にきれいな成虫が見つかることもあり、詳しく調べられた結果、成虫だけではなく各態で越冬することが分かりました。冬季休眠しないため、冬でも暖かい日には、花を訪れる姿が見られることがあります。
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▲ヒメアカタテハ(翅表面)
▲ヒメアカタテハ(翅裏面)

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シュウメイギク(№454)

 秋口になると里山を中心に雑草の中からひときわ目立つ濃紫色の菊の花を見ることがあります。シュウメイギクと呼ばれますが実は菊科の花ではなくキンポウゲ科アネモネ属(イチリンソウ属)の仲間です。
 古い時代に中国から渡来し、各地で野生化しています。濃紫色、八重咲きが原種のようで京都市貴船に多く自生することからキブネギクとも呼ばれます。今では白、淡紅色、一重など園芸種も作出され広く普及しています。晩夏から茎の先端に1輪開花し、その両脇に各1輪、更にそれぞれの両脇に1輪ずつと賑やかに咲き続けます。半常緑性多年草で綿毛に包まれた種子または地下茎で増えます。栽培されると花後の茎は切り取られ種子が見られないことが多く、品種によっては種子をつけないものも多いようです。草丈0.5~1m、花は4~5㎝の大きさでよく目立ちます。花の外見は菊に似ていますが、花弁のように見えるのはガクで本当の花弁は退化しています。花の中央には多数の雌しべが固まり、その周囲を雄しべが輪状に取り巻いています。キク科植物のコスモスでは、大きな花弁をつけ雌しべ雄しべが退化した舌状花が周囲に、中央に雌しべと雄しべを持った筒状花で構成されており外見は似ていますが花の構造はかなり異なります。
 キンポウゲ科でプロトアネモニンを含むため切り口の乳液に触れるとかぶれることがあります。
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▲シュウメイギク
▲シュウメイギクの花(雌しべ、雄しべ、ガク)
▲綿毛をつけたシュウメイギクの種子
▲シュウメイギクの花(苞とガク)
▲コスモスの花(苞、ガクと花弁)

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