マムシグサ(№185)

 半日陰の林縁に、茎にマムシに似た模様をつけた植物が見られます。その名もマムシグサ。サトイモの仲間で、テンナンショウ属の植物です。
 花は、仏像の光背に似た苞(仏炎苞)の中に雌雄異株で開きます。一つの株でも幼植物の間は花をつけませんが、球茎が少し肥大すると雄花を、更に大きくなると雌花をつけ、性転換をする植物として有名です。
 仏炎苞の中は狭く、中に入った昆虫(キノコバエ、ユスリカ等)は翅を広げて飛ぶことはできません。また、雄しべ、雌しべの芯の上部にはねずみ返しのようなでっぱりがあり、這って上から出ることもできません。雄花で花粉をつけた昆虫は、仏炎苞の底部の小さな隙間から外へ出ますが、雌花にはそのような隙間がなく、体中の花粉を雌しべに与えたあと、そのまま命を絶たれることになります。食虫植物ではありませんので、そこまでやらなくてもと思うのですが・・・。
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▲マムシグサ
▲芯の上部のねずみ返し
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▲雌花仏炎苞の下部(出口無し)
▲雌花仏炎苞の内部(昆虫の死体有り)
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▲雄花仏炎苞の下部(出口有り)
▲雄花仏炎苞の内部(昆虫の死体無し)

オトシブミ(№186)

 5月上中旬、山道を歩いていると、長さ1.5~2cm程度の筒状にくるくる巻かれた広葉樹の葉が落ちていることがあります。これはオトシブミの揺籃(ゆりかご)と呼ばれ、1つの揺籃の中に通常1個の卵が生まれています。
 オトシブミはゾウムシに似た甲虫で、日本には23種ほどいます。それぞれ、利用する樹種や筒の作り方なども違うようです。たった1枚の葉を餌として育ち、成虫が出てくるのですから驚きです。1枚の葉っぱで育つのですから、成虫の体長は3mm~1cmと小型です。
 昔、直接手渡し難い恋文などを、道に落して読ませようとしたそうで、ここから落し文(オトシブミ)の呼び名が付いたそうです。
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▲オトシブミのゆりかご
▲ゆりかごの中の卵

ツマキチョウ(№184)

  年に1回、春の終わりの2週間ほど(通常4月上旬ですが、今年は4月中下旬でした)、おなじみのモンシロチョウに混じって飛び回る小型のチョウがいます。
  前翅の先端が鉤状にとがり、オスでは、その部分が黄色でよく目立つ可愛らしいチョウです。後翅の裏は迷彩服模様です。
  モンシロチョウに比べ、どこにでもいるということではなく、比較的河川敷の近くなどにかたまって発生することが多いようです。食草(幼虫の餌となる植物)は、ハクサンハタザオ、タネツケバナ、ナズナ、イヌガラシなどのアブラナ科植物です。
  モンシロチョウと間違いやすいこと、春の一時期のみの発生であること、発生地が比較的偏っていることなどから、その存在さえ知る人の少ないスプリング・エフェメラルの一種です。
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◀チョウジザクラ(フジザクラ)で吸密するツマキチョウ