ウチワサボテン(№194)

 うちわのような茎がいくつも連なったサボテンがウチワサボテンです。初夏のころから黄色いきれいな花を咲かせます。大きな棘と小さな棘があり、小さな棘は皮膚に刺さると取れにくく厄介なものです。
 花には6本の雌しべと、多数の雄しべが見られます。この雄しべは昆虫が花粉を集めに来ると、その刺激で花糸(雄しべの柄)がイソギンチャクの触手のように中央部へ曲がります。この動きは、まるで訪花昆虫を抱きかかえ、花粉を押し付けているように見えます。
 このように、積極的な虫媒花のように見えますが、果実は日本ではわずかしかできないようです。原産地では果実をフルーツとして利用しているようです。また、できた種子を何回か播種しましたが、今まで一度も発芽したことはありません。この雄しべの努力はいつ報われるのでしょうか。
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▲ウチワサボテン
▲ウチワサボテンの花(雄しべが開いた状態)
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▲ウチワサボテンの花(雄しべが中央に寄った状態)

オオスズメバチ(№195)

 夏も終わりに近づくと、オオスズメバチの巣も直径30cmを超える大きさに成長します。知らずに巣に近づくと、大きな羽音と、口器を噛み合わせるカチカチという音を立てながら向かってくることがあります。
 オオスズメバチは飛んでいるとき、前の翅と後ろの翅を合体させ1枚の大きな翅のようにして動かしています。しかも、前後の翅が胸についている箇所は少し離れています(中胸に前翅、後胸に後翅がついている)。そのため、翅の動きに合わせて前後の翅は左右に少し滑らせる必要があります。左右に滑らせながら、前後を合体させるその秘密は前翅の溝と後ろ翅の鉤(翅鉤)にあります。後ろ翅の多数の鉤を、前翅の溝に引っ掛けることで前後の翅を合体させ、しかも左右に動く余裕を持った連結ができます。
 前後の翅を合体させて飛ぶ昆虫は多く、セミやチョウもこのような翅の使い方をして飛んでいます。
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▲採蜜中のオオスズメバチ
▲オオスズメバチ後翅前縁
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▲オオスズメバチ後翅前縁の翅鉤

アブラゼミ(№193)

 春になり、冬眠から覚めた落葉樹の新芽も動き始めました。ヤマボウシの新芽は、花の咲き終わった9月頃には出来ていますが、最初はどれを見てもみな同じに見えます。しかし、冬季(剪定時期)になると先端部の芽は太く大きい芽が多く、これに比べ樹冠の内部の芽は細長い芽が多いことに気づきます。
 枝の先端の太く大きい芽は間もなく蕾となり、花を開く芽で花芽といいます。ほっそりしているのは葉を開く葉芽です。この花芽は花の終わった8月には分化(花芽と葉芽が決定されること)し、この分化期以降は葉芽が花芽に変わることはありません。従って、冬季剪定の際はこの花芽を残さないと次期の花は見られないことになります。
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▲アブラゼミの腹弁
▲アブラゼミの鏡膜