モンクロシャチホコ(№306)

 8月中頃になると、サクラに毛虫がわきはじめます。
 モンクロシャチホコの幼虫で、若令幼虫は集団でサクラの葉を食害しますが、最初は食害量が少ないため気づくのが遅れがちです。中令以降になると食害量も急に増え、地上の糞や葉を食い尽くされて残った枝だけが目立つようになります。若令幼虫は赤褐色ですが、中令以後、赤みがかった黒で体長4~5cm、体中に白く長い毛をつけた毛虫となります。  サクラのほかモモ、ナシ、リンゴ、ウメ、ビワ、カイドウなどバラ科の樹木を中心に食害しますが、サクラが最も狙われやすくサクラ毛虫とも呼ばれます。また、頭部と尾部を上に上げることが多く、シャチホコのように見えることからシャチホコガや、フナガタケムシなどと呼ばれることもあります。成虫は開長45~60mmの蛾で、白地に黒い紋をつけています。成虫の黒い紋と幼虫が頭部、尾部を上げることからモンクロシャチホコと呼ばれます。
 この幼虫、実は昆虫食の中の王とも呼ばれており、味はサクラのクマリン(サクラの香りの源)が芳しく美味で、大量入手が可能、調理法も選ばないそうです。私は遠慮しますがトライされてみては?
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▲部分的に葉が食害され枝だけになったサクラ
▲被害を受けたサクラの下には多数の虫糞が見られる
▲集団で食害する中令幼虫
▲頭と尾を持ち上げた幼虫
▲黒く変った終令幼虫
▲成虫(左が静止の状態)

ソヨゴ(№305)

 庭木の中で常緑樹(1年中緑の葉を付けている木)として、柔らかい感じの葉を付ける高級樹にソヨゴがあります。ソヨゴは生育が遅く、種子から育てれば開花まで8年以上もかかります。しかも雌雄異株のため、秋に赤い果実を楽しむには10年生以上の雌株を選ぶことになります。このように育成に長い年数が必要なため、山取り(自然に生育している木を利用)が多く、高価な庭木となっています。
 ソヨゴは葉のクチクラ層(葉の最も外側の層)が厚く、風に吹かれると葉が擦れ合う音がするため「そよぐ」からソヨゴとなったそうです。葉縁(葉の縁)が波打つのもクチクラ層が関係しているそうです。また、葉にライターの火を近づけるとその部分が膨らみ、「パチン」という音と共にはじけます。そのため「フクラシバ」ともいわれます。これはクチクラ層が厚いため熱せられて発生した水蒸気が逃げられず膨らみ、葉の表皮が破裂するために起こります。また、加熱された部分の外周は黒く変色します(円紋、死環)。加熱すると膨らんだり、その周辺が黒変するのはモチノキ科の植物に広く見られます。
 ソヨゴの材は成長が遅く、木目が目立たないため、コマやそろばんのタマとして利用されました。また、一部地方ではさかきの代用として利用されるそうです。
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▲ソヨゴ(雌株)
▲葉縁が波打つソヨゴの葉と果実
▲火を近づけ膨らんで破れた葉と、周囲の黒変

トモンハナバチ(№304)

 夏になると大阪市立長居植物園のハーブ園を飛び回るおしゃれな蜂が見られます。黒い腹部に黄色の縞模様を付けており、よく目立ちます。トモンハナバチといい比較的発生地が局限され、栃木県では絶滅危惧Ⅱ類、京都府では要注目種になっています。
 ハキリバチ科のハナバチで年1回発生します。ミソハギ、ニンジンボク、ネジバナ、ハーブ(キダチハッカなど)などを吸蜜します。成虫の体長は雌14mm、オス18mmでオスのほうが大きいハキリバチの仲間です。メス成虫は腹部に10個の黄色紋があり、これがトモンハナバチの名前のいわれですが、オス成虫には12紋ありオスはジュウニモンハナバチというべきでしょうか。 この蜂は竹筒、ヨシ、甲虫などが開けた穴を巣に利用し、花粉団子を中にいれそこに卵を産みます。産卵後、ハキリバチの仲間は部屋の仕切りに切り取った植物の葉を利用することが多いのですが、トモンハナバチは植物(ヨモギやアザミなど)の綿毛をかき集めて利用するそうです。綿毛に囲まれて育つ幼虫はさぞかし優雅な生活を送ることでしょう。
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▲トモンハナバチ雌成虫
▲交尾中のトモンハナバチ(左:雄、右:雌)