トキワツユクサ(№453)

 薄暗く湿っぽい林縁部に白い花のツユクサに似た植物を見ることがあります。花の時期は初夏ですが、葉は年中青々としています。花の造りもツユクサとはちょっと違います。
 ツユクサの仲間でツユクサ科ムラサキツユクサ属のトキワツユクサと呼ばれる多年草です。昭和の初期に観賞用として南米から導入されたものが野生化し、今では旺盛な繁殖力から大群落を作り要注意外来生物として注視されています。草丈50㎝程度で茎の節から根を出して増殖します。3枚の三角形をした白い花弁を開き6本の白い雄しべ(葯は黄色)と1本の雌しべを持っています。葉は長楕円形で互生、冬には枯れるツユクサとは異なり常緑です。5~8月、薄暗い林縁に白い花を一杯付けるためよく目立ちます。
 導入された当時は葉に斑が入る品種だったそうですが今では大型で緑1色のものや、小型で茎が赤紫色を帯びるものなどもありどのように変化してきたのか興味が持たれます。別名をノハカタカラクサ(野博多唐草)と呼ばれ、さらに細かく分類されることもあります。
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▲トキワツユクサ(開花期の様子)
▲トキワツユクサの花

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シロカネイソウロウグモ(№452)

 秋の野山を歩くとクモの巣に引っかかることがよくあります。大きなクモの巣はジョロウグモが多く、秋に産卵するため摂食活動が盛んになり、よく目立つようになります。
 ところで、このジョロウグモのクモの巣に銀色に光る仁丹のような粒がくっついていることがあります。時々移動したり、糸を出してぶら下がることもあります。 これもクモで、体長僅か1~2mm、ヒメグモ科イソウロウグモ属のシロカネイソウロウグモと言います。ジョロウグモの赤ちゃんではありません。このクモは自分で網を張ることはしません。他の大型のクモであるジョロウグモ、コガネグモやオニグモなどの網の上に陣取り、家主が見向きもしないような小型の昆虫(アブラムシなど)を食べたり、家主が食べているエサの裏側からこっそりつまみ食いしたりして生活しています。全くのイソウロウです。ジョロウグモなどと比べるとあまりにも小さく、家主からは全く相手にされませんが家賃を払うこともなく家主に迷惑をかけることもないため労働寄生と言われることもあります。 腹部の背面が銀色をしており日が当たるとキラリと光り仁丹のように見えます。一つの巣に2,30頭も寄生していることもあるようです。
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▲ジョロウグモの巣に居座っているシロカネイソウロウグモ
▲シロカネイソウロウグモ(腹部を裏から見たもの)
▲シロカネイソウロウグモ(腹部背面が銀色)
▲シロカネイソウロウグモ(腹部背面が銀色)
▲シロカネイソウロウグモ(腹部背面が銀色)

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ミカエリソウ(№451)

 秋口になると、山道脇に葉脈だけを残したレース状の葉をつけた草が見られることがあります。紅紫色の穂状の花をつけておればミカエリソウです。
 ミカエリソウは別名イトカケソウとも呼ばれるシソ科テンニンソウ属の低木です。ソウ(草)と呼ばれますが、シソ科の中で唯一冬季でも地上部(茎)が生存し、木質化する低木です。名前のいわれは、一旦通り過ぎても花の美しさに思わず見返るところから付けられたそうですが、人によって見方は色々ですね。開花は9~10月で、穂状に集まった花が下から上へ咲きあがります。筒状の花弁の先端と外へ飛び出した4本の花糸(雄しべ)、1本の花柱(雌しべ)が紅紫色でじっくり見ると美しい花です。
 葉は楕円形、長楕円形で長さ10~20㎝ですが、時々葉脈だけが残っているのが見られます。これはスギタニアオケンモンと呼ばれるヤガ(蛾)の幼虫が食害したものです。中には葉脈標本のようなものも見られます。ミカエリソウノメイガも寄生しますが、葉を巻いて食害することが多いです。
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▲ミカエリソウ(着蕾)
▲ミカエリソウ(穂状になった花が下から上へ咲きます)
▲ミカエリソウの花
▲スギタニアオケンモンの食害で葉脈だけになったミカエリソウ

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