トチカガミ(№636)

 水田地帯の溜池でよく見られた水草にトチカガミがあります。トチカガミ科トチカガミ属の浮遊性多年草の水草です。走出枝(ストロン)を伸ばしながら増殖しやがて水面を覆い隠すようになります。
 7月~10月、直径20~25mmで白色3弁の1日花を付けます。雌雄同株異花で、写真は雄花で中央には退化した柱頭(退化したメシベ)も見られます。葉は2~7cmの円形で、基部は心形をし全体につやがあります。水に浮かぶ葉の中央部には気嚢があり、浮袋の役目を果たしています。この円くてつやのある葉をスッポン(トチ)の鏡に見立てて付けられた名前だそうです。また、この葉は食用にも供されたそうです。
 写真撮影のためいくつかの溜池を訪ねましたが、なかなか見つけられませんでした。やや富栄養化した溜池に多いのですが、そのような環境が減少したためか、大阪府では絶滅危惧1類、環境省では準絶滅危惧種に指定されています。
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▲トチカガミ
▲トチカガミの花
トチカガミの葉裏(中央に浮袋)

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コマダラウスバカゲロウ(№635)

 本シリーズのウスバカゲロウ(№37)で紹介したウスバカゲロウの幼虫はアリジゴクの名前で知られ、砂にすり鉢状のわなを仕掛けます。またホシウスバカゲロウ(№232)はすり鉢状の巣は作らず土に潜って通りかかった昆虫などを捕らえます。しかし今回紹介するコマダラウスバカゲロウは、石垣や樹木に着生する地衣類に紛れて通りかかった昆虫などを捕らえるというウスバカゲロウの中でも最もカモフラージュのうまいウスバカゲロウといえるでしょう。
 アミメカゲロウ目ウスバカゲロウ科の昆虫で、幼虫はアリジゴクと同じような体をしていますが、背中に地衣類をまとい、地衣類の中に紛れ、ほとんど動かずにじっとエサが通るのを待ち続けます。以下の写真のように、地衣類に紛れていると、これを探し出すのは大変です。観察していると、アリジゴクと違って前向きにも歩きます。面白いことに、この幼虫は大あごを広げた状態で頭を下にしていることが多いのですがこの様子はジョロウグモ(№413)がクモの巣上で獲物を待っているときとよく似ています。下向きの方が獲物を捕らえやすいのでしょうか。
 十分成長した幼虫は、地衣類の間に繭を作り成虫になります。成虫は他のウスバカゲロウとよく似ていますが、翅に特徴のある茶褐色の斑点があります。
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▲地衣類が繁殖する石垣
▲地衣類に擬態した幼虫(矢印の先)
▲地衣類に擬態した幼虫(矢印の先)
▲紙の上に置いた幼虫(体形はアリジゴクそっくり)

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タヌキマメ(№634)

 マメ科1年草の仲間にタヌキマメ属があります。本州から沖縄に分布しますが、本州、四国、九州には1年草のタヌキマメ1種だけが存在します。
 タヌキマメは草丈20~70㎝、7~9月に青紫色で直径7~10mm程度のマメ科特有の蝶形花を咲かせ、左右の翼弁基部に白斑があるのが特徴です。また、この花は正午ごろに開花し、夕方にはしぼんでしまう1日花です。葉はマメ科の植物にしては珍しく4~12cmの線形~広線形の単葉を互生します。さらに、マメ科の他の植物同様に夜間就眠運動により葉を立てた状態になります。葉表をのぞき全身に毛が多く、この毛が名前の由来になっているようです。毛に覆われた果実を振るとガラガラと音がし、学名のCrotalaria属は玩具の「ガラガラ」を意味するギリシャ語から来ています。
 1年草で、毎年種子により繁殖するため生育変動の激しい植物です。京都府では絶滅危惧種に指定されています。全草有毒で、発がん性もありますが、利尿剤、強心剤として民間療法で利用されたり、農作物のネコブセンチュウ防除のため作物の間に栽培されたりすることもあります。

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▲タヌキマメ
▲タヌキマメの花と果実
▲タヌキマメの花と果実

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