キスジノミハムシ(№537)

 白菜や大根などのアブラナ科野菜を栽培すると、葉に直径1mm程度の小さな穴が無数に見られることがあります。体長3mm程度で黒い体に黄褐色の帯状斑紋を付けた小さな甲虫が見られればそれはキスジノミハムシというアブラナ科野菜の害虫です。
 この小さな甲虫は、あぶらな科野菜の葉っぱをかじり、
小さな穴を開けます。白菜では外葉をかじられますし、大根の葉は穴だらけにされますが葉での被害はそれほど大きくないようにも見えます。しかし幼苗が被害を受けると生育に大きな影響を及ぼし、コマツナやチンゲンサイなどの葉物野菜では商品価値がなくなります。成虫は1年中見られ、後脚が発達し跳ねて逃げます。雑草のイヌガラシやスカシタゴボウなどを食べながら成虫で冬を越します。卵は土中に産まれ、ウジ状の幼虫がアブラナ科植物の根を食べながら成長し6~8mmになります。この幼虫は根をかじりますので大根やカブではサメ肌、ナメリ状、穴状などの被害を受け、見るも無残な状態になります。さらには食害痕から病菌が侵入することもあり被害はますます大きくなります。
 年に3~5回発生するアブラナ科野菜の大害虫ですが、アブラナ科以外の作物との輪作や緑肥に燕麦を植えることで被害の減少が期待されます。


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▲キスジノミハムシ成虫による白菜の被害
▲キスジノミハムシ成虫
▲キスジノミハムシ成虫

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マユミ(№536)

 初冬の山道で谷を隔てた対岸に赤い実をつけた中木を見付けました。たくさんの果実は4分裂し、種子が覗いています。
 これはマユミの果実です。マユミはニシキギ科ニシキギ属の中木で、北海道から九州の半日蔭でやや湿った土地に自生し、樹高5~6mになります。5~6月頃、黄緑色の4花弁を持った直径4~8mmの小さな花を多数咲かせます。9~11月には直径1cm程度で橙赤色の仮種皮を持った果実を付けます。この果実はやがて4分裂し4個の種子を出します。葉は長さ6~15cm、幅2~8㎝で、葉柄は0.5~2cmです。若い枝は緑色で稜(角ばっている)があります。
 ニシキギ属にはニシキギ(コマユミ)(マユミに比べ全体が小振りで、果実は2分裂する、翼があるのがニシキギ)、ツリバナ(果実は5分裂する)などがありますが、晩秋の紅葉や赤い実を鑑賞するため庭木としてニシキギ(コマユミ)が使われることが多いのですが、発芽力がやや弱いため強剪定は避けたい庭木です。。
 種子に含まれる脂肪油には有毒成分が含まれ、食べると下痢や腹痛を引き起こすようですが小鳥たちは喜んでこれをついばみます。煎汁で頭を洗いシラミ駆除にも使ったためシラミコロシと呼ばれたそうです。一方、新芽はてんぷらなどにして食べられるそうです。
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▲マユミ
▲マユミの果実

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ナシケンモン(№535)

 12月の家庭菜園を歩くと、時々野菜の害虫とは思えないケムシに出会うことがあります。今回紹介するのは、通常果樹の害虫として知られるナシケンモンです。
 ナシケンモンの成虫はヤガ科の蛾で、幼虫が植物を食害します。北海道から九州まで広く分布し、成虫は前翅長22~24mm、開長32~43mmの中型の蛾です。前翅は暗褐色で黒色の細かい模様が入っており後翅は淡褐色をしています。年間2~4回発生しますが野菜栽培の場面では通常の殺虫剤散布で防除されており、目にすることはまずありません。しかし、家庭菜園では時々目にすることがあります。名前からわかるように、幼虫は果樹の害虫として知られていますが、その食性は非常に広くバラ科(梨、スモモ、桜など)、ヤナギ科の樹木をはじめアブラナ科、マメ科、キク科、シソ科、ハス科等の野菜類、タデ科、アオイ科、アヤメ科、イネ科等の花や雑草までも食害します。このように広い範囲の植物を食べるものを広食性と呼びますがその代表的な害虫の一つです。
 幼虫は黒色タイプと褐色タイプがあり色彩変異の多い種類です。体節には毛束が目立ち、如何にも刺しそうなケムシですが刺毛はありません。

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◀ナシケンモン幼虫

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