ヨモギエダシャク(№531)

 11月の下旬、季節的には既に冬ですが、キャベツの古葉上でシャクトリムシが葉をかじっていました。これは茶の害虫として問題になることが多いヨモギエダシャク(蛾)の幼虫です。
 ヨモギエダシャクはチョウ目シャクガ科のガで、成虫は開長45~50mmです。翅は淡褐色ですが個体変異が多く同定に戸惑うことがあります。通常5月中下旬、7月上中旬、8月下~9月上旬の年3回発生します。
 幼虫はシャクトリムシで腹脚は第6腹節に1対あるのみです。また、第2腹節背面には1対の瘤があります。体色は緑色、淡褐色、暗褐色と変化が多いことが知られています。卵は樹皮の隙間や割れ目に100粒程度まとめて生まれますが、孵化した幼虫は糸を吐き風に乗って分散してしまいます。幼虫の食草は非常に多く広食性でクワ科、バラ科、ミカン科、ツバキ科等の樹木をはじめセリ科、キク科、イネ科、マメ科、ナス科などの草本類も食害します。写真ではキャベツを食べていました。冬は土中で蛹越冬のようですので、間もなく越冬に入るのでしょうか。

 

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◀キャベツの葉を食べているヨモギエダシャク

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アサザ(№530)

 晩夏のある日、波の立たない小さな池の水面一面に直径3~4㎝の小さな黄色い花をつけた水草を見付けました。ミツガシワ科アサザ属のアサザです。
 花弁は5枚に見えますが基部で合体した合弁花です。花弁の周縁はフリル状になっています。午前中に開花し、午後には枯れる1日花で、花柱の長さが異なる異形花柱性で、異なる花形同士の受粉で結実するようですが、一つの群落の花はみな同じ花柱性を持っていることがほとんどです。アサザは地下茎から水中へ伸びた走出枝で繁殖するため一つの群落の個体はすべて同一遺伝子を持ったクローンであることが殆どだそうです。日本生態学会では日本には遺伝子的には61個体しか存在しないとの報告もあるようです。ユーラシア大陸の温帯地域に自生していますが、関西では兵庫県の溜池の一部で見られます。千葉県の霞ケ浦では過去に大繁殖していたようですが、現在は絶滅したようです。環境省では準絶滅危惧種に指定しています。
 根は水底の土中にありますが、
葉は直径5~10㎝のハート形で水面に浮いています。また、若葉はジュンサイに似ており食べられるため別名ハナジュンサイまたはイヌジュンサイとも呼ばれます。
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▲アサザの群落
▲アサザの花(長花柱花)

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タマナギンウワバ(№529)

 ブロッコリーの葉が穴だらけになっています。葉の表皮が残っている穴も見られます。これはタマナギンウワバの幼虫による被害です。
 チョウ目ヤガ科に分類される蛾の仲間で幼虫は野菜、特にアブラナ科野菜(ハクサイ、キャベツ、コマツナ、ブロッコリー等)の大害虫として知られています。またアブラナ科以外の野菜(キク科、マメ科、セリ科、ヒルガオ科等)も加害します。被害は、外葉中心で、結球部に潜り込むことはありません。
 成虫は前翅長16~18mmの中型褐色の蛾で翅の中央に銀色の小斑があります。卵は葉の裏に1個ずつ産まれ、ヨトウムシのように集団で食害することはありません。若齢の幼虫は表皮を残して食害するため食害痕は白い斑紋として残りますが令期が進むと表皮ごと穴をあけて食害するようになります。幼虫は前方(頭部)が細くスマートで腹脚(体の一番後ろにあるのは1対の尾脚、その前に通常4対あるのが腹脚)は2対しかなくそのためシャクトリムシに似た歩き方をします。葉の裏に白色の薄い繭を作り、その中で蛹になります。
 日本全国に分布し、年に4,5回発生するようです。休眠はしないようで、各態で越冬しています。タマナキンウワバと呼ばれることもあります。
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▲タマナギンウワバによるブロッコリーの被害
▲タマナギンウワバ幼虫ー頭部(下向き)が細い
▲タマナギンウワバ幼虫(腹脚は2対)

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