ヒキガエル(№645)

 サクラのソメイヨシノが咲くころ、里山の畦畔や渓流沿いを歩くと、「クックックッ」と鳴くカエルの声が聞こえることがあります。これは繁殖期を迎えたヒキガエル達の声です。ヒキガエルは日本固有の大型(43~162mm)のカエル3種の総称でニホンヒキガエル(主として西日本)、アズマヒキガエル(主として東日本)、ナガレヒキガエル(主として中部地方の渓流)の3亜種に分けられています。3亜種の区別は鼓膜の大きさでニホンヒキガエルは鼓膜が小さい、アズマヒキガエルは目と鼓膜の距離より鼓膜の直径が大きいとされ、ナガレヒキガエルは鼓膜が小さくはっきりせず生息地域が限定されるとのことです。またヒキガエルはイボガエル、ガマガエルとも呼ばれます。
 早春、止水域に集まり産卵しますが、ゼリーに包まれた紐上の卵塊が産まれ、1雌産卵数は1,500~14,000卵といわれます。成体は黒褐色で白や黒の帯状模様を付けていますが、色や形は個体変異が大きいです。鼓膜の上に縦長のいぼ状隆起(耳腺)があり、ここから毒液を分泌します。夜間に活動し、食性は肉食性で地上徘徊性の昆虫(アリ、オサムシ、ゴミムシなど)や小動物(ミミズ、クモなど)を食べます。産卵を終えた成体は再び土中に入り初夏まで春眠をします。
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ヒキガエル(アズマヒキガエルでしょうか)

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ハギ(№644)

 奈良時代末期にまとめられた万葉集は日本最古の和歌集として知られていますが、掲載されている約4500首の和歌の中に最も多く出てくる植物はハギで141首といわれています。今回のテーマは、これほど多くの人に親しまれてきたハギについてです。
 実はハギという呼び方はマメ科ハギ属植物の総称で、ハギと呼ばれる植物はありません。日本にはヤマハギ亜属が約15種ほど知られています。日本全国に分布する落葉低木で樹高1,5~2m、
花期は7~10月で蝶形花、葉は3出複葉です。代表的な種類としては、ヤマハギ、ミヤギノハギ、キハギ、メドハギなどがあります。低木といっても、茎は年々太くなるようなことはなく毎年新梢を伸ばします。
 マメ科の特徴として、根に根粒菌を共生させ、空中窒素を固定できるため、パイオニア植物としてがけ崩れや荒廃地にいち早く繁茂する植物の1種で、治山、砂防工事の現場でも法面の緑化資材として利用されます。里山が利用されていた頃は枝葉が家畜の飼料としても利用されました。庭木としては派手さが少ないため、和風庭園に好まれてきました。
 ハギに
はキタキチョウやウラナミシジミが良く尋ねてきます。これは、吸蜜に訪れるだけではなく、どちらの幼虫もハギを食草の一つとしているため産卵に来ていることも多く、よく観察していると産卵の様子を観察することができます。
 ハギの名が付くハギでない植物も多く、ヌスビトハギ(マメ科ヌスビトハギ属)、センダイハギ(マメ科センダイハギ属)、ミソハギ(ミソハギ科ミソハギ属)、ヒメハギ(ヒメハギ科ヒメハギ属)などが知られています。
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▲ハギ
▲ハギの花(アカバナ)
▲ハギの花(シロバナ)
▲ハギの葉裏で休むキタキチョウ

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アカボシゴマダラ(№643)

 1998年神奈川県においてそれまで本州では見られなかった中型の美しいチョウが見つかり、繁殖していることが確認されました。このチョウはアカボシゴマダラといい、ベトナム北部~中国・朝鮮半島に生息し奄美大島では別亜種が知られていました。この時見つかったのは奄美大島産のものとは斑紋が異なり、大陸産のものであることがわかり人為的に日本へ持ち込まれ放蝶されたものが繁殖したと考えられています。その後、岐阜、石川そして近畿地方でも発見されています。
 アカボシゴマダラはチョウ目タテハチョウ科で前翅長40~53mm、翅は黒地に白の縞模様が入り後翅後部に赤斑(春型では消えることがある)が見られます。年3回程度発生するようで、都心部でも食草があれば繁殖を繰り返します。本州では在来種としてゴマダラチョウが存在しており、どちらの幼虫も食草がエノキで、国蝶であるオオムラサキもエノキを食草とするところからエノキを巡る競合が予想されます。
 2024年の調査によると近畿地方では奈良、京都、大阪で見つかっており特定外来生物に指定され移動等が禁止されています。
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◀岩盤上に止まったアカボシゴマダラ成虫

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