カメノコテントウ(№627)

 毎年5~8月になると、クルミの木が葉を食べられボロボロになっているのを見かけます。これはクルミヒラタハムシ(クルミハムシ)の被害であることを本シリーズ№223クルミヒラタハムシで紹介しました。今回はこのクルミハムシの重大な天敵であるカメノコテントウを紹介しましょう。
 クルミハムシの食害で葉がボロボロになったクルミの葉の裏を見ますと、黒いクルミハムシの脱皮殻が主脈に沿って多数見られます。同時にそのような葉の上を活発に動き回るいかにも獰猛そうな大きなカメノコテントウの幼虫が見つかります。このクルミの木では、ほとんどのクルミハムシの幼虫や蛹はすでに成虫になったか、あるいはカメノコテントウに食い尽くされたのでしょう、クルミハムシの幼虫、蛹は見つけることができずカメノコテントウの幼虫、蛹、成虫が見られました。エサがなくなったためか、カメノコテントウ幼虫同士の共食いも見られました。
 カメノコテントウ成虫は体長8~12mmで日本では最大のテントウムシです。北海道から九州まで分布しており、5~8
月に成虫になり、そのまま秋までクルミハムシ、ドロノキハムシ、エノキハムシなどをエサとして活動し成虫のまま越冬、翌春に産卵します。昆虫としては長寿命で丸1年活動するようです。上翅は黒色に赤色の亀甲紋が非常に目立ちますが、エサがクルミハムシなどに限られるため、クルミやドロノキなどの付近以外では見つけるのがむつかしいテントウムシです
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▲クルミハムシ成虫
▲クルミハムシ脱皮殻
▲カメノコテントウ幼虫
▲カメノコテントウ前蛹
▲カメノコテントウ成虫
▲カメノコテントウ成虫

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ゲッケイジュ(№626)

 今月は香辛料としてよく知られたゲッケイジュを見ましょう。ゲッケイジュはクスノキ科ゲッケイジュ属の常緑高木で9~15mになります。地中海沿岸地方が原産地で、寒さにはやや弱いため国内では関東~九州まで植栽されています。雌雄異株ですが、国内では主として雄株が挿し木で増やされたため、雄株が多くなっています。葉は長さ5~12cm、狭長楕円形、濃緑色で光沢があります。春4~5月に黄白色の花を付けます。
 葉は1~3%の精油を含み、食欲を増進させる香辛料(ローリエ、ローレル)として利用され、化粧品や浴湯料にも利用されます。生育旺盛で、生垣やトピアリー材(動物の形などに刈り込んだ庭木)として利用されますが、風通しがよくないとカイガラムシやキジラミが寄生しやすく、それらの排せつ物にスス病が発生し、葉が汚れることが多い庭木です。
 月桂冠は、このゲッケイジュの葉付き小枝を丸く編んだものでギリシャ、ローマ時代の神聖な競技会の勝者に与えられました。
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▲ゲッケイジュ
▲ゲッケイジュの花
▲ゲッケイジュの花

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モンスズメバチ(№625)

 夏休みの団地内通路で、サクラの古木の横を住人が通るたびにハチが飛びだしていました。よく観察すると、中型のモンスズメバチです。このハチ、毒は強く、攻撃的でスズメバチの中で唯一夜間にも活動するハチとして知られています。住民は誰も気づいていないようですが、事故が起こる前に退治することにしました。他のスズメバチと異なり、夜になっても活動しているため夜間の退治といってもちょっと危険です。巣穴への出入りが落ち着いたころを見計らって、出入り口にネットをかけ、ハチ用の防虫スプレーを穴から噴射しました。
 一段落してから、ネットを外すと丼鉢に一杯分程度の成虫が捕獲されていました。巣の出入り口から桜の樹皮をめくってみると、中は大きな洞になっており、3段になった巣がぶら下がっていました。上の2段の中央部には蛹や終齢幼虫が巣穴にフタを張り、羽化や蛹化の準備をしており、最下段の巣穴には卵が1卵ずつ生まれていました。巣穴の数は合計400程度。この先しばらくは増大を続けるところだったのでしょう。スズメバチの中でもコガタスズメバチやキイロスズメバチは軒下や樹木の間に巣を作るため、外から確認できますが、オオスズメバチやモンスズメバチは目につきにくい場所に営巣するため気付きにくく事故が起こりやすいハチといえるでしょう。
 モンスズメバチは体長20~27mmで中型のスズメバチです。複眼の間(おでこ)が黒く、腹部の横紋が波打ったように見えます。セミやバッタなど大型の昆虫を狩ることが多いようで、北海道から九州まで生息が知られていますが、最近は減少しているようです。
 学名は Vespa(ハチ) crabro(スズメバチ)でハチの中のスズメバチと呼ばれています。
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▲モンスズメバチ(働き蜂)
▲モンスズメバチの巣(サクラ古木の洞内)
▲巣の外周部には卵が見られる
▲巣中心部の終齢幼虫

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