ツバキ(№291)

 新春の花を代表するのはツバキです。日本に自生するツバキはヤブツバキとユキツバキの2種ですが、園芸品種は数百種ともいわれています。主としてヤブツバキとユキツバキの交雑実生や枝変わりの品種を育成した結果です。自然交雑種も利用されているため京都ではお寺固有の名椿が多数存在しています。園芸品種数が多く、分類は花の色、花の形、葉の形、枝の伸び方などで分けられます。
 花の色や形はよく知られていますが、葉についてはあまり知られていないようですので、紹介します。写真1は通常のヤブツバキの葉です。写真2は一部の葉の先端が2,3に別れ、まるで金魚の尾のようになったもので「金魚葉」と呼ばれます。写真3は葉縁が上に反り返り、全体が丸みを帯びた葉をしています。これはその形から「盃葉」と呼ばれます。写真4は葉肉(葉の厚み)が薄く、葉身は細長く、葉脈がはっきりしているため、一見サクラの葉のように見えるもので「桜葉」と呼ばれるものです。写真5は葉の形ではありませんが「斑入」のものです。これらに加えて、花の色や形でも分けられており非常に多数の園芸品種が存在することになります。
 最後に花の散り方ですが、椿はガクを残して花全体がボトッと落ちるものですが、サザンカのように花びらがバラバラ落ちる品種もあり「散り椿」といわれています。
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▲通常の葉型
▲金魚葉
▲盃葉
▲桜葉
▲斑入り
▲散りツバキ

サンゴジュハムシ(№290)

 桜の花が散り、樹木の新芽も開き山々が新緑に包まれます。庭木の緑も1年で一番美しい時期となります。しかし新しい葉は害虫たちにとっても最もおいしい食べ物なのでしょう。特に、長い冬を卵で越してきた孵化間もない幼虫にとって、新葉は特別のご馳走でしょう。
 まるで、虫食いの葉が開いたようなぼろぼろの葉が見られる木があります。サンゴジュハムシの食害を受けたサンゴジュです。前月にはサンゴジュについて記載しましたが今回はサンゴジュハムシについてです。サンゴジュハムシは卵で越冬しますが、この卵は写真のように冬芽(越冬中のサンゴジュの芽)のすぐ側の枝を傷つけて産卵され、卵の上には自らの糞?を蓋のようにかぶせています。そのため卵は冬芽と同じ環境下で越冬しており新葉の展葉と同時に卵も孵化することが出来ます。つまり孵化した幼虫はすぐにご馳走にありつけることになり、ぼろぼろの葉が開いたような状況になります。小さな葉が食害されると、葉の成長と共に食害痕も大きくなり、益々目立つようになります。
 サンゴジュハムシはサンゴジュと同じスイカズラ科ガマズミ属のガマズミ、カンボク、オオデマリや園芸品種の常緑ガマズミなどの庭園花木にも同様の被害を発生させ問題になります。ひどい場合、葉を丸坊主にしてしまうこともあり庭木の害虫として重要です。
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▲サンゴジュハムシに食害されたサンゴジュの新葉
▲孵化後のサンゴジュハムシの産卵痕と卵殻
▲サンゴジュハムシの幼虫
▲トサミズキのサンゴジュハムシによる被害

ヒイラギナンテン(№289)

 冬季から春にかけて花の少ない時期に、庭の片隅などで黄色い花を咲かせているヒイラギナンテンがあります。
 ヒイラギに似て葉縁にとげのある低木で、庭石に添えたり、低木生垣に利用したりされます。病害虫に比較的強いため庭木としてよく利用されます。台湾、中国、ヒマラヤ原産で、1680年代に日本へ伝えられました。ナンテンと同じメギ科でヒイラギナンテン属の常緑低木です。
 花序は茎の先端から総状花序を数本だし、冬から早春に開花します。寒い時期に開花する花の通性として花びらは黄色で、昆虫たちにその存在をアッピールしているようです。それだけではなく、受粉を確実にするための工夫として、昆虫(比較的低温時にも活動できるハエやアブ)が吸蜜のため花の中へ進入すると、その刺激を感じ、周囲に広がっているおしべが中心の雌しべに向かって動くことが知られています。この動きによって、花粉を少しでも効率よく昆虫の体にこすりつけようとしているのでしょう。
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▲開花中のヒイラギナンテン
▲おしべが花弁側に寄っている通常時の状態
▲刺激を受けおしべが中央に寄った状態

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