ヤマウツボ(№582)

 5~7月、関東以西の落葉樹林下でやや湿ったところに見られる寄生植物にヤマウツボがあります。カバノキ科、ヤナギ科、ブナ科などの落葉高木の根に寄生する多年草です。土中に根と地下茎があり地下茎にはうろこ状の葉の痕跡が残っています。寄生植物ですから葉緑素は持たず、自身は光合成もせず根を他の樹木の根に絡ませ、そこから養分を吸収しています。地上には、ほそいトウモロコシの芯のような10~30cmの花茎を伸ばし、やや赤紫色を帯びた1.5~1.7cmの筒状の多数の花を穂状に付けます。花には白毛を密生します。
 その不思議な生態や発生数が少ないことなどから植物愛好家の一部には大変貴重なものですが、カタクリやイチリンソウなどと比べ地味で興味を持つ人が少ない植物です。
 海岸草地にはハマウツボと呼ばれる青紫色の花をつける近縁種が見られることがあります。
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▲ヤマウツボ
▲ヤマウツボ
▲ヤマウツボ
▲ヤマウツボ

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スズメ(№581)

 軒下に巣を作り、人家の近くで生活する代表的な鳥はスズメでしょう。日本全国からユーラシア大陸を中心に生息する全長14~15cm、背面褐色、腹面白色でチュンチュンと鳴く小鳥です。頬(ほほ)に黒斑があるのが特徴です。遠距離移動をしない留鳥とされますが、中には100kmぐらいの移動をする集団もいるようです。
 雑食性で、春から夏には昆虫などを中心に食べ害虫駆除に役立つ益鳥とみられますが、秋になると植物の種子を食べるようになり、未熟な稲を食べる害鳥扱いされます。桜の季節には桜の蜜を舐めますが、蜜だけ舐めることができず花ごとちぎり蜜を舐めるため厄介者扱いされます。ところでこの桜の時期になると普段見かけない、頬に黒斑のないスズメを見ることがあります。これはニュウナイスズメと言い、普段森林を中心に生活しているスズメの仲間で、桜の時期には人里へ出てきて桜の花から吸蜜します。また、稲が熟す頃には集団で田んぼに現れ稲の穂を食害するることもあります。ニュウナイスズメは森林の害虫駆除には役に立つでしょうが、水田の害虫駆除にはほとんど
役に立っていないかもしれません
 スズメは砂地に穴を掘り砂浴びをするのが好きです(写真)。これは体に付いたダニなどの寄生虫を取るためと言われていますが、結構水浴びも好きなようです。
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▲砂浴び中のスズメ(ほほに黒斑あり)
▲砂浴び中のスズメ(ほほに黒斑あり)
▲ニュウナイスズメ(ほほに黒斑なし)
▲ニュウナイスズメ(ほほに黒斑なし)

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ムラサキケマン(№580)

 4~5月の人里近くのやや湿った山道でしばしば目にする紫色の花にムラサキケマンがあります。
 ケシ科キケマン属の越年草で、20~30cmの茎を直立させ先端に房状の花をつけますがキケマン属の花は変わった形をしています。花弁は4枚で、外側で上の1枚は袋状になり後方へ突き出ています。この中に蜜腺があり蜜を出します。内側の2枚は先端が合着しており、その内側に1本の雌しべと2本の雄しべが見られます。葉はセリのように細かく切れ込んだ葉を何枚も付けます。果実は長さ2㎝程度で下垂し、中に黒い種子が10個ほど並んで入っています。熟すと、果皮がはじけ中の種子を飛ばす自動散布をします。また、種子にはエライオソームがありアリによる動物散布もします。
 全草有毒(アルカロイドのプロトミン含有)で、この葉を食草としているウスバシロチョウも体内にこの毒を保有しています。
 ムラサキケマンの仲間には、地下に丸い塊茎を作るエンゴサク類(ジロボウエンゴサクなど)や塊茎を作らないキケマン類(ミヤマキケマンー写真など)があります。
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▲ムラサキケマンの群落
▲ムラサキケマンの花
▲ムラサキケマンの花
▲ムラサキケマンの果実
▲同属のミヤマキケマン

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