ユキワリイチゲ(№180)

 椿の花が落ちるころ、3月中旬、まだ南大阪の山々でも雪の話しが聞こえる頃、ある谷筋を歩いていて河畔に数十輪の花を見つけました。ユキワリイチゲです。2~3㎡に広がった群落を作っていました。大阪では準絶滅危惧種に指定された希少種です。その名前は早春、残雪の中から花が伸びだすの意味でしょうが少しオーバーな感じもします。しかし、花の少ない時期に陽光を浴びて咲く花は、まさにスプリングエフェラメルにふさわしいものです。花弁のように見えるのはガク片で、12~22枚程度あります。この植物は地下茎で広がっていくため、一つの群落はほぼ同じ遺伝子を持っており、受粉しても種子を結ぶことはほとんどありません。そのため、繁殖力は弱く、環境変動の影響も受けやすく、保護の必要な植物の一つです。
yukiwariitige21
yukiwariitige22-1024x680
▲ユキワリイチゲ
▲ユキワリイチゲの花

ミツバチ(の目)(№179)

 今年の春は桜の花が咲き始めたにもかかわらず、梅の花がまだ残っています。白梅の花にミツバチが訪ねていますが、白一色の花の中心(蜜や花粉がある)を狙って飛んできます。一般的に花を訪ねる昆虫(特にミツバチでよく研究されています)の目は、人と違って波長の短い部分(紫外線部)を良く感知し、逆に赤外線部を認識しにくいようです。では、カメラに可視光線(400nm~700nm)を遮断し紫外線を透過するフィルターを取り付けて白梅を見て見ましょう。右下の写真がその映像ですが、花の中央部やおしべの葯(花粉)は紫外線部を反射するようで濃く見えます。ミツバチはこの部分を目指して飛んでくるようです。
ume-kasi2
ume-sigaisenn2
▲人の目で見たウメ
▲フィルターを通したウメ

スギ(№178)

 春になると花粉症に悩まされる人が増えています。日本中の雑木林を伐採し、植林されたスギやヒノキが成長し、花をつけるようになったためその花粉が原因のひとつと考えられています。
 3月初め、好天時に杉林へ出かけると風が吹くたびに煙のようなものが立ち上がるのが見られます。これはスギの花粉が風で飛び散ったものです。スギは雌雄異花(同じ株の中に雄花と雌花をつける)で、スギの花粉の大きさは約30~40μm(1/30~1/25mm)と微小で、一つの雄花に花粉が13200個、1本のスギの木に約1億の花粉ができることになります。
 これだけ大量の花粉を出す雄花に比べ雌花はよく探さないとわからないほど少ないのが現状です。これは風媒花(風に乗って花粉を媒介する)植物の特徴です。
 また、写真でもわかるように雄花をつけている枝は下に垂れ、雌花をつける枝は花粉を受けやすいように直立していることがわかります。
sugi2
◀スギの雌花と雄花