ウワミズザクラ(№648)

 日本人はサクラが咲けば春になったと感じる人が多いと思います。ところで普通サクラといえばソメイヨシノに代表されるように大きな5弁の花が連想されます。しかし、サクラの仲間の異端者的存在で、小さな花を穂状に咲かせるサクラ、ウワミズザクラが今回のテーマです。
 ウワミズザクラは樹高15~20mの落葉高木で、北海道西南部~九州の谷筋や沢・小川沿いのやや湿ったところを好んで生育します。葉が展開した後で白い小さな(直径約6mm)多数の花を長さ10cm程度の房状に咲かせます。ソメイヨシノが咲き終わりハザクラに変わる頃に咲き始めます。花は花弁5枚でおしべが長く、ブラシのように目立ちますが、山中で、葉が展開してから花が咲くためあまり人気はないようです。果実は8~9月に赤~黒く熟し食べられ、塩漬け(杏仁香アンニンゴ)や焼酎漬け(杏仁香酒)として利用されます。また、鳥や熊が好み、クマだな(熊が木の実を食べるため、木の枝などで樹上に作る居場所)が作られることもあります。
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▲ウワミズザクラ
▲ウワミズザクラ
▲ウワミズザクラ

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イチリンソウ(№647)

 早春の話題はなんといってもスプリングエフェメラルになります。今回はその一つであるイチリンソウです。
 イチリンソウは本州 ~九州に見られ、木陰の林床に群落を作りやすい草丈20~30㎝の多年草です。キンポウゲ科イチリンソウ属で、4~5月に直径4㎝程度の白い花を付けます。通常、花茎の先端に1輪の花を咲かせますが時には2輪の場合も見られます。白い花弁のように見えるのはガク片で、ガク片の裏は薄ピンク色になり通常5枚です。花茎の下部には長い葉柄を持った根生葉が見られ、茎葉は3枚が輪生し、葉柄の先に3出複葉の小葉が付き、それぞれ羽状に深く裂けます。地下茎を伸ばし群生することが多く、花後、初夏には地上部は枯れ翌春まで休眠します。
 地域により変異が多く、各種園芸種もあります。
 全草有毒で食用にはできませんが、よく似た草花で山菜として利用されるニリンソウがあります。ニリンソウの特徴は、 1.花は通常2輪咲きでイチリンソウより小型(直径2cm)、2.葉は無柄、3.葉の切れ込みは少ない、4.花期はイチリンソウより早く3~5月などで区別できます。ニリンソウは山菜に利用されますが全く無毒というわけではないため前処理などに十分な注意が必要です。
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▲イチリンソウ(葉の切れ込みが深い)
▲イチリンソウの花
▲ニリンソウ(葉の切れ込みが浅い、花が小さい)

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コシダ(№646)

 落葉樹が葉を落とし陽の光が林の奥まで差し込むような冬の山道、青々とした葉を残しているシダで目につく群落を作っている代表の一つはコシダでしょう。
 ウラジロ科コシダ属の常緑シダで、日本では福島県以南から沖縄まで分布しています。日がよく当たる乾燥気味の貧栄養土壌を好むようでウラジロと同所的に生息しています。パイオニアプランツの一つで山火事などの跡地に真っ先に生えてくる植物の一つでもあります。地下茎が横に長く広がり、間隔をあけて葉を生じるため群落になることが多い植物です。地下茎から伸びた主軸の先に2枚の羽片を付け、その間から2叉分枝(それぞれ2枚の羽片を付けた2本の主軸が出る)することを繰り返しながら成長します。毎年2叉分枝を繰り返しながら2m程度まで伸びることがありますが、多くは1m程度で止まるようです。ウラジロも毎年分枝を繰り返しますが、1本の主軸を出す点で区別できます。
 葉柄は褐色で硬く、籠を編んだり生花の材料として使われたりします。移植がむつかしく庭園での利用はあまり見られません。
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▲群生するコシダ
▲毎年2つに分枝する
▲毎年2つに分枝する
▲葉の裏は白い

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