オランダミミナグサ(№543)

 桜の花も散るころ、街の中、畑の畔、空き地など土のある所ならいたるところに白い小さな、5~7mmの花をつけた草が見られます。高さ10~30cm、北海道から本州四国の各地に生息し、3~5月に開花します。白い5枚の花弁の先は2裂し、花弁の長さはがく片より長いため花が閉じても白い花弁が見えることになります。また、花柄が短いため花がたくさん詰まって咲いているように見えます。この草は、帰化植物のオランダミミナグサです。
 オランダミミナグサは、在来種のミミナグサに
似ていてヨーロッパから入ってきた草の意味です。ミミナグサは在来種で、花弁の長さが、がく片と同じであるため花が閉じると白い花弁が見えなくなります。また、花柄が長いため、花(果実)が柄にぶら下がった状態に見えます。ミミナグサは少し山間部に入ると多く見られます。同じ場所に、花弁が10枚に見える草もあります。これは花弁が10枚なのではなく5枚ですが、切れ込みが深く10枚に見えるものでコハコベです。
 ここで、オランダミミナグサを、詳細に見ますと多数の毛が花、葉、茎にみられ中に腺毛(液滴を分泌する毛)が多く、粘液が
分泌されており、全体がネバネバしています。写真のように、茎にはいろいろなものが付着しており食虫植物のような様相を呈しています。
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▲オランダミミナグサの株
▲オランダミミナグサの花(花弁はガクより長く、花柄は短い)
▲オランダミミナグサの茎(腺毛多くネバネバ)
▲オランダミミナグサの果実
▲左:オランダミミナグサ、右:ミミナグサ
▲ミミナグサの花(花弁はガクと同長、花柄は長い)
▲コハコベの花(2深裂し10枚に見える花弁)

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ヒメウラナミジャノメ(№542)

 チョウの仲間にジャノメチョウと呼ばれる一群がいます。チョウ目タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科に分類され、翅の地色は地味な薄茶色で、丸く目立つ蛇の目模様を持っているのが特徴の仲間です。中でも最も人目に触れやすいのはヒメウラナミジャノメでしょう。
 ヒメウラナミジャノメは名前から想像できるように前翅長18~24mmで小型のジャノメチョウです。翅の裏には波型の模様が見られます。北海道、本州、四国、九州に分布し、都心部以外であればどこででもみられます。幼虫の食草はイネ科のチジミザサ、ススキ、スズメノカタビラやカヤツリグサ科の雑草です。草地に多いのですが草原性のチョウの一般的な特徴として、産卵は食草以外の枯葉などにも産むようです。幼虫は非常に不活発で、日中は食草近くの枯葉の下や株際に潜み、成虫がよく目につく割に幼虫が見つけられることは少ないです。
 ジャノメチョウの蛇の目はチョウ類の一番の天敵である鳥による食害から逃れるため、蛇の目に似せていると言われますが、ヒメウラナミジャノメの模様から蛇を想像するのはむつかしいと思いますし、現に翅を食いちぎられた成虫をよく見かけます。
 ヒメウラナミジャノメによく似たジャノメチョウにウラナミジャノメと呼ばれる仲間がいます。この2種は非常によく似ていますが後翅の裏の蛇の目模様がヒメウラナミジャノメでは5個(~以上)であるのに対しウラナミジャノメでは3個であることから区別できますし、ウラナミジャノメの発生場所は比較的限定されています。
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▲ヒメウラナミジャノメ(翅表)
▲ヒメウラナミジャノメ(翅表)
▲ヒメウラナミジャノメ(翅の裏に波模様)

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ハルリンドウ(№541)

 リンドウは秋の代表的な花ですが、春に咲くリンドウもあります。素直な名前で呼ばれるリンドウ科リンドウ属のハルリンドウです。早春3月から咲き始め、草丈10㎝程度、花冠直径2~3cmの小さなリンドウで、花筒は深く5列し各裂片の間に副片が付くため花弁が10枚のように見えます。地際には大きなロゼット葉が見られ、鮮やかな青紫色で非常に美しい花です。
 写真ではちょうど雄しべから花粉を出しており、めしべはまだ未熟な状態でした。この花は、おしべが花粉を出すときにはめしべは未熟で、おしべが花粉を出し終わってからめしべが熟すことで自家受粉を避けています(雄性先塾)。
 種子は雨によって流され散布されるため群落を作ることが多いようですがこの個体はただ1株しか見られませんでした。
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◀ハルリンドウ

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