バイカオウレン(№576)

 2~3月、まだ厳冬期と言ってもおかしくない時期に可憐な花を咲かせる山野草があります。写真のように針葉樹林の下、腐植質の多い多湿地に群生するバイカオウレンです。福島県以南に見られる、日本固有種です。
 早春に咲くことでスプリングエフェメラルと思われることもありますが、キンポウゲ科オウレン属の常緑多年草です。地上10㎝程度の花茎に、直径1.5cm程度の梅の花に似た白い花を1個つけますが、花弁のように見えるのはガク片で、実際の花弁は雄しべに混ざり先端が黄色いスプーン状をしたものに代わっています。花弁状のがく片が5枚あることからゴカヨウオウレンとも呼ばれます。果実は水車状に広がった柄の先に袋果(乾燥した袋の中に種子をつける)をつけ、その先端の穴から種子がこぼれ出て広がります。匍匐枝でも広がるため群生することが多いです。
 この仲間にはオウレン、セリバオウレン、ミツバオウレンなどが知られており、オウレンは整腸、抗菌作用を利用した薬草として知られていますがバイカオウレンは根が小さく薬草としての価値は低いそうです。
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▲杉林の下に広がるバイカオウレン群落
▲バイカオウレン群落
▲切り株の上まで広がったバイカオウレン
▲バイカオウレンの花(白く大きいのはがく片、雄しべに混ざった黄色いスプーン状のが花弁)
▲雌しべのない花も見られました
▲混生していたセリバオウレン

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キタテハ(№575)

 地球温暖化の影響でしょうか暖かい日が続く3月、里山へ出てみると元気なチョウが飛び回っていました。止まったところでよく見るとキタテハでした。
 チョウ目タテハチョウ科で、名前の通り翅の表が黄色く褐色の縁取りと黒斑のあるタテハチョウです。前翅長(前の羽の付け根から先端までの長さ)は約2.5~3.0cmで中型、翅の裏は赤褐色で枯葉に似た保護色をしています。また後翅裏面に白い「く」の字の模様が目立ちます。タテハチョウに共通していますが前脚2本は通常畳み込んでいるため4本脚に見えます。成虫越冬ですので、冬期でも暖かい日には活動することがあります。
 日本全国に分布し、幼虫の食草は空き地や斜面地でよく見られるカナムグラなどです。幼虫は葉をつづった巣の中に潜み。体色は黒く、黄色やオレンジ色のとげを持ちますが刺すことはありません。
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▲キタテハ成虫
▲キタテハ成虫

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ウメ(№574)

 春を代表する花の一つに梅があります。昔から日本人に親しまれてきた花木ですが、原産地は中国です。バラ科サクラ属の落葉高木で、食用として果実を取る実ウメと花を観賞する花ウメとに大別されます。
 実ウメは果実を多数収穫できる品種が選抜され、花ウメに比べて品種数はそう多くはありません。花の色はほとんどが白で、花弁は一重が多いです。未熟の果実は青酸化合物を含むため有毒ですが熟すと無毒となります。梅の産地として栽培されているのは実ウメであり、昔から有名な梅林はほとんどが白い花で埋められています。しかし、中に異なる品種がぽつぽつと植えられていることがありますが、実ウメの大部分が自家不和合性(自己の花粉では受精出来ない)や雄性不稔性(花粉に受精能力がない)といった性質を持つため、他の品種の花粉を受粉に利用するため受粉樹として栽培しているからです。食用に利用する果実の果肉は花の子房壁が肥大したもので雌親と同じ性質ですが、中の種子は雑種で色々な性質のものが存在することになります。
 ところで「梅にウグイス」と言われることがありますが、ウグイスは梅にはほとんど来ることがありません。よく来るのはウグイス色をしたメジロです。メジロは梅の蜜を吸いに来ますが、観察していると白い花の実ウメに来ることが多く桃色や紅色の花ウメに来ることは比較的少ないことがわかります。これは花ウメには蜜が少ないことが多いためで、さらに花をよく観察すると花ウメにはめしべのない雄花が多いことにも気が付くでしょう。花ウメは大きな花弁を持ち、花弁数も多く、色鮮やかなものが選別されてきたため、雄しべの数や、蜜を減らしたり雌しべまで無くしたような花になってしまっていることもあります。
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▲白梅
▲白梅の雄花(雌しべが欠如)
▲紅梅
▲紅梅の雄花(雌しべが欠如)
▲吸蜜中のメジロ
▲吸蜜中のメジロ

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