ハバヤマボクチ(№600)

 キク科ヤマボクチ属にハバヤマボクチという変わった名前の植物があります。ハバヤマはススキなどの草原で生育場所を指し、ホクチは火口で火打石の火花から火を取るために使った植物の毛玉のことです。日本固有種で、主としてススキ高原に生息する草丈2mにもなるキク科の植物で、その花や葉のクモ毛と呼ばれる細毛を集めてホクチにした植物です。
 福島県以南の本州、四国、九州の草原地帯で見られ、関西では兵庫、京都、大阪、和歌山などで見られますが、生息地が限られるためレッドデーターに記載されることの多い植物です。多年性草本にしては非常に大型で、草丈1~2m、花茎は黒紫色で、互生の葉をつけますが下部ほど大きく、長さ10~30cmで裏にはクモ毛が密生するため白く見えます。10月頃茎の先に直径4~5㎝の黒紫色の花を下向きに数個つけます。総苞片は先のとがった棘となり、クモ毛が多数絡まっています。蕾が伸びる時期と、ススキの穂が開く時期が同時であるため、蕾にススキが絡みついた状態を見ることがあります。花は筒状花のみで、他のキク科の花(ノアザミ参照)と同様に、雌しべの未塾柱頭と花柱が花粉を押し出しているのが見られます。
 背の高い草原に生えるため、花の時期にはススキなどに邪魔されよく見えませが、雪が降るころには枯れたススキ草原のあちこちにハバヤマボクチが目に付くようになります。
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▲ハバヤマボクチの蕾
▲開花
▲花拡大(雌しべに押し出された花粉とクモ毛)
▲ススキの穂と絡まる蕾
▲全体像(草丈約2m)
▲茎下部の葉
▲葉の裏面(細毛)
▲冬季、ススキが枯れハバヤマボクチが目立つ

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ヨツモンカメノコハムシ(№599)

 秋は芋堀の季節です。スーパーにもサツマイモが並び始めました。しかし、最近、静岡県以西のサツマイモの葉が穴だらけになる被害が多発しています。被害の多いサツマイモの葉の裏を見ると体長7.5~9mmで褐色の貝殻のようなものを見つけることができます。手を触れると、ポロっと落ち、行くへ不明になってしまいます。これは最近本州へ侵入してきた外来種でヨツモンカメノコハムシと呼ばれるハムシの仲間です。サツマイモの苗について生息範囲を広げていると考えられています。
 1996年に奄美大島で見つかり、2014年には高知で見つかった害虫で、インドや台湾ではサツマイモの大害虫として扱われているようです。このブログ内で以前に紹介したイチモンジカメノコハムシ(№425)と同様に扁平な体の縁が薄い板状になっているカメノコハムシの仲間です。本種成虫は前翅側縁に大きな黒い紋が4個見られるのが特徴です。また、幼虫は自分の糞や脱皮がらを背中に乗せてカモフラージュしています。関西では年間3世代を繰り返し、成虫で越冬するようです。
 ヒルガオ科の植物を食害し、サツマイモだけではなく朝顔、空心菜も食害し、ヒルガオ、マルバルコウソウなどの雑草も食害するため防除が厄介な害虫になります。
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▲食害痕で穴だらけのサツマイモ葉
▲葉に静止するヨツモンカメノコハムシ成虫
▲移動中のヨツモンカメノコハムシ成虫
▲被害を受けた空心菜(中央左下に成虫が見られる)

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アケボノシュスラン(№598)

 山々が秋の装いを始めるころ、林内の日陰にひっそりと咲くランがあります。草丈5~10cm、茎の先に長さ1cm程度の淡紅色の花を数個つけたアケボノシュスランです。
 日本全国の山野林内で稀に見られる常緑多年草で、茎は匍匐し、上部は斜上します。匍匐茎の各節から根を出して広がり、群落を作るようですが私はまだ群生しているのを見たことがありません。立ち上がった茎に長さ2~4cm、幅1~2cmの肉厚の葉を数枚互生します。葉の葉縁はやや波打ち、3本の葉脈が目立ち艶があります。花は9~10月、横向きにやや偏った方向に着けますが、筒状で、平開しないため、口の長いマルハナバチのような昆虫が受粉させるようです。
 淡い紅色の花と、繻子(シュス=サテン)織のような艶のある葉から、アケボノシュスランと呼ばれていますが比較的地味な花です。京都府では準絶滅危惧種、愛媛県では絶滅危惧2類に指定されています。生息に適した半日蔭の環境が減りつつあるのでしょうか。
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▲アケボノシュスラン
▲アケボノシュスラン

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