ハンゲショウ(№120)

 ドクダミ科の落葉草本にハンゲショウという植物が有ります。少しドクダミに似た匂いを持った、草丈5,60cmの草です。夏至を10日ほど過ぎた頃、茎の先端近くに穂状の花をつけますが、この花には、きれいな色をした花びらが有りません。その代わりに、開花期になると花のすぐ下の葉で基部側、表面半分以上が白く脱色して非常に目立つようになります。花弁の代わりに昆虫を寄せるための工夫でしょうか。白化した葉は、実がなる頃には緑に戻りますが、完全に元通りにはならず、やや白味が残ります。
 今年は暦の上での半夏(ハンゲ)は7月2日でした。その頃に開花するため半夏生と言われるのでしょうが、半分化粧したようになるため半化粧とか、生薬のハンゲ(カラスビシャク)と同時期に開花するからとも言われるようです。また、葉の表側だけが白くなるため片白草とも言われたそうです。
 ドクダミの4枚の白い花弁のように見えるものは総苞と呼ばれますが、ハンゲショウの白くなる葉は苞になり損ねた、あるいは苞になりつつある葉なのかもしれません。
 マタタビも開花期に花の近くの葉が白くなることで有名です。
▲ハンゲショウ
▲ハンゲショウの白化した葉と花
▲花の拡大

ネムノキ(№119)

 梅雨の後半、樹冠を薄桃色に着飾った木が見られます。よくご存知のネムノキです。この花を観察してみました。
 枝の先に10数個の花がかたまって咲いています。甘い香りも漂っています。花で目立つのは先端1/3~2/3がピンクで根元が白い多数の糸状のものです。花は、通常花弁を目立たせていますが、ネムノキでよく目立つ糸状のものは雄しべで、その先に花粉を入れた葯をつけています。つまり雄しべが花びらの代わりをしているのです。では花びらは?1個の花をよく見ると、元のほうに目立たない小さな花びらが見えます。ネムノキでは、花びらは完全にその仕事を放棄したようです。
 ところで10数個の花の中央付近の2,3個の花は目立って長く、突出しています。この花は頂花といい花筒が長くその中に蜜を蓄えています。しかも雄しべは両手を広げたような角度で左右に広がっています。他の花は、蜜が殆どなく、雄しべもほぼ真上に伸びています。いかにも頂花は昆虫を呼ぶための役目を担っているように見えます。
 ネムノキは、夜になると葉を閉じます。これは、葉の付け根の膨らんだところ(葉枕)の細胞内の水分変化によるもので、まるで眠っているように見えるのでネムノキと呼ばれます。面白いことに、葉が眠る時間になると花が咲きます。ですから、ネムの花は夜の方が目立つんですよ。この時間帯には、ガの仲間のホウジャクやスズメガなどが活躍します。
 匂い、目立つ雄しべの色、蜜を用意した頂花、ガの活動時間に合わせて開花し、開いていた葉を閉じて花を目立たせる動きなど全てが虫を呼ぶのに好都合なように見えますね。
▲ネムノキ
▲ネムノキの花
▲花の分解

エサキモンキツノカメムシ(№118)

  背中に、ハートの模様をつけたカメムシがいました。エサキモンキツノカメムシです。複雑な名前のように思えますが、エサキは昆虫学者の名前、モンキはこのハート型の模様、ツノは胸の両端が尖っている意味、カメムシは前翅の前半分が硬く後ろ半分が薄く軟らかい虫の仲間の総称ですので、比較的覚えやすい名前かと思いますが。
 このカメムシのメスは、卵を数十個かためて産みますが、産卵後自分の卵が2令幼虫になるまでその場で守り続けると言う母性愛の持ち主です。背中のハートはその印でしょうか。くさい匂い以外に何の武器も持たない小さなカメムシが、アりや他の外敵に対し翅を広げ、バタバタさせながら我が子を守るけなげな姿を,児童虐待が話題になる人間共にも見せてやりたいものです。
◀エサキモンキツノカメ成虫

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