ニホンマムシ(№384)

 山や沢を歩いていて時々踏みつけそうになる蛇がいます。マムシです。この蛇は比較的小さく、30~60㎝程度で、木に登ることはありません。地面の上で生活するためでしょうか体の色も土色を主に濃褐色の円い模様(銭形模様、眼鏡模様と呼ばれます)を装いよく見ないと、見落とすことがあります。これも保護色なんでしょう。さらに、この蛇は他の蛇と違って、自分が毒を持っていることを知っているのか人の気配を感じても簡単には逃げません。その点、他の毒蛇であるヤマガカシや無毒のシマヘビ、アオダイショウなどは逃げ出そうと移動するため比較的見つけやすいのかもしれません。
 マムシはクサリヘビ科マムシ属の毒蛇で、背部に20対程度の銭形模様を持つのが特徴ですが、他にもいくつかの特徴があります。体形は比較的ずんぐりむっくりしています。頭は3角形でこれは毒を持つ蛇類に共通しています。また瞳は縦長で他の蛇のように円(蛇紋)ではありません。腹部は白に黒点を散らしています。日本では年間3000人程度が噛まれているそうですが、噛まれる部位は手が多いそうです。蛇のすぐそばまで手を出しても、保護色のためその存在に気付かないのでしょう。噛まれた場合はかつては噛まれた部分を縛るとか口で毒を吸い出すなどと言われたこともありますが、最近では走ってでも血清を打てるところへ行き処置するのが最もいいと言われているようです。
 マムシの毒はハブの2倍ぐらい強いようですが小型で量が少ないことや血清が有効であることから適切な処置をすればほぼ助かるようです。日本での死亡事故は年間10名程度のようです。
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▲マムシ(背中の銭型模様と縦長の瞳が特徴
▲攻撃態勢のマムシ

ムベ(№383)

 紅葉が始まるころ、山へ入ると、いろいろな果実が見られます。昔、これらの果実はおやつとして子供たちの人気の的でした。今は、お金を出せば、もっとおいしいものが簡単に手に入りますが。今でも時々アケビが店先に並ぶことがありますが、このアケビによく似た果物の一つにムベがあります。
 ムベはアケビとは異なり常緑樹で1年中緑の葉をつけています。果実はアケビよりやや小型で円く、熟しても開きません。アケビは熟すと果実が裂け、中の種子がこぼれ落ちたり鳥に食べられたりして種子散布をするのでしょうが、ムベの場合、熟した果実は樹上または地上に落下して獣類に食べられ糞とともに種子散布されることが多いのかもしれません。ムベができている付近には食害を受け皮だけとなったたムベの果実や多数の種子を含んだ獣糞があちらこちらに見られます。
 ムベの葉は互生しますが葉と葉の間隔が狭く9,7,5,3枚と奇数枚が輪生状に着きます。7枚以上になると果実をつけるようです。葉はアケビより厚く、葉脈が目立ちます。アケビは、果実だけではなく新葉、新芽なども食用にされますが、ムベではいかがでしょうか。真偽のほどはわかりませんが、ある時天皇がこれを口にし「ムベなるかな」と感嘆したことからムベと呼ばれるとか。
 最近では、あまり見かけませんが常緑であることを生かして生垣に使われ「ムベ垣」と呼ばれることがあります。
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▲他の木に絡んで実をつけたムベ
▲中身を食べられたムベの果実
▲ムベの種子を大量に含んだ獣糞
▲ムベの葉
▲ムベ垣

クロコノマチョウ(№382)

 ヤブコギをしていると足元から枯葉がヒラリ。なんだろうと追ってみるとまたヒラリ。落ちたところを見ても、枯葉だけ。こんな経験ありませんか。枯葉と全く区別のつかない蝶が近づくと、逃げ、近づくと逃げ、先へ先へと逃げていきます。
 クロコノマチョウと言ってタテハチョウ科ジャノメチョウ亜科のチョウで、前翅長32~45㎜の比較的大型の蝶です。この蝶は静止時、翅を立てて止まります。つまり、止まっているときは翅の裏側しか見られません。翅の裏は枯葉と全く変わらない色、模様をしています。かなり近づいても、蝶を確認するのはむつかしいものです。しかも生息場所は林の中の日陰で活動は早朝と夕方、ますます見つけにくいですね。
 4~11月に現れ、成虫で越冬します。もともと南方の蝶ですが最近徐々に北上しており、関東地方でも見られるようになっています。幼虫はススキ、ジュズダマ、ヨシ、チガヤ、トウモロコシなどのイネ科植物を食べ、成虫は樹液、獣糞、腐熟果実などから吸汁します。擬態、保護色の見本のような蝶です。
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▲枯葉に紛れた成虫(中央部)
▲成虫接写

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