ツマアカクモバチ(№444)

 梅雨の合間の薄曇り、京都御苑の中にある宗像神社で狩人バチを見つけました。かつてはツマアカベッコウバチと呼ばれた仲間ですが現在ではツマアカクモバチと呼ばれる狩人バチの仲間です。体長25mmで比較的大型のクモバチです。クモバチはクモを狩り、そのクモの体に卵を産み幼虫のエサにする仲間です。
 ツマアカクモバチは大型で全体黒色、腹部末端だけが朱色という目立ついでたちをしています。成虫は花蜜をエサとしていますが、メス成虫は幼虫のエサとしてアシダカグモの仲間を襲いクモを麻酔させて巣の予定場所に運びます。クモを運んでいる様子を見ると、自身より重い獲物を口でくわえ垂直の石壁を楽々と運んでいます。他の狩りバチのように巣穴を準備してから狩りに出るのではなく狩りをし獲物を運びながら巣に適した場所を捜すようです。また、巣も地下に穴を掘るのではなく、すり鉢状のくぼみを作り、獲物を置き1卵を産卵後、土をかけて盛り上げるそうです。
 ところでアシダカグモはゴキブリをエサとしており益虫と考えられていますが、その益虫の天敵であるツマアカクモバチは害虫になるのでしょう。
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▲自身より大きいアシダカグモを引きずるツマアカクモバチ
▲垂直の石壁を引っ張り上げるツマアカクモバチ

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フタリシズカ(№443)

 入梅のころ、里山の渓流沿いで、草丈30~50cm、茎の先端に長さ5~10㎝程度の花穂を1~5本(大部分は2本)直立させた植物の群落を見つけました。花は直径3mm程度の白い小花で花穂に並んでついています。葉は比較的大きく、長さ7~15㎝で互生についています。
 これはフタリシズカと呼ばれる山野草で、花穂が2本のものが多いため、能の「二人静」(静御前とその亡霊の舞)になぞらえて付けられたそうです。この花には花弁がなく、白く見えるのは3本の花糸(雄しべ)が肥大し内側へ巻き込んだものです。巻き込んだ内側を見ると、両側の雄しべに葯(花粉袋)が1個ずつ、中央の雄しべに2個、合わせて4個の葯が見られ、雌しべを抱き込んでいます。このような構造の花はアリやスリップスのような小さな昆虫が花粉を媒介しているのでしょうが、果実の付き具合からすると、花数の割に果実が少なく受粉効率は良くないように見えます。しかしこの植物は果実ができるころには、茎の中ほどに閉鎖花を作り自家受粉で果実を作りますし、地下茎でも増え群落を作ります。種子はエライオゾームを持っており、アリが種子散布をするようです。
 同じセンリョウ科にヒトリシズカと呼ばれる山野草がありますが、こちらは葉が出る前に開花し、開花時期も1か月以上早く、花も雄しべが管状になるなどかなり様子が異なります。
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▲開花中のフタリシズカ群落
▲フタリシズカの花(内側に葯が見える)
▲フタリシズカの花(4個の葯と柱頭が見える)
▲果実が熟すと下に垂れる
▲下部の節から出た閉鎖花

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イシガケチョウ(№442)

 チョウ目タテハチョウ科の仲間は日本に88種知られています。その中でも、最近生息地を北上させている蝶の一つにイシガケチョウがあります。イシガキチョウとも呼ばれますが、翅の地色が白から淡黄色で石垣のような褐色の筋が入っているところからつけられた名前です。英語ではmap-wing butterflyとも呼ばれ、石垣のような筋を経度、緯度と見て付けられたようです。またタテハチョウ科の仲間は、前脚が退化し、脚としての役には立たないような形をしており、4本足のようにも見えるのも特徴の一つです。
 前翅長は26~36mm、開長は55mm程度で、翅の大きさの割に開長が小さいのは翅が縦長の形をしているためです。元々南方系の蝶ですが、最近では近畿、東海地方以南で見られるようになりました。止まる時は羽を水平に広げその石垣模様がよく見えるような止まり方をします。林縁部に多く、花から吸蜜したり、路上で吸水している個体も見られます。幼虫の食草はイヌビワ、イチジク、オオイタビ、ガジュマル、アコウ、ゴムの木などクワ科の植物が多いようです。幼虫は頭部に2本と、腹部に2本の突起を持った特異な形をしています。年3~4回発生を繰り返すようです。
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▲地上で吸水中のイシガケチョウ
▲地上で吸水中のイシガケチョウ

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