アサギマダラ(№315)

 蝶の中でも長距離移動するものとして比較的多くの人に知られているものの一つにアサギマダラがあります。日本の各地からマークを付けられたアサギマダラが放され、再捕獲された日付や場所が記録され生態や、移動距離などがわかりつつあります。
 この蝶の食草は、ガガイモ科の植物でキジョラン、カモメヅル、イケマ、サクラランなどで、これらの植物が持つアルカロイドを体内に貯蔵し、体を有毒とすることで天敵から身を守っているようです。そのためか、成虫の翅の模様は非常に目立ち(警戒色)、飛び方もゆったりとふわふわ飛ぶなど目立ちたがり屋のように見えます。幼虫の紋も派手でキジョランの上で摂食しているのが良く目立ちます。蛹(尾端をくっつけた垂蛹)も、金属光沢のある黒紋を持っています。
 この幼虫は最初、キジョランの葉に円形の傷をつけてから葉を食害します。これは、キジョランが持つ有毒物質のアルカロイドの流れを、噛み傷をつけることで遮断してから葉を食べるためでトレンチングと呼ばれる独特の摂食法で
す。
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あさぎ1
▲アサギマダラ成虫(標本)
▲キジョランを摂食中のアサギマダラ幼虫(トレンチング)
あさぎ3
あさぎ4
▲アサギマダラ幼虫
▲キジョラン

カシ類ウドンコ病(№.314)

 アラカシは街路樹や株立ち又は1本立ちの庭園樹としてよく利用される樹木です。
 しかし、初夏から新葉表面が白く粉を吹いたような病気が出ることがあります。また葉の表面が黄化した病状を呈し、葉裏に暗褐色でビロード状の菌糸や胞子の集合したものが見られることもあります。これらはカビの1種である糸状菌による病害で、カシ類表うどんこ病とカシ類ムラサキカビ病でどちらもうどんこ病と呼ばれます。木が枯死するような重大な病害ではないこともあって、街路樹などでは問題にされることは少ないのですが、一般家庭の庭木の場合、美観を損なうため嫌がられる病気の一つです。アラカシは種子でも簡単に増えるため個体差が多く、病気に対する抵抗性にも差が見られるようです。写真には、隣接する2株が重症株と、軽症株の例を載せました。
 この病気を防ぐには、発病していない苗を選ぶだけではなく、木の手入れを良くし、通風、日照を図ると共に罹病葉を除去し殺菌剤を年に数回散布するなどの管理が必要で、発病すると完全になくすのは難しい病気です。これらの菌はアラカシ以外にシラカシ、アカガシ、ウラジロガシ、ウバメガシなどにも寄生し、その胞子は風で広がるためさらに根治を難しくしています。
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あらかし1
あらかし2
▲アラカシの並木道
▲葉表の白粉(表うどんこ病)
あらかし3
あらかし4
▲葉表の黄班(ムラサキカビ病)
▲葉裏の紫黒色のカビ(ムラサキカビ病)
あらかし5
あらかし6
▲重症株(手前)と軽症株(奥)
▲ウバメガシに出たウドンコ病

チャミノガ(№313)

 本シリーズ№16でオオミノガを紹介しましたが、オオミノガヤドリバエ(海外から侵入してきた天敵)の影響でオオミノガを見かけることは大変少なくなりました。しかし、チャミノガは時に大発生しています。
 チャミノガも蓑を作りますがオオミノガでは切り取った葉を巻いた紡錘形の蓑を作りますが、チャミノガは蓑の外側に細い枝をつけた、筒型の蓑を作るため蓑の形で2種を区別することができます。また、オオミノガは枝にぶら下がるように付きますが、チャミノガは枝に直角に近い角度で固くくっついていることが多く、この点でも区別は容易です。
 花壇に植え込んだハマヒサカキが丸坊主になり、多数のチャミノガの蓑が見つかりました。中には蓑から半分ぐらいせり出した蛹殻もみられました。これは雄の成虫(蛾)が羽化した後の蓑です。また、ちょうど孵化してくる幼虫もみられました。もちろんまだ蓑をかぶっていない裸ん坊です。すぐに植物片で蓑を作り、春を待って活動を開始し植物を加害するのでしょう。雌成虫と産卵状況を見たくなり蓑を縦に切り開きました。写真のように、蛹殻の上部2/3ぐらいに卵がつまりその下に産卵を終えて萎縮した雌成虫がみられました。雌は一生蓑の中で過ごし、蓑の中で蛹になり羽化、交尾をして産卵し、その一生を閉じます。蓑の下端には綿毛のような毛が詰められ、内部を保護しているようです。
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ちゃみのが1
ちゃみのが2
▲ハマヒサカキに発生したチャミノガ
▲チャミノガ雄の羽化殻
ちゃみのが3
ちゃみのが4
▲幼虫の孵化
▲孵化してすぐに蓑を作った幼虫
ちゃみのが5
▲雌成虫と卵(左は蓑から取り出したもの)

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