アセビ(№396)

 春になり、野山を歩くのに絶好の季節となりました。この時期スズランのような小さな花をたくさんつけた中木が目立ちます。漢字で馬酔木と書くアセビでアセボ、アシビとも呼ばれるツツジ科の中木です。樹高1,5~4m程度の木ですが、古くなると幹の樹肌が捻じれたようになってきます。意外と集団で生育しているのが多いのですが、この木はグラヤノトキシンという毒成分を持っているため草食性哺乳動物(鹿等)が食べず、アセビだけが残ってしまうことから集団で生育しているようになることが多いためです。奈良公園がその代表といえるでしょう。
 やや乾燥地を好み、半日陰でも生育可能です。殆どが白花ですが園芸用にはアカバナが好まれるようでアケボノアセビ(ベニバナアセビ)などと呼ばれています。
 花はつぼ型で下を向いて咲くため、マルハナバチのように花の中に潜り込める昆虫でなければ受粉することは出来ません。しかも花が下をむいているため、花粉は葯(花粉袋)から出ると下へ落ちてしまいます。そのため葯の後方についている2本の棘に昆虫が触れた時だけに花粉が出るような仕組みを持っているようです。蜜は花の最奥部(花は下向きに開花するため、一番上部)にあり、昆虫が吸蜜する際にはこの棘の林を潜り抜ける必要がありその際花粉を体につけ受粉を助けます。
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▲アセビ(白花)
▲アセビ(赤花)
▲下から花の中を覗く
▲花弁を一部除いた花(写真の下部に花柄があり、写真の上部を下に咲く)

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カメノコロウカイガラ(№395)

 冬季は、落葉樹に葉が無く、常緑樹も新葉を出す前で、比較的茎や葉が見やすい状況にあります。そのため時々害虫の発生に気づき慌てる人がいます。しかし冬季間は、害虫の多くも越冬体制に入っており通常の薬剤では十分な効力を発揮できないことが多いものです。冬の防除では石灰硫黄合剤やマシン油が多く使われますが、これも植物が新芽を動かす前でないと植物に薬害を生じるため2月末までの使用に限られます。
 この時期問題になる害虫の一つにカメノコロウカイガラ(カメムシ目カタカイガラ科)が挙げられます。雌成虫は直径3~5mmの半球形で翅は無く、表面はツバ付き帽子のような白いロウ質の殻で覆われています。雄成虫は体長1mm程度で1対の翅があり、飛翔移動し交尾後死にます。年1回の発生で5月下旬頃雌の殻の下に産卵し、孵化した幼虫はしばらく移動が可能ですが、やがて葉脈上を中心に固着し、以降移動せずに大きくなります。しかし落葉樹では葉に固着した成虫は秋季落葉前に枝に移動するのが見られます。
 寄生植物はカンキツ、チャ、カキ、ナシなどの農作物を初めクチナシ、ゲッケイジュ、サザンカ、ツバキ、ヒマラヤスギ、マサキ、モッコク、モチノキ、ヤツデ、シャリンバイ、ハマヒサカキなど多くの庭園樹を加害し、ツタのヘデラにもつきます。植物の篩管に口針(注射針のような口)を刺し込み汁液を吸収し植物を弱らせるだけではなく甘露を出し、これにスス病が発生すると植物の炭酸同化作用が阻害され被害が大きくなります。ロウ物質をかぶっているため防除は難しく、幼虫の発生期を狙って薬剤散布をする必要があります。

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▲ヘデラ葉脈上の雌成虫(右上は雄の蛹殻)
▲雌成虫の腹面(ピンク色が成虫)
▲ハマヒサカキ枝上のカメノコロウカイガラ雌成虫

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ナンテン(№394)

 春遅くまで鳥に食べられずに赤い実をつけている低木にナンテンがあります。
 ナンテンは中国原産で高さ2~5mの低木です。今では野生化し、東北から九州までの里山でみられます。石灰岩地帯に多く冬季、赤い実が見られ、半日陰でも育ち、暑さ寒さに強いため庭園樹としても重宝されています。初夏に開花し、晩秋から冬季にかけ赤い(稀に白い)果実をつけます。
 鳥に好まれないのは果実や葉にナンテニンやナンジニンと呼ばれる数種の有毒成分が含まれるためで、他に食べるものが無くなればつまみ食い程度に食べ、大量に食べ尽くすようなことは無いようです。ナンテンの葉には防腐作用があるため赤飯や魚料理に添えられることもありますが決して食べたりしないようにご注意ください。
 昔、雪隠(トイレ)の横にナンテンが植えられたのは毒見役が毒に気づいたとき、ナンテンの葉を食べ嘔吐して毒を吐き出すために植えていたとも言われています。一方、毒成分には鎮咳作用がありのど飴に使われています。
 ナンテンの園芸種で、草丈60cm程度、低温で葉が赤くなり、実のならないナンテンをオタフクナンテンといいナンテンの園芸種です。また葉が糸のように細くなった園芸種は錦糸ナンテンと呼ばれます。
 ナンテンが遅くまで果実をつけていることから、酒宴の席で遅くまで残って酒を酌み交わすグループを「ナンテン組み」といいますね。
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▲ナンテン
▲ナンテンの実
▲シロミナンテン
▲オタフクナンテン

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