サンゴジュ(№285)

 冬でも緑色の葉をつけた木を常緑樹と言いますが、常緑樹の1つで山口県以南に自生するガマズミ属の中木で生垣などによく使われる木にサンゴジュがあります。逸出(庭などに植栽されていたものが山野に広がること)の多い樹木です。分厚くつやのある葉で、水分を多く含むため燃えにくく、大気汚染にも強いため目隠し、防風樹、防塵樹、防火樹などに使われます。秋には赤く色づいた果実、果梗が目立ちサンゴジュの名前のいわれとなっています。

 しかし、サンゴジュハムシが発生し、葉をぼろぼろにしたり落葉させることもあります。サンゴジュハムシは若枝にまとめて産卵し、土中で蛹になり、移動力が小さいのか一度発生すると同じ木で毎年発生を繰り返す傾向があります。
 サンゴジュの葉の裏から葉脈を見ると、主脈と側脈の分岐部に小さなくぼみが見られます。これは、クスノキの項でも書きましたダニベヤ(ダニ部屋)です。葉の裏はくぼんでいますが、表は突出しています。クスノキでは1葉に2個でしたがサンゴジュの場合数個が見られフシダニ、ホコリダニなどの存在が確かめられていますが、その生成過程と存在意義などについてはいろいろな研究結果があり、より詳細な研究が待たれます。
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▲サンゴジュ
▲サンゴジュハムシの被害を受けたサンゴジュ
▲サンゴジュ葉裏のダニ部屋(ドマティア)
▲葉表から見たダニ部屋
▲ダニ部屋の断面

プラタナスグンバイムシ(№284)

 平成13年、愛知県でプラタナスの葉が絣(カスリ)状になる被害が見られ、その犯人がグンバイムシであることがわかりプラタナスグンバイムシと名づけられました。北米原産で体長3.5~3.7mmのカメムシの仲間です。福島県以南、九州まで見つかっています。
 プラタナスの葉の裏にすみ、気孔から口吻を差込み樹液を吸収するため葉に白色脱色斑を生じ、遠くから見ると木全体が黄色く見えることがあります。被害がひどいと落葉することもあります。国内では年3回の発生を繰り返すようで、冬には成虫でプラタナスの樹皮下で冬眠します。全体に薄い乳白色で、前翅のやや前方中央に黒褐色の斑紋があり前翅前縁に棘(とげ)があります。
 海外ではクワ科、クルミ科での食害が報告されており、日本でもイチヂクやクルミでの被害が心配されます。
 
プラタナスの樹皮をめくると、その下に越冬中の成虫が見られました。レースで作った行司の持つ軍配のような形をしています。
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◀越冬中のプラタナスグンバイムシ成虫

ユーカリ(№283)

 今月はコアラの餌として有名なユーカリを取り上げましょう。フトモモ科ユーカリ属の高木で世界に800種も存在します。しかしコアラが食べるのはその中の僅か12,3種類の新芽のみといわれています。
オーストラリア、タスマニア島に多く、樹高5~70mと多様です。ユーカリの葉は炭化水素のテルペン(引火性が強い)を発生するためユーカリ林はテルペンに覆われ、火種があれば山火事の原因となります。また、根は地下深く伸び、地下の深いところから水を吸い上げることが出来るため荒廃地の復旧に植えられることもあります。
 日本ではユーカリといえばEucalyptus globulus(ユーカリ・グロブラス)と呼ばれるナギナタの刃のような細長い葉をした品種が多く植えられています。この仲間は若い枝に付く葉と古い枝に付く葉の形が異なります。若い枝に付く葉の葉柄は見えず卵形の葉が若い枝を巻くような形で付いています。古い枝に付く葉には葉柄があり、なぎなたのような形(披針形)をしています。また、古い茎の断面は円形ですが若い茎では四角と違うことが観察されます。ただ、写真4でわかるように、古い茎でも維管束は四角なのは面白いですね。古い枝の葉は他の広葉樹と異なり水平に広がるのではなく下垂した葉となるのも変わっています。樹皮を見ると古い樹皮はめくれて剥離しますが、そのあとの幹に淡緑色の筋が見えます。これは、幹にも葉緑素があり光合成をしているためで、そのためにも古い樹皮を脱ぐそうです。
 他にも多くの品種が導入されていますので、いろいろ比較するのも面白いです。
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▲若枝に付く葉(卵形)
▲古枝に付く葉(披針形)
▲若枝(四角い枝)
▲左:古枝断面(丸) 右:若枝断面(四角)
▲樹皮のめくれた幹

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