マダケ属の花(№355)

 春はたけのこのシーズンです。竹は地下茎を伸ばし、所々にタケノコを出し、それが成長して竹になります。地下茎が伸びる分だけ広がることになります。種子を作り、種子散布で繁殖場所を広げる他の植物とは違うと思っている人も多いかもしれません。しかし、竹も開花し種子をつけますが、その花を見た人は意外に少ないものです。
 昨秋からイネ科マダケ属の仲間が開花しているとの情報を聞き、撮影に行きました。幾種類かの竹が植えられているため、マダケの仲間としかわかりませんが開花していました。花は稲の花とそっくりで雄しべが外へ飛び出したような状態になっています。やがて大量の種子が出来、親株は枯死してしまいます。その後種子による繁殖が始まりますが、元の状態に戻るには15~20年かかるといわれています。また、竹の種子は栄養価が高く、竹が開花した翌年は大量の竹の種子を餌としてネズミが爆発的に増えるとも言われています。マダケの場合1度開花すると次に開花するのは120年後といわれており人間の寿命より長いため生涯その開花にお目にかかれない人も出てきます。
 イネ科ササ属のチシマザサの開花もマダケ属と似ていますが、開花周期は60年といわれています。
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▲開花中の竹林(大阪市)
▲竹の花(大阪市)
▲竹の花(大阪市)
▲竹の花(雄しべが飛び出している:大阪市)
▲チシマザサの花(六甲山にて)

オオバン(№356)

 冬になると溜池が水鳥たちで大変にぎやかになります。この水鳥たちの中で最近特に目立つ鳥にオオバンがいます。全長39cm程度の水鳥で全身真っ黒ですが額から嘴が白いのが特徴です。ツル目クイナ(水鶏)科オオバン属の仲間で、クイナの中でもずんぐりとしていて大きめの仲間に入ります。黒い水鳥としてキンクロハジロがいますがこちらは羽が白いため、容易に区別できます。
 オオバンは、30年ほど前までは稀少な鳥とされていましたが、最近は関西以西特に琵琶湖を中心に、爆発的に増えています。滋賀県野鳥の会の調査では10年前は2万羽だったのが昨年は8.5万羽と4倍以上に繁殖し全水鳥の1/3がオオバンで占められているとも言われています。従来、中国で繁殖していたものが琵琶湖で越冬するようになったとも言われています。一方埼玉では絶滅危惧ⅠA、栃木、千葉では絶滅危惧Ⅱ類に入れられており地域差が大きいようです。
 オオバンは他の水鳥と異なり水かき(指と指の間の膜状のもの)の代わりに指にヒダ(指の両側に翼)を持っています。弁足と呼ばれますが、水中、水上での動きは他の水鳥と比べ劣るようにも見えます。
 オオバンは、主として水生植物を主食としていますが、琵琶湖では水中の水草が不足なのか集団で陸に上がり草なども食べています。爆発的な増殖で水生植物の新芽などが食害されておりその影響が気になります。
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▲オオバン
▲オオバンの集団
▲オオバンの弁足
▲畦で草を食べるオオバン

ヤドリギ(№357)

 ヤドリギと呼ばれる植物があります。これは、数種の仲間を総称する場合と、ビャクダン科の1種を指す場合があります。一般には後者を指し、自分自身も光合成をする半寄生の常緑植物です。他の樹の枝に、長さ30~100cmで叉状に分岐した枝をボール状に伸ばし、長さ2~8cmでやや厚めの対を成した葉を付けます。ケヤキ、エノキ、クリ、アカシデ、ヤナギ類、ブナ、ミズナラ、クワ、サクラなど落葉広葉樹に自身の根を進入させ、養分と水分を吸収します。寄生するのは落葉樹であるため、冬季には葉の落ちた樹に丸いボール状の緑の塊が見られ遠くからでもそれとわかります。寄生された樹から養水分を吸収しますがその樹を枯らすようなことはありません。
 雌雄異株で3~4月に2~3mmの目立たない花を咲かせ、秋には淡黄色~橙黄色の液果(多肉質で水分を多く持った果実)をつけますが、この種子は粘着質のにかわ状繊維にくるまれており、鳥が食べると粘液質の糸を引いて種子が排出されます。この種子が樹にくっつき発芽して新たなヤドリギが誕生します。鳥の中でもヒレンジャクやキレンジャクが特に好むようです。
 ヤドリギは西欧ではクリスマスの飾りに使われるようですが、日本では殆ど利用価値のない樹です。日本では類似種としてオオバヤドリギ、マツグミ、ホザキヤドリギ、ヒノキバヤドリギが知られています。
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▲ヤナギの仲間に寄生したヤドリギ(丸いボール)
▲ヤドリギの若木(オオズミの枝に根を進入させている)
▲ヤドリギの果実
▲葉に付いたヤドリギの種子(膠状物質の底面に見える)

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