ウスタビガ(№399)

 冬の林道を歩くと、葉を落とした枝先に薄緑色で長さ4cm程度の繭がぶら下がっているのを見つけることがあります。これはチョウ目ヤママユガ科のウスタビガと呼ばれる蛾のマユです。
 ウスタビガはヤママユの仲間としてはやや小さめ(開長90~110mm)の蛾で、成虫は黄色~黄褐色の翅に一つの丸い紋を持っています。成虫は10~11月に現れますが口器は退化し餌を摂ることもなく、雌のマユの上で交尾しマユの上にも数個を産卵し冬までに死亡します。冬は卵で越します。春、孵化した幼虫はサクラ、カエデ、クリ、カシワ、ケヤキ、エノキ、クヌギ、コナラ等の葉を食べますが発生数が少なく問題になることは殆どありません。幼虫は強く触れると「キュー」と鳴くことでも知られています。6月中旬に薄緑色のマユの中で蛹になりますが、マユは葉の付け根にぶら下がるため葉の色に同化し見事な保護色となっています。しかし冬になり葉が茶色く変わるとマユが目立つようになります。
 マユは葉柄にぶら下がるためか、葉が落ちてもマユは落ちないように、マユから枝まで糸を吐いて強く太い柄をつくり固着させます。またマユの上部は成虫が這い出せるように隙間があり、下部には排水口があり雨の水が抜けるようになっています。別名の「ヤマカマス」はマユがカマス(二つ折りのむしろ)に似ていることから、また「ウスタビガ」はマユが足袋の形に似ていることから呼ばれるそうです。
 なおこのマユからはカイコのように糸を取ることは出来ないそうです。
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▲マユの下部に開いた穴
▲葉柄に固着したマユ(長い糸の柄が見える)

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スギナ(№398)

 スギナはシダ植物の仲間でトクサ科に分類されます。北海道から沖縄まで分布し、酸性土を好む厄介な雑草として扱われます。地下茎を伸ばして増殖し、短く切れた地下茎からもどんどん芽を出して増える厄介者です。スギナの名前の由来は杉の木のように細い葉、先ほど細くなる姿から付けられたようです。
 スギナは地下茎で増殖するほかにシダの仲間ですので胞子でも増えます。この胞子をつけるのがツクシと呼ばれるスギナの胞子茎です。つまりスギナとツクシは同じ植物で光合成をするのがスギナ(栄養茎)で胞子を作るのがツクシ(胞子茎)です。胞子は発芽し、前葉体を作りその上に卵子と精子が出来、受精して増殖します。
 スギナに付くので「ツクシ」と呼ばれるとも言われています。また根が深いため「地獄草」とも呼ばれます。ツクシはハカマ(葉)をとって春の山菜として利用され、スギナは乾燥させてスギナ茶として利用されるようですが体によくないチアミナーゼという物質を含むため大量に摂らない方がいいようです。
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◀スギナ(中央の直立しているのはツクシ)

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ケリ(№397)

 田植えシーズンが近づくと、水田地帯で「ケリッ、ケリッ」「キリッ、キリッ」あるいは「ケケッ」などとけたたましく鳴く鳥を見ることがあります。これは、チドリ目チドリ科タゲリ属のケリです。
 全長34cm程度、くちばしは黄色で先端が黒、長く黄色い脚の鳥です。頭から胸は灰青色、体の上面は灰褐色下面は白、翼の先端は黒く基部は白と灰褐色と複雑な色をしています。この鳥は気性が荒く、繁殖期にはカラス、犬、人間などに大きな声で鳴きながら威嚇飛翔します。飛ぶ際には白い部分が目立ち派手に見えますが、水田等の地上部に降りたときは完全な保護色で忽然と姿を消してしまいます。東北から関西地方の水田や草地の地上に営巣します。雛鳥は孵化後すぐに巣を離れ自分で餌を摂るようですが、非常に無防備な環境で子育てするため、雛の死亡率はかなり高く、水田、草地の減少もあって生息数は減少しているようです。
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▲地上に降りたケリ
▲飛翔中のケリ

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