ピラカンサ(№417)

 果実が色付く秋、直径5mm程度の赤い実を鈴なりに付ける低木があります。木にはトゲがあり侵入防止の生垣などによく使われましたが剪定の際、トゲが邪魔になるので植木屋にとっては嫌われ者です。
 ピラカンサと呼ばれる仲間です。ピラカンサはバラ科トキワサンザシ属の総称で、日本ではトキワサンザシ、タチバナモドキ、ヒマラヤトキワサンザシ(別名カザンデマリまたはインドトキワマンサク)の3種がよ
く見られます。果実が紅色(たまに橙色があるそうです)で、葉の裏に毛が無くつるっとしているのがトキワサンザシです。トキワサンザシとそっくりですが果実が鈴なりにつくのがヒマラヤトキワサンザシだそうですが殆ど区別が出来ません。黄橙色の果実で、葉の裏に短毛が密生し白っぽく見えるのがタチバナモドキです。
 更に交雑種や、園芸品種も作られており同定はますます困難な状況にあります。トゲが嫌われる一方、丈夫で、
強い剪定にも耐えるため最近は、生垣ではなく盆栽等によく利用されます。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲ピラカンサ(トキワサンザシ)
▲ピラカンサ(タチバナモドキ)
▲ピラカンサの葉裏(左:トキワサンザシ、右:タチバナモドキ短毛が密生し白く見える)

homeへ

カマドウマ(№416)

 山城跡を訪ねた際、古井戸の覆いを開けてみると、井戸の内壁に大型のコオロギのような虫が多数くっついているのが見られました。
 これはバッタ目カマドウマ科の昆虫でカマドウマの仲間です。翅は無く、後脚が特別に発達しています。体は背中がアーチ型に盛り上がり、体長の3倍程度もある長い触角を持っています。狭く暗い場所を好むためその長い触角を使って、自分の体の周囲全体を探るのでしょう。通常、屋外で枯木の洞や岩の隙間などで生活していますが、家の中へ入ることもあり、かつてはカマドに潜むことが多かったようです。その体型と並外れた跳躍力、カマドに潜むことが多かったことからカマド馬(カマドウマ)と呼ばれたようです。
 夜行性で、夜には森の中を歩き回り植物質や動物質の餌をとります。幼虫も成虫と同じ体型、色彩で同じところに生息しています。別名「便所コオロギ」、「御釜コオロギ」とも呼ばれます。
 日本では、カマドウマ科に数十種類が知られていますが、よく見られるのはマダラカマドウマ、カマドウマ、クラズミウマなどですが、翅がないため広範囲に移動することは少なく、各地域ごとに多くの亜種が存在し、同定も専門家でないと難しいようです。
 秋になると川に飛び込むカマドウマが多く見られ、これらはマスなどの川魚の格好の餌になるようです。カマドウマが川に飛び込むのは、寄生しているハリガネムシがカマドウマの行動を左右し、カマドウマを入水させ、水中でハリガネムシがカマドウマの体内から脱出するためです。ハリガネムシに寄生されたカマドウマはハリガネムシにその心まで左右されてしまうわけです。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲カマドウマの仲間
▲カマドウマの仲間

homeへ

ミズヒキ(№415)

 初秋の頃、林縁部(森林と平地との境界付近)に30~60cm程度の花穂に赤い小花を点々とつけた花が見られるようになります。花は小さく、あまり目立ちません。葉は互生で、葉身に濃褐色の「ハ」の字模様が見られることがあり、茎の節が膨らんでいる特徴があります。これはタデ科タデ属のミズヒキです。
 水引というのは祝い事に使われる紅白の紐を指しますが、この植物の花穂を上から見ると赤、下から見ると白く見え、花穂全体は細く紐のように見えるところからミズヒキと名付けられたものです。この花をよく見ると花びらのように見えるのはガク片で4枚あり、上の1枚は赤、左右に広がった2枚の上半分は赤、下半分は白そして一番下の1枚は白となっており、赤白2色の水引のように見えます。
 果実には先の曲がった花柱が2つ外へ飛び出して残っており、これによって種子は動物散布されるようです。
 たまにガク片全てが白いものがあり、これはギンミズヒキと呼ばれます。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲ミズヒキ
▲ミズヒキの花
▲花1個の拡大(上半分は赤、下半分は白)
▲左:下から撮った写真、右:上から撮った写真)
▲ミズヒキの種子(柱頭が2本のカギになっている)

homeへ


ページトップへ