ブタクサハムシ(№268)

 堺市内の花壇でヒマワリの葉が虫に食べられ惨めな状態になっていました。ヒマワリによくつくグンバイムシ(№8)は葉の汁を吸うため、葉をかじる様な被害は出ません。葉の裏を見ると4~5mmのウジムシのような幼虫が多数見られました。
 この幼虫は、1996年に関東で生存が確認されたブタクサハムシの幼虫です。関西では1997年に枚方市の淀川で見つかりました。北米原産の外来昆虫ですが、同じく北米から帰化したブタクサを追いかけるように日本へやってきました。幼虫はもとより成虫もブタクサを食害するため、日本中にはびこっていたブタクサを瞬く間に食いつくし、ブタクサを見つけるのがむつかしい程度にまで減少させてしまいました。これでブタクサ防除に悩まされることがなくなると思われたとき、栽培種のキクイモ、ヒマワリの被害が目立ち始めました。この害虫に対する登録農薬がないため薬剤防除も難しく、今後ヒマワリでの被害が心配されます。
 春から夏にかけて葉の裏に数十個の卵をかためて産みます。最初、幼虫は葉の裏で、表皮を残して葉肉だけを食べますが、成長すると穴を開けるような食べ方をします。やがて
葉の裏に粗末な繭を作って蛹になります。冬は成虫で越すようです。
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▲ブタクサハムシの卵塊(殆どの卵が孵化後です)
▲幼虫
▲荒い繭
▲成虫

タカサゴユリ(№269)

 8月も末になると、里山をはじめ、道路際や一般家庭の庭のあちらこちらにも白いユリの花が見られるようになります。タカサゴユリです。
 タカサゴユリは日本で最も普通に見られるユリです。テッポウユリによく似ていますが、タカサゴユリは茎が太く、草丈も高くて1,5m程度になることもあります。花の長さ15~20cm、直径5cm以上で全体に大型です。花弁に紫褐色の筋が入るのがタカサゴユリの特徴ですがテッポウユリとの交雑種も多く、この特徴も危うくなりつつあります。タカサゴユリの葉はテッポウユリより細くホソバテッポウユリと呼ばれることもあります。
 もともと台湾の固有種ですが、園芸用に日本に移入したものが逃げ出して野生化したものです。現在シンテッポウユリと呼ばれるものはタカサゴユリとテッポウユリの交雑園芸種です。
 ユリの仲間は連作障害がでやすいため、タカサゴユリが一面に咲いていても、数年で発生地が変わります。この移動は種子が風に飛ばされて起こりますがその様子は本シリーズユリの種子散布(№209)をご覧ください。
 またユリの仲間の葯(花粉の入っている袋)は花糸(おしべの軸)にぶら下がるようについています。まるで掃除機の先のように自由に動きますが、これは訪花昆虫がやって来たとき、出来るだけたくさんの花粉を昆虫の体にまんべんなく付けるための工夫のように見えます。
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▲斜面一杯に咲くタカサゴユリ
▲タカサゴユリ
▲掃除機の先のような葯(黄色い花粉をたくさんつけている)

キアゲハ(№270)

 夏の終わりのパセリ、ニンジンはちょっと油断すると葉が丸坊主になることがあります。これは殆どがキアゲハ幼虫の仕業です。
 キアゲハはどこに
でも見られるアゲハチョウの1種で、翅の長さが4~6cmの大型のアゲハチョウです。ナミアゲハとよく似ていますが前翅表面基部が全体に黒く、黒い縞模様のナミアゲハと区別できます。また、その名のとおり全体に黄色が強いことでも区別できます。成虫は日本全国で見られ、年に2~4回発生し、蛹で越冬します。幼虫は、セリ、ハマウド、シシウド、アシタバ、フェンネル、パセリ、ニンジン、ミツバなどのセリ科植物を食べます。雑草だけではなく、ハーブや野菜にもつきますので害虫として嫌がられます。若令幼虫(1~3令幼虫)は鳥の糞に似せた黒褐色の保護色ですが、終令幼虫は橙黄色、黒色と緑の派手な色に変わります。これは警戒色と考えられていますがそのバックボーンは何でしょうか。
 アゲハチョウの幼虫は驚くと臭角(肉角)と呼ばれる2本の角を頭の後ろから出します。アゲハの種類によってその色は違いますが黄または紅色でキアゲハは橙黄色です。アゲハの幼虫を襲った天敵は突然出てくる角にびっくりするかもしれません。しかしこの角はもうひとつの機能、つまり悪臭を放つという意味で嫌がられそうです。この派手な幼虫は臭いぞ、との警戒色なのかもしれません。
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▲キアゲハの卵
▲若令幼虫
▲終令幼虫(円内は臭角を出した幼虫)
▲成虫

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