ニガナ(№552)

 5~7月、路傍、田畑、山野など日本全国いたるところで見られる雑草の一つにニガナがあります。キク科ニガナ属の多年草ですが、その花は20~50㎝の茎の先端に、黄色い舌状花5個からなる、直径1.5cm程度の花序(花の集まり)で全く目立ちません。個々の花は1枚の大きな花弁、合着し筒状になった雄しべ、その中央に伸びる1本の雌しべからなります。
 1日花(朝開花しその日のうちに枯れる花)で、わずかな開花時間中に自家受粉を避けながらも
できる限り優良な子孫を残すための工夫が見られます。筒状に合着した雄しべの中央から雌しべが伸びてきますが、雌しべの花柱(雌しべの長い柱状の部分)に花粉をつけながら伸びてきます。この時には自家受粉を避けるため、柱頭は開いていません(雄性先熟)。やがて柱頭が2つに開き、花粉媒介昆虫による受粉が可能となります。やがて時間の経過とともに花はしぼんでしまいますが、この短時間にすべての柱頭が受粉できるとは限りません。そのため、確実に受粉をするため、雌しべの花柱は他の花柱に絡みつくようになり、この時は自家受粉となりますがそれでも種子を残すことを優先した動きを取ります。1日花の植物ではよく見られる動きです。
 ニガナの名前は、この植物の茎を折ると白汁が出ますが、これが苦いことから来ています。沖縄では野菜の仲間にニガナがありますが、これは全く別のものです。またいくつかの変種(タカネニガナ、シロバナニガナ、ハナニガナなど)が知られています。
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▲ニガナ
▲午前のニガナの花序(花柱はまっすぐ伸びている)
▲午後のニガナの花序(花柱が曲がり絡み合っている)

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オオサンショウウオ(№551)

 国の特別天然記念物(1952年指定)であるオオサンショウウオは、時々、大雨などの後で市街地の川で発見されたなどと新聞紙上を賑わすこともあります。日本固有種で、スイスの3千年前の地層から発見されたサンショウウオ類の化石とほとんど同じ形をしており、生きた化石と呼ばれる両棲類です。関西では兵庫県、大阪府、和歌山県、京都府などの河川の中、上流に生息し、両生類ではありますがほとんど陸に上がることはありません。和歌山県では国内外来種(人為的に移植した)とみられ、京都府ではチュウゴクオオサンショウウオとの交雑種とみられています。
 茶褐色の地色に黒色斑点をつけ、川底の石などにそっくりな体色をしています。肺呼吸と皮膚呼吸をしており、皮膚はぷにょぷにょで岩などに当たってもクッションの役目をしているようです。
全長150㎝程度、体重30kg程度まで成長し、寿命は10~70年と言われています。前足の指は4本、後ろ足の指は5本で、主に夜間に活動し川の中の小動物を餌としています。雄が岩の下などに奥行き数m、深さ1~2mの巣を作りその中に雌が産卵します。
 オオサンショウウオの名前はかつて食用にされていた際、さばくとサンショウの匂いがしたことからそう呼ばれるようです。また別名をハンザキと呼びますが、口が大きく、口を開けると体が上下に分かれるように見えるからとか、半分に割いても生きているからとか言われています。
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▲オオサンショウウオ
▲オオサンショウウオ

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ノアザミ(№550)

 アザミは秋の花ですが、ノアザミは5月ごろから咲き始め秋まで咲き続けることもあります。キク科アザミ属の多年草で、花は赤紫~淡紅色、稀に白花もあります。筒状花のみが集まり直径4~5cmの花序を上向きに咲かせ、総苞片はねばねばしています。草丈は60~100cmで、深く切れ込んだ葉先には鋭いとげが見られますが、これは草食獣から身を守るためと言われています。本州、四国、九州の山野、草原、河川敷、畦畔などの日当たりの良い場所に多く見られます。
 それぞれの筒状花は花序の外側から内側へ順に開花していきますが、この花はそれぞれが雄性先熟(まず花粉を出し、のちに雌しべが熟します)で、花粉は合着した雄しべ(集約雄蕊)の筒の中を雌しべが上に向かって伸びるときに、雌しべの未熟な柱頭と花柱にくっついて外へ出てきます。外側の筒状花が花粉を出してから中心部の筒状花が花粉を出すまで4~5日の時間差があります。この間のめしべの動きですが、中央の筒状花が花粉を出し終わるまで全てのめしべが、柱頭を閉じたまま待っていることがわかっています。最後の花が花粉を出し終えた翌日に全ての雌しべの柱頭が2つに割れて一斉に受粉可能な状態(雌性期)になります。このような仕組みで同花受粉を避けているのです。
 茎葉、根は食用や生薬に利用され、切り花用に改良されたドイツアザミなどの園芸種もあります。また、日本には100種近いアザミの種類が知られており、それぞれ交雑も容易であることから夏~秋に咲くアザミの分類はむつかしい植物の一つです。なお、ノアザミにも、雄性の退化した株(雌株)の存在が知られるようになりました。また、写真のような帯化株も稀に見られます。
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▲路傍のノアザミ
▲ノアザミの花(濃紫色に見えるのが葯、雄性期)
▲ノアザミの花(花粉を出し切った花序、雌性期)
▲受粉可能な柱頭(2つに割れている)
▲帯化したノアザミの花

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