ネジバナ(№480)

 梅雨の頃、短く草刈りされた草地に15~25㎝の花茎を伸ばし、5mm程度のピンクの花を、花茎の周りにらせん状につけるのはネジバナです。別名モジズリともいわれ、ラン科ネジバナ属で学名Spiranthes はねじれた花の意味です。花を拡大してみると立派なランの花です。唇弁は白く、他の花弁は桃色ですが稀にすべて白色のものも見られます。
 ラン科植物であり土中の菌と共生し菌根を作っています。しかしネジバナは特に菌とのバランスが微妙なようで、長年にわたる鉢での栽培が非常に困難な種類の一つでいつの間にか消えてしまうことが多いようです。昭和後期には斑入り葉などの園芸種が人気だったそうですが、栽培が困難なため、ほとんど残っていないようです。株分けもできず、ランナーでの無性繁殖もしないため自然状態では種子繁殖をしていますが、細い茎に花をらせん状につけることで、花粉媒介昆虫にアッピールしやすくしているのでしょうか。
 花のねじれ方は右巻きもあれば、左巻きもあります。全くねじれないものや中途半端なものまで見られ、実に気ままな植物です。ところでつる植物の右巻き左巻きの定義はあいまいで、一般的には
時計方向が右、その逆が左とされることが多いですが、これも上から見るのと、下から見るのでは逆になってしまいます。左下の写真では左を右巻き、右を左巻きとしていますが混乱しますので左をS巻、右をZ巻と呼ぶこともあります。
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▲低い草地に咲くネジバナ
▲ネジバナの花
▲左:右巻(S巻)の花 右:左巻(Z巻)の花
▲基部は真っすぐ、先だけねじれた花

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オオミズアオ(№479)

 チョウ目ヤママユガ科のガには大型で美しい仲間が多く含まれています。中でも日本のオオミズアオは成虫の開長80~120mmと大型で、前後翅ともに薄い水色で、4翅とも中央に円紋を持ち、後翅には尾状突起を持ちます。前翅前縁には褐色の直線模様が目立ち、触角は両歯の櫛状で世界的にも美しい蛾の一つとして知られています。
 ポケットモンスターに出てくるキャラクターの「モスノウ」はこのオオミズアオをモチーフに考えられたそうです。
 日本では北海道から九州まで全国の平地から高地に分布し、幼虫の食草はカエデ科(カエデ)、バラ科(アンズ、ウメ、サクラ、ナシ、リンゴ)、ブナ科、カバノキ科、ミズキ科など広範囲の植物を食害します。また、幼虫は体に粗い毛を持ちますが刺すことはありません。食草の関係で都心部で発生することもありますが、発生数が少ないことから害虫視されることはほとんどありません。蛹で越冬し、成虫は春と夏の2回発生を繰り返します。ヤママユガ科の成虫に共通していることとして、口器が退化し一切餌を取りません。成虫の寿命も短く1週間から2週間程度でこの間に交尾、産卵して死にます。
 類似種にオナガミズアオがいますが、前翅前縁の色や、尾状突起の付き方、後翅円紋の形などから区別されます。
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▲オオミズアオ腹側
▲オオミズアオ(逆光のため前後翅の重なり部が濃く見えます)

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シイノトモシビタケ(№478)

 シイノトモシビタケ、何ともロマンティックな名前ですね。シイの木などに発生する、光るキノコです。
 昼光下で見ると何の変哲もない、茶色いキノコです。ラッシタケ科クヌギタケ属のキノコで、傘径1~2cm、柄長1~5cm淡褐色の可愛いキノコです。1951年八丈島で発見され、その後東京(伊豆諸島)、三重(熊野市)、和歌山(周参見)や高知、大分、宮崎、鹿児島、沖縄、(兵庫)などでわずかにみられています。主にシイ(スダジイ)の腐朽部に発生しますが、ホルトノキ、ヤマザクラなどにもみられるそうです。7月~10月にみられますが梅雨期が最も多くなるようです。
 下の写真は兵庫県で撮影しましたが、鹿児島県から移植された古木についてきたもので、毎年発生していますが周囲に広がる気配はありません。発光の原理はホタルと同じく発光物質のルシフェリンが酵素ルシフェラーゼの働きで酸化されることで発光するようですがその目的は全く謎です。
 キノコですから、花粉媒介のために昆虫を呼ぶ必要はありません。光でムシを集めそれを食べるようなこともないようですし、ホタルのように雌雄間の交信の手段も考えられません。発生地ではこのキノコを食べるムシがいてその撃退手段にでも役に立っているのでしょうか。
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▲昼間のシイノトモシビタケ
▲夜間のシイノトモシビタケ

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