スズサイコ(№558)

 環境省が定めた準絶滅危惧種にキョウチクトウ科カモメヅル属のスズサイコがあります。聞きなれない名前ですが、かつては全国の草地にはどこにでもあった多年草の草です。現在でも、兵庫県の半自然草原(毎年一定の時期に草刈りなどの手入れがされる草地)ではよく見られます。地表から40~100cm程度の茎をまっすぐに伸ばし、長さ6~13cmの細長い葉を対生に付け、一見イネ科のような容姿をした草です。しかも、昼間の花は直径5mm程度の茶褐色の小さな鈴の形をして閉じており、他の草に埋もれたように全く目立ちません。
 開花は日没後で、直径1cm程度の星形の5枚の花弁を開き、その中に黄緑色の丸く膨らんだ副花冠5枚、中央に蕊柱(雄しべが柱状になり内部に雌しべがあります)の上に蓋のようにかぶさった柱冠1個が見えます。自家不和合成の花粉は塊となり副花冠と
副花冠の間の基部に蜜とともに収まっています。この花粉塊を他花の蕊柱にうまく押し込み雌しべに花粉が到達すれば受粉可能となるわけで、キョウチクトウ科の花によくみられる不思議な構造をしています。夜開く花は白色が多い中で、スズサイコの花は黄緑色と目立たず、小蛾やガガンボなど数種が訪花するようです。このように受粉がむつかしい条件のためか結実率は低く、秋になっても5~8cm程度で鞘状の果実がまばらに見られるだけです。キョウチクトウ科の植物で有毒ですが生薬にも使用されるようです。
 半自然草原が減少していくとともにスズサイコも減少していくことが予想され、遺伝子保存の手を差し伸べる必要のある植物の一つです。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲昼間のスズサイコ
▲日没後のスズサイコ
▲スズサイコの花

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