カンアオイ(№618)

 カンアオイと呼ばれる山野草があります。ウマノスズクサ科カンアオイ属の常緑草本で、葉の模様や花に変異が多く愛好家にも親しまれています。草丈10~30㎝、日陰でも育ち庭園の根占として植栽 されたり、鉢植えで鑑賞されたりします。花は10~5月に咲き、地際に堅い筒状で直径2㎝ぐらい、 紫色の花を開きますが花弁はなく、3裂したがく片があり中央下部に雌しべ、雄しべが隠れています。地際で地味に咲くところから、花粉媒介はキノコバエ、アリ、カタツムリ、ナメクジ、ヤスデ、ワラジムシなどが関係していると言われています。種子にはエライオソームがあり、アリによる分散が考えられますが、広範囲に分散することは考えにくく、各地域ごとに固有種があり国内には50種、近畿地方にはミヤコアオイ、イセノカンアオイ、スエヒロカンアオイ、コウヤカンアオイ、ジュロウカンアオイが分布すると言われています。
 カンアオイの名前は、近縁種のフタバアオイ(落葉性)に葉が似ていて常緑であるところから名づけられたようです。カンアオイ属はフタバアオイ亜属とカンアオイ亜属に分けられ、カンアオイ亜属はカンアオイ節(50種)とウスバサイシン節(7種)に分けられています。
 カンアオイ亜属はギフチョウの食草として、ウスバサイシン節はヒメギフチョウの食草としてよく知られています。
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▲カンアオイ(ミヤコアオイ?)
▲カンアオイの花

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オオハナアブ(オオアブバエ)(№617)

 4~5月の里山は花や昆虫でにぎわいます。ヒメジョオンの花に体長15mm程度の比較的大きなハナアブがやってきました。蜜や花粉を食べ、花紛の媒介をする貴重な媒介昆虫の1種です。
 成虫は比較的美しいアブに見えますが、幼虫は汚水の中で生活し、呼吸管を水面上に出して呼吸しているウジムシで、北海道から九州まで全国に分布しています。写真の成虫は左右の複眼が離れているところからメス成虫と思われ、複眼には縞模様が認められます。
 ところでこのオオハナアブという名前からアブの仲間と思われがちですが、実はハエの仲間でかつてオオアブバエと呼ぶことが提唱されましたが普及していません。ではアブとハエはどう違うのでしょうか。昆虫の中で翅が前翅だけで、後翅が平均棍(棍棒状に変化し、飛翔時にバランスをとる器官)になっている1群を双翅目(ハエ目)と言い、学名ではDiptera(Di=2つの、ptera=翅) と呼ばれます。更にカ亜目とハエ亜目に分けられ、ハエ亜目の中がハエ下目(環縫短角群)とアブ下目(直縫短角群)に分けられています。さて、環縫(ハエ)と直縫(アブ)の違いですが、蛹が羽化するとき蛹に割れ目ができますが、この割れ目が丸い形のものがハエ(環縫)で直線のものがアブ(直縫)に分けられています。成虫を見る限り、これらの区別はむつかしいですね。
 この仲間には、キノコバエ、チョウバエが分類上はカの仲間、ハナアブ、ヒラタアブが分類上はハエの仲間、アシナガバエ、オドリバエが分類上はアブの仲間と混乱させられる仲間が含まれています。
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▲オオハナアブ
▲オオハナアブ

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ツチグリ(№616)

  山道で直径5㎝ぐらいの星形をしたきのこを見つけました。ツチグリ科ツチグリ属のキノコで、土 の上にできる栗のような実またはカキのヘタのように見えることからツチグリやツチガキとも呼ばれます。晩夏から秋にかけ、直径2㎝程度で球状の幼菌ができ、これは食用になるそうです。やがて成熟し、外皮が8~10個の星形に広がり中央に胞子を充満させた球状の袋が現れます。外皮は乾燥すると 閉じ、湿度が上がると開く運動を繰り返します。マツ科、ブナ科、カバノキ科などの樹木の根に共生するようですが、成熟すると菌糸がなくなり風で飛ばされたりすることもある様です。外皮の運動や風による移動、雨滴の刺激などで中央の袋から胞子を吹き出します。外皮は堅く、腐りにくく次年度の春にも残っていることが多いです。
  この菌の仲間にはキヌガサタケやサンコタケなど特殊な形状をしたきのこが多いようです。
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▲多湿時のツチグリ
▲多湿時のツチグリ
▲乾燥時のツチグリ
▲乾燥時のツチグリ

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