コクサギ(№330)

 植物の葉は茎につきますがその付き方(並び方)を葉序と言います。茎の1箇所から3枚以上の葉が車軸状に付くのを輪生、左右に1枚ずつ向き合って付くのを対生、1枚ずつ左ー右交互に付くのを互生と呼びます。大概の植物はこの分け方で説明が付き、分類をする上で重要なポイントとなります。しかし、このような規則から外れた付き方をするものがあります。その代表的なものの一つにコクサギ型葉序と呼ばれるものがあります。これは、連続した2枚の葉が同一方向(葉は同一方向ですが基部は90度ずれています)に出るもので、ミカン科のコクサギに代表されるためコクサギ型葉序と呼ばれます。ヤブニッケイ、ケンポナシ、サルスベリなどでこのタイプの葉序が見られます。
 植物は葉で炭酸同化作用を行い、太陽光と水、炭酸ガスから生育に必要な炭水化物を合成しています。そのため、葉の付き方をいろいろ工夫し、可能な限り多くの光を得ようとします。通常、対生や互生の場合よりコクサギ型の葉序の方が直上の葉の陰になりにくいことからこのような葉序もそれなりのメリットがあるものと考えられています。葉序は輪生→対生→コクサギ型→互生と移行(進化)すると考えられており、コクサギ型は対生から互生への進化の途中にあると考えられています。
 コクサギはミカン科の落葉低木で、石灰質の多い里山でしばしば見かけることがあります。雌雄異株、開花時期には辺り一面にそのさわやかな香りが漂います。コクサギの冬芽は、三大美芽(コクサギ、ネジキ、ザイフリボク)の一つに数えられています。植物体に有毒なアルカロイドを含むため、かつては便所のウジムシ退治、家畜の体を洗って、ダニ、シラミ退治に使用されたそうです。名前の由来は、臭気があり、クサギより小さいことからコクサギと呼ばれるそうです。コクサギはカラスアゲハが好んで食べる食草です。
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キョウチクトウ
アオキ
▲輪生葉序(キョウチクトウ:3枚の葉が出ている)
▲対生葉序(アオキ:2枚の葉が向き合っている)
コクサギ
アキニレ
▲コクサギ型葉序(コクサギ:1枚ずつ連続して2枚が同じ側に出ている)
▲互生葉序(アキニレ:1枚ずつ交互に左右に出る)

ホタルガ(№329)

 晩春、低木として密植したハマヒサカキが虫に食べられ丸坊主になったとの連絡で現地を見たところ、黒い頭、黄色地に黒い縁取りの入った目立つ幼虫がたくさん見られました。これはホタルガの幼虫です。
 成虫は前翅長25mm前後の、マダラガ科のホタルガで成虫は昼間に飛ぶ蛾です。夜間には灯火に集まります。止まったとき、三角の黒い翅(前翅)の後部に白い帯が走り、頭部は赤く、立派な触角を持った蛾で比較的目立ちます。また、ゆっくり飛ぶため、人目に触れやすい蛾といえるでしょう。幼虫はツバキ科のハマヒサカキや近縁のヒサカキ、サカキ、ニシキギ科のマサキなどを食害する害虫です。毒針毛(毒のある毛)は持ちませんが、体液を出しこの液に触れると人によってはかぶれることもあります。成虫も体内に毒を有するようで、昼間ゆっくり飛び、成虫や幼虫の体の模様が目立つ仲間は毒をもつ傾向があります。また、マダラガ科の蛾類には有毒なものが多いです。

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▲ホタルガ幼虫によるハマヒサカキの被害
▲ハマヒサカキを食べるホタルガ幼虫

ヒサカキ(№328)

 早春、里山の小道を歩くとガスのようなにおいが漂うことがあります。これはヒサカキと呼ばれる低木(樹高2~5m程度)の花のにおいで、花のにおいとしてはかなり特殊なにおいと言えるでしょう。サカキに比べ小型でつやのある小葉をつけ、白~ベージュ色の小さな花を下向きに付けます。雌花のほうが雄花より小さいのもこの花の特徴でしょう。名前の由来は姫サカキが訛ったものとか非サカキの意味とかいわれています。
 ツバキ科ヒサカキ属の低木で、日陰に強く、成長も遅いうえ剪定にも強いため、庭木として植栽されることもありますが、花よりつやのある葉を鑑賞することが多いようです。乾燥地、照葉樹の下等環境を選ばず生育します。この植物は、図鑑によれば雌雄異株で、雌株に雌花が、雄株に雄花がつくとなっているのが多いようですが、雌しべと雄しべの両方を併せ持つ両性花も見られます。更に雌花の柱頭(雌しべの先端)が2裂しているものと、3裂しているものが見られます。また、雌花の色もベージュがかっているものが多いなど、この植物の性については未解明な部分が多いようです。
 本州以南、インド、マレーにまで分布しており、サカキの少ない地方ではサカキの代わりにこれをサカキと呼んで神事に使用する地方もあるようです。ビシャコ、ビシャ、ササキなどの呼び名で呼ばれることもあります。
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ひさかき1
ひさかき2
▲ヒサカキの雄花(雄しべのみ)
▲ヒサカキの雌花(柱頭2の雌しべのみ)
ヒサカキ3
ヒサカキ4
▲ヒサカキの雌花(柱頭3の雌しべのみ)
▲ヒサカキの両性花(雌しべと雄しべが見られる)

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