クビアカツヤカミキリ(№408)

 最近、南大阪地域で桜の古木の株際にうどん様の木屑(フラス)が見られることがあります。これは、殆どの場合、本年(2018年)1月に特定外来生物に指定されたクビアカツヤカミキリ幼虫の食害によるものです。
 クビアカツヤカミキリは2012年愛知県で発見されて以来、その生息地域を拡大してきましたが2015年以降南河内を中心とした南部大阪でも被害が拡大しています。成虫は2.5~4cmの中型のカミキリムシで、全体は艶のある黒色、胸部のみ赤という目立った色をしています。主としてバラ科(サクラ、モモ、プラム、ウメ)の大木、古木に寄生し樹皮の隙間に生まれた卵から孵化した幼虫は、孵化後樹内を食害しフラスと呼ばれるうどん状の木屑と糞を樹外に排出し、1~3年で成虫になるようです。
 被害は大きく、樹木の衰弱、枯死を招くことが予想され、サクラの名所が危機にさらされる可能性があり、
特定外来生物に指定(2018年1月)されました。そのため飼育や運搬が禁止されています。化学農薬や生物農薬が登録されていますが幼虫は樹幹内に生息するため、針金による刺殺やネットなどを使った物理的防除なども併用し、サクラの消滅を避けたいものです。
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▲サクラの地際に見られるフラス
▲クビアカツヤカミキリ雄成虫(これは標本の写真です)

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ツタウルシ(№407)

 初夏の山を歩く際には危険な植物のことを頭に入れておく必要があります。その中でも最も注意を要するのはウルシの仲間でしょう。特にツタウルシはウルシの中でもカブレ毒が最強で、しかもよく似た無毒のツタと同居することが多く、特に注意が必要です。
 ツタウルシとツタの若葉はいずれも3出複葉(葉が3枚の小葉に分かれている)で、生息場所も大木の地際などから大木に絡みつくように成長します。ツタはかぶれるようなことはありませんが、ツタウルシはウルシの仲間で最もかぶれの強い植物です。ウルシの仲間はウルシオールと呼ぶ成分がかぶれの原因になりますが、ツタウルシはこの毒性を強めるラッコールを併せ持っている為といわれます。
 2つを区別する方法は、ツタはツルを伝っていくと2葉や1葉が見られる点、ツタは枝が他の木などにへばりつき中空に突出しないこと、ツタの葉は鋸歯の先端が尖ること等で区別できます。
 ところで、この危険なツタウルシの葉を食べる蛾の幼虫がいます。ウスイロカギバというガの1種で、幼虫は鳥の糞に擬態していますが、蛹はツタウルシの葉に大きな黒い×印を作り、その中央に糸でお尻をしっかり固定して陣取るという変わった習性を持っています。非常に目立つマークであり、この意味はいまだにわかっていません。
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▲ツタウルシ(若葉は葉縁に鋸歯あり)
▲ツタウルシ(成葉は葉縁が円く全縁)
▲ツタ(若葉)
▲ツタの葉(鋸歯の先に棘)
▲ツタウルシの葉に作られたウスイロカギバの蛹

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セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ(№406)

 あちらこちらの空き地にセイダカアワダチソウが目立ち始めました。もちろん、花はまだまだ先ですが、まっすぐに伸びた茎が1m程に達し、よく目に付くようになり始めました。
 この茎をよく見ると鮮紅色のアブラムシがびっしりついていることがあります。このアブラムシがセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシという長ったらしい名前を持ったアブラムシです。セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシはセイタカアワダチソウ以外の植物につくことはありません。また、セイタカアワダチソウに寄生するアブラムシはこのアブラムシだけです。
 セイタカアワダチソウは明治時代に鑑賞目的で北米から導入されたそうですが、今ではあちらこちらの空き地にはびこって雑草になっています。1991年、後を追いかけるようにセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシが日本に定着しました。全身真っ赤ですが、脚、触角、角状管が黒く尾片は黄~赤で体長4mm程度になるアブラムシです。夏季には卵胎生でメスだけで単為生殖し、秋になるとオスとメスが出て有精卵を生み卵で越冬するようです。また、生息密度が高くなると、有翅型の固体が現れ、生息範囲を広げるようです。
 セイタカアワダチソウだけに寄生しますが、セイタカアワダチソウを枯らすこともなく異国の地で共存共栄の生活を送っているようです。
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▲セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ
群生しているセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ
セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ有翅型

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