トラマルハナバチ(№309)

 山道を歩いていると、ツリフネソウが咲いていました。このツリフネソウの花を次から次と訪ね蜜を吸っているハチがいました。トラマルハナバチです。
 体長20mm程度の大型のハチで、体中に細かい毛を密生し、いかにも花粉を媒介するハチの様相を呈しています。ハナバチの仲間は、筒型の花の中に頭から潜り込み吸蜜することが出来ます。したがって、筒状の花の最も奥に位置する距(花の一部が筒状に変化し蜜を蓄えるようになった器官)を備えた花からも吸蜜することが出来ます。一方、ハナアブの仲間はホバリング(空中に停止し吸密する)しながら吸蜜するものが多く花粉媒介にはあまり役に立たない場合もありますし、クマバチなどは距の外側を噛み破り中の蜜を吸蜜します。これらは花粉媒介の役に立たず蜜だけ採るため「盗蜜」と呼ばれます。
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ツリフネソウに潜り込んで吸蜜中のマルハナバチ
マルハナバチ(標本の写真)
▲ツリフネソウに潜り込んで吸蜜中のトラマルハナバチ
▲トラマルハナバチ(標本の写真)

イチョウー2(№308)

 秋の気配を感じる頃、早い時期から黄葉が見られる樹木にイチョウがあります。イチョウは既にイチョウ(№.134)で短枝と長枝があることを記載しましたが、今回は葉についてみてみましょう。
 イチョウは国内の街路樹としては最も多く利用されている樹木の一つで、大阪府をはじめ多くの都府県、市町村の木として親しまれています。ところで、イチョウの葉は中央に切れ込みのある扇型が最も一般的な形です。この切れ込み方にはいろいろあって、写真のように深いものから殆ど切れていないものまでが見られます。しかも同じ木の中でいろいろ見られ、若い枝には切れ込みが深い傾向があるようです。イチョウの葉の葉脈は2双性葉脈といわれ、葉柄から先へ行くにしたがって二股に分かれますが、決して隣の葉脈と繋がらないのが特徴で、花を咲かせる樹木ではイチョウだけに見られる特徴です。
 イチョウの種子は銀杏(ぎんなん)と呼ばれますがぎんなんにはギンコール酸と呼ばれる化合物が含まれ、人によってはかぶれることがあります。葉にもギンコール酸が含まれかぶれることがあり、本にはさんで防虫効果(シミ対象)を期待することもあります。 イチョウは幹から葉が出ているように見えることもありますが、この葉も短枝に付いているもので、短枝が短いため目立たないだけです。
 イチョウは雌雄異株ですが、雌株はぎんなんをつけ、臭い、汚いできらわれるため街路樹には雄株を植えつけることが望まれます。しかし、外見から雌雄を区別することは不可能ですので、雄株の根を挿し木し、雄の苗を増やす手段がとられています。それでも、街路樹に雌株が見られるのはなぜでしょうか。
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▲黄葉をはじめた街路樹のイチョウ
▲いろいろな切れ込みのイチョウの葉
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▲幹から葉が出ているように見える
▲道路に落ちた銀杏
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◀︎イチョウの葉脈(2双性葉脈)

マツノマダラカミキリ(№307)

 マツノマダラカミキリの名前は、聞き覚えのある名前だと思います。松食い虫と呼ばれる害虫の代表格でもあります。10数年前、松の生えている関西の山には赤茶けて枯れたマツがあちらこちらに見られました。これらのマツの枯死原因は殆どがマツノザイセンチュウと思われました。松枯れの原因を起こすマツノザイセンチュウの運び屋がマツノマダラカミキリです。
 体内に大量のマツノザイセンチュウを持ったマツノマダラカミキリは、羽化(蛹から成虫になること)後、元気なマツの新芽をかじります(後食)。このとき、マツノザイセンチュウはかじられたマツに移り、そこで増殖しやがてマツを枯らしてしまいます。マツノマダラカミキリは、マツノザイセンチュウの増殖で元気を失い松脂を出せなくなったマツに産卵し、マツノマダラカミキリの幼虫はこの松材を食べながら成長し、やがて蛹になり、マツノザイセンチュウを大量に持った成虫が羽化してきます。
 マツノザイセンチュウはマツノマダラカミキリに新しいマツまで運んでもらい、マツノマダラカミキリはマツノザイセンチュウがマツを弱らせ、松脂(健全なマツではマツノマダラカミキリの卵や幼虫を松脂で包み込み被害を防御するマツの防御物質)が出なくなったマツに産卵することが出来るため相利共生(異種生物が同一環境でお互いに助け合って生きている状態)関係にあります。                  
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▲松枯れ被害
▲マツノマダラカミキリ成虫

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